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アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直

医療・健康・介護のコラム

最重度ですがなにか?…「パンツの絆」でつながる父と子の話

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持ちつ持たれつ

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 そんな洋介に、僕は最近、よく世話になっている。50歳を過ぎてからというもの、週に二、三度は、お風呂に入る際、脱衣所にパンツを持って行くのを忘れてしまうのだ。中3の娘もいるので、素っ裸で出て行くわけにもいかず、妻に頼んでも嫌がられるので、大きな声で洋介を呼ぶことになる。すると手慣れたもので、間違えることなく、僕のパンツを持って、届けに来てくれる。

 つまり、ことパンツに関しては、僕と洋介は持ちつ持たれつの仲なのである。

「うちの子が殺される!」

 折しも、相模原市の障害者施設殺傷事件の裁判が進められている。津久井やまゆり園に侵入した被告は、「意思疎通ができない人」を選んで襲った。「重度の障害者は安楽死させるべき」と主張していたと伝えられる。事件の直後には、洋介の通う施設の保護者たちの間にも衝撃が走った。「ここで起きたら、ぜったい、うちの子が殺されるよ……」と不安がる親もいた。被告の考え方に理解を示す声が少なからずネットに見られたことは、おそらく事件そのもの以上に、存在を脅かす冷たい恐怖を、障害の当事者や家族に突きつけただろう。

 初公判前に、犠牲になった娘の実名を公表した遺族の手記を読むと、障害のある子を家族が支えてきたというのは、ただの一面でしかなく、その子の存在によって家族の人生が支えられてもいたのだと改めて思う。人間の価値を、何か単純な指標で輪切りにすることはナンセンスなのだ。

支えられている自分

 と、書いていると、「きょうも部屋でうんちしてたのよ。もう大変!」と妻の嘆く声。確かに、そんなことをもう何百回と繰り返し、疲れ果て、悲観したこともあったな、などと思い返す。そして今は、洋介がいないとパンツをはけない自分もいる。上り坂や階段では、気がつけば、せっかちで歩きが速い洋介に手を引っぱられて上っていることも多い。これからますます、助けてもらうのかもしれないし……。(梅崎正直 ヨミドクター編集長)

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umezaki_masanao_prof

梅崎正直(うめざき・まさなお)

ヨミドクター編集長
 1966年、北九州市生まれ。90年入社。その年、信州大学病院で始まった生体肝移植手術の取材を担当。95年、週刊読売編集部に移り、13年にわたって雑誌編集に携わった。社会保障部、生活教育部(大阪本社)などを経て、2017年からヨミドクター。

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4件 のコメント

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読ませていただいています。

良ちゃんの母

うちにも息子さんと同じ学年の、知的障害の息子がいます。支援学校へも中学部から行き始め、今は生活介護で通所施設通い、ショートステイでお世話になりな...

うちにも息子さんと同じ学年の、知的障害の息子がいます。支援学校へも中学部から行き始め、今は生活介護で通所施設通い、ショートステイでお世話になりながら過ごしています。息子さんの支援、お父様の協力があって、うらやましい限りです。まだまだ障がい者には生きづらい世の中ですが、少しでもやさしい環境になることを望むばかりです。

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今ごろになって、再度コメントすみません

パンジー

ベイサイドさんのコメントを読ませてもらって気づいたのですが、障害の程度が重い、なんてところに注目せずに、この子と私たち家族がどちらも楽しんで生き...

ベイサイドさんのコメントを読ませてもらって気づいたのですが、障害の程度が重い、なんてところに注目せずに、この子と私たち家族がどちらも楽しんで生きて行けたら、それでいいんだなと。そんな風にこちらが思ったら、息子の表情がとても良くなりました。こちらの心が本当によく伝わることにびっくりです。

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軽度自閉症の息子がいます

ベイサイド

大変ながらも楽しそうな日々が伝わります。 自分も息子と、「いまお互い楽しんでいるかな」と思いながら過ごしていることもあります。 本当に楽しんでい...

大変ながらも楽しそうな日々が伝わります。
自分も息子と、「いまお互い楽しんでいるかな」と思いながら過ごしていることもあります。
本当に楽しんでいたら、後から振り返って感じることなのかもしれませんね。
そうなれるよう、我が家も…。。

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