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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

医療機関の機能分化を推進 2020年度の診療報酬改定

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 保険のきく医療の値段について定めた診療報酬について、2020年4月からの改定の内容がまとまった。厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)が2月7日に答申した。紹介状なしで病院を受診した場合に保険外の上乗せ料金がかかる病院の範囲を拡大したり、大病院の地域包括ケア病棟を制限したりと、病院と診療所、病院間の役割分担を、より一層図るものとなった。

紹介状なしの初・再診料上乗せ 200床以上に拡大

 紹介状なしで病院を受診した場合に、保険の窓口負担とは別に、初診は5000円(歯科は3000円)以上、再診は2500円(同1500円)以上の上乗せ料金がかかる仕組みがある。現在は、大学病院などの特定機能病院と許可病床400床以上の地域医療支援病院が対象だが、特定機能病院と一般病床200床以上の地域医療支援病院に対象が拡大される。

 軽い病気の場合はまず診療所にかかり、専門医の診察や入院治療が必要と判断されたら、紹介状を書いてもらって病院を受診とするという、病院と診療所の役割分担を進める狙いがある。200床以上の病院は、これまでも病院の判断で上乗せ料金を設定できているが、制度の変更によって上乗せ料金の値上げなどにつながるとみられる。

大病院の地域包括ケア病棟を制限

 病院の役割分担で、大きな見直しが行われたのが、地域包括ケア病棟の扱いだ。許可病床数400床以上の病院は、新たな地域包括ケア病棟設置の届け出ができなくなったほか、自院の一般病棟から転棟する患者の割合が6割以上を占める場合には、点数が減額されるなどの見直しが行われた。

 地域包括ケア病棟は、病院と在宅医療を結んで、在宅への復帰を後押しする役割を担う病棟として、2014年度の改定で新設され、普及が進んだ。ところが、本来であれば高度な急性期医療の役割を担うべき大病院にも設けられ、主に自院内の転棟の受け皿になっている例がみられることから、病棟の趣旨に基づいた見直しが行われた。

かかりつけ医機能を持つ医療機関を検索で 説明文書も作成

医療機関の機能分化を推進 2020年度の診療報酬改定

診療報酬改定が答申された中央社会保険医療協議会(2月7日)

 今回の診療報酬改定をめぐる中医協の論議で、1号側(支払い側)と2号側(診療側)の委員の間で、激しい意見の応酬があったのが、かかりつけ医機能の体制を評価した機能強化加算のあり方だ。

 機能強化加算は、在宅医療の提供や24時間体制など、かかりつけ医に求められる一定の水準を満たした診療所や許可病床200床未満の病院について、初診料に800円が上乗せされるものだ。2018年度の改定で設けられた。加算の意味や費用負担について、患者へ文書などで説明することを求める支払い側委員に対し、診療側委員は、医師の負担になり現実的でないなどと応酬し、激論が展開された。

 結果として今回の改定では、都道府県が行っている医療機関の情報提供サービスで、加算を徴収している医療機関が検索できる体制を整えたうえで、その旨を院内に掲示することや、掲示している内容を文書にして患者が持ち帰ることができるようにすることが、要件に加えられた。

勤務医の過重労働改善につながるか検証必要

 今回の改定では、勤務医の過剰労働を是正するための方策として、地域の救急医療を担う病院への新たな加算が設けられた。救急搬送件数が年間2000件以上の病院に対し、入院患者1人当たり5200円の「地域医療体制確保加算」が新設された。公的病院を中心に全国で800から900程度の病院が対象となるとみられる。救急搬送件数が1000件以上2000件未満の病院についても、診療報酬とは別の、地域医療介護総合確保基金で対応するとしている。

 加算は、医師の負担軽減に取り組むことが要件になっており、増収分が医師の勤務の改善に実際につながっているかどうかの検証が今後の課題と言える。

患者にわかりやすい診療報酬に

 診療報酬改定は原則、2年に1回行われるが、今回は半年ぶりの改定だ。消費税の10%への引き上げに合わせて19年10月、臨時の改定が行われ、たとえば初診料は、従来の2820円から2880円へ、診療所や中小病院の再診料は720円から730円へ、大病院の再診時にかかる外来診療料は、730円から740円に値上げされた。

 「妊婦税だ」などの批判を受けて凍結されていた妊婦加算は廃止され、妊婦以外も含めた新たな診療情報提供料が設けられた。妊婦加算はもともと、妊娠中の患者の診療に対して、乳幼児の診療と同様に手厚く評価しようというものだったが、乳幼児の場合は自治体の助成で患者側の負担はないことが多いのに対し、妊婦の場合は加算によって患者の窓口負担も増えてしまう。診療報酬で高く評価すると、患者の負担分も増えるという、診療報酬によって政策を進めることの難しさが改めて浮き彫りになった。

 改定の答申には、次回以降へ積み残しとなった論点についての20項目の付帯意見が付けられた。全般的事項として最初に掲げられたのが、「近年、診療報酬体系が複雑化していることを踏まえ、患者をはじめとする関係者にとって分かりやすいものとなるよう検討すること」だ。

 患者側が強く求めてきた診療明細書の発行が定着してきたのは良いことだが、そもそもの診療報酬の中身が、加算や算定要件が複雑に入り組んで、極めてわかりにくくなっている。改革への取り組みを望みたい。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。 野村克也さんが亡くなられましたが、もし、たら、れば、と考えてしまいます。 個人のみならず、一度...

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。
野村克也さんが亡くなられましたが、もし、たら、れば、と考えてしまいます。
個人のみならず、一度できた制度や利権というのも生命体みたいなところがあって、思ったように動くものではありません。
何をもって勝敗とするのか、その前に試合は成立するのか、比喩ではありますが、様々なファクターを勘案して動かしていく指導者、誘導者の出現を期待してしまいます。

保険診療の問題も、地域医療の問題も、不人気科の問題も、日本医療あるいは日本経済の全体像の中での個別の問題なわけですが、一個一個の事象が大きすぎて個々の対処が全体像の中でマイナスやマイノリティの意味を持つ可能性を秘めているので困難です。

文字通り一筋縄でいかない話で、いずれは地域医師枠や医師法などのより柔軟な運用、暫定的な変更や特例等組み合わせざるを得ないと思います。
これまで町や医療が作られ、維持され、今は多くの町で分岐点にあるわけですが、人間の生活、社会や医療の在り方の変化が急すぎて大変な状況にあります。
これまで通りが通用しない世界の中で、中央の政策だけでなく道州制とか地域国家論の理屈を考えて少しずつ新しい人材とやり方を考えていくしかありません。
特に実行フェーズでは、昔のやり方で実績のある人や既得権益の調整が進まないのは歴史上のどんな国や地域でも仕方のない事ではないかと思います。

僕は地域の仕事では非常勤や準ずる仕事しかしていませんが、医療や運用のされ方、人間や社会構成に文化もまちまちな中で、関わりの距離感や関係性が難しいからです。
同じことも、誰がどんな伝え方をするかでまるきり変わりますし、言葉の伝え方なんかの地域差も勘案していく必要があります。

個々の内容が必ずしも正しい必要もありませんので、いい塩梅に落ち着かせるには、マスコミによる息の長い観察と問題提起も必要です。

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