アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直
医療・健康・介護のコラム
最重度ですがなにか?…「パンツの絆」でつながる父と子の話
今年には27歳になる長男の洋介は、現在、月曜から金曜まで、千葉の里山にある福祉施設に通っている。自閉症スペクトラムのなかでも、アスペルガー症候群や高機能自閉症とは違い、知的障害を伴う「カナー型」とも言われるタイプの自閉症だ。前回、言葉が遅かった3歳の頃の話をしたが、状態は今もそう変わっていない。

イラスト:森谷満美子
通所施設では「働き頭」
知的障害者向けの療育手帳は、年齢が上がるとともに判定も上がり、現在は重度の「A」のさらに上の「マルA」。市の障害支援区分も最重度の「6」である。そんな洋介の日常は次のような具合だ。
朝、起き出すのは8時頃。バタバタと音を立て始めるが、部屋に迎えに行かないと出てこない。反応しないと、「オキル、オキル」と言って催促する。夜用の紙パンツをはいて寝ているのだが、なぜか、朝には必ず脱げている。あまり放っておくと、脱いだ紙パンツを破って、中のゼリー状のものを散らかすという腹いせをするので、油断できない。経験した人にはわかるが、あれはとても厄介だ。ほうきで掃いても、モップで拭いても、掃除機を使っても、なかなか取り除けない。
送迎バスで行く施設では、さつまいもやトマト、ナスなど、主に有機野菜作りを担当している。仕事を頼まれても嫌がらないし(ニワトリの世話は怖くてダメ)、力もあるので、施設では「働き頭」の評価もあるそうだ。時にはショッピングセンターに出かけて、収穫物を販売してくることもある。午後4時過ぎには送られて帰宅。
家では、ソファに寝転び、クレヨンしんちゃん等のDVDを見て、妻の目を盗んでは、初孫を溺愛した祖父母の仏壇からお供え物を盗んで食べたり。ショートステイに行っている日以外の夜は、駅まで僕を迎えにきてくれる。しかし、僕がいつもより早く帰っていたり、休日で家にいたりしても、その時間になると「パパ、パパ」と言いながら、上着を羽織って駅に行こうとし、止められる。時計を見ているとも思えないので、妻は「体内時計だ」と言っている。
数字や程度による輪切りで
おおむね上機嫌、お気楽に暮らしている洋介だが、れっきとした最重度の知的障害者である。療育手帳の区分がどう決められているかというと、主に知能指数によるようだ。数値や程度によって輪切りにされるのはよく経験することで、例えば、同じ特別支援学校を卒業しても軽度の人は一般就職、中度の人は障害福祉サービスの就労移行支援、就労継続支援の枠組みで通所しているが、洋介の場合は同じ施設の中でも「生活介護」というサービスの対象となった。働き者と言われても、就労継続支援のような金額の工賃は出ず、労働の対価は当初、月500円だった。今は2000円程度(1日100円)にアップし、毎週末に食べるサーティワンのアイス代にはなっている。
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ベイサイドさんのコメントを読ませてもらって気づいたのですが、障害の程度が重い、なんてところに注目せずに、この子と私たち家族がどちらも楽しんで生きて行けたら、それでいいんだなと。そんな風にこちらが思ったら、息子の表情がとても良くなりました。こちらの心が本当によく伝わることにびっくりです。
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大変ながらも楽しそうな日々が伝わります。
自分も息子と、「いまお互い楽しんでいるかな」と思いながら過ごしていることもあります。
本当に楽しんでいたら、後から振り返って感じることなのかもしれませんね。
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