のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
自分に合った情報を見つけるには?
コーヒーは体にいい? 悪い?
「コーヒーって体にいいのよね。テレビで医者が言っていたわよ。血流を良くするって」
カフェのカウンター席。今日は店がのんびりしていて、マスターののぶさんも常連客とおしゃべりを楽しんでいる。隣の席にいた初老のご婦人が、のぶさんに話しかけた。
足に障害を持ったのぶさんは、カウンターの内側にある小さな椅子に腰かけて、笑顔で答えた。
「う~ん、コーヒーのプロが言う話ではないですけど、良いも悪いも、どちらの側面もありますよね」
おいしいコーヒーをウリにしているカフェのマスターのセリフとは思えない(笑)。
マスターは、コーヒーは、新鮮でなければ劣化した油分で胃に悪影響があることや、何杯も飲むものではないこと、甘くトッピングなどをすれば相当の糖が含まれることなど、わかりやすく説明してくれた。また、コーヒーには血流を良くする効果があるとされるが、それが誰にでも良いこととは限らないと言う。
確かに、私は仕事が立て込むと眠気覚ましとしてコーヒーを飲む。それは、逆に、不眠で悩んでいる方には適さないということだ。
有名芸能人が薦めているからと言って……
幅広い読者を対象に提供しているメディアの情報が、必ずしも自分に合うとは限らないし、そういう意味では、友人たちからの口コミなども、その人には合っていても、私に合うとは限らない。
「特に健康に良いとうたった商品の広告には、相当に留意しないといけないでしょうね」
それは私も感じるときがある。広告である以上、商品情報を広めたいのだろうから、そこでマイナス的な面をアピールするわけがないと思う。
「例えばこれ。健康に良いと書いてあり、体験談も書かれていますけど、広く何パーセントの方に、どれほどの効果があったかは書かれていないですよね」
有名芸能人が、これはいいと言っている。いや、言わされているという感じだろうか。
「だから、自分の健康に関わる大切な情報は、自分に合っているかを考えるクセをつけたいですね」
かかりつけ薬剤師に聞いてみるのも
「考えるって言ってもねぇ……」
ご婦人と言葉が合ってしまった。
「もし、自分一人で考えたり、調べたりするのには限界があるなぁって思ったら、専門家の力を借りるといいですよね」
あ! そこで、先日話に出た、薬局のかかりつけ薬剤師か!
のぶさんはいつも言う。健康のことは、かかりつけの薬剤師にまず相談してみるといいと。信頼できるかかりつけ薬局をつくっておくことで、情報をいただけるということだった。こういう場合も同じなのかもしれない。
のぶさんに尋ねてみた。
「薬剤師って、薬と関係ないそんな相談も受けてくれるんですか?」
のぶさんが言うには、薬剤師の中には健康食品や食事に関する勉強もしている方が多く、仮にその場ですぐに答えられなくても、調べたうえで、お客さんの要望に合うかを一緒に考えてくれるケースもあるそうだ。
そろそろ、会社に戻らねばならない時刻になった。仕事はたまっていて、今日もきっと残業だ。眠気覚ましのコーヒーを何杯飲むことだろう。のぶさんには内緒にしておこう。
大好きなスイーツも自分に合うかどうか……?(笑)
(鈴木信行 患医ねっと代表)
下町と言われる街の裏路地に、昭和と令和がうまく調和した落ち着く小さなカフェ。そこは、コーヒーを片手に、 身体 を自分でメンテナンスする工夫やアイデアが得られる空間らしい。カフェの近所の会社に勤める49歳男性の私は、仕事の合間に立ち寄っては、オーナーの話に耳を傾けるのが、楽しみの一つになっている。
(※ このカフェは架空のものです)
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