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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

緑内障が怖いという意識を植えつけた経緯は? 緑内障発作!? 緑内障を考察する!

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緑内障が怖いという意識を植えつけた経緯は? 緑内障発作!? 緑内障を考察する!

 「緑内障」と聞いて、「さあ大変だ、失明してしまう」と大慌てする人が少なくない理由を、今回は探ってみます。

 昔は、緑内障といえば「急性緑内障発作」のことでした。これは急激に眼球の内圧(眼圧)が上がり、眼痛、頭痛、 嘔吐(おうと) 、充血、 霧視(むし) (視野全体に霧がかかる)といった症状が出現し、放置しておくと1~2日のうちに失明する可能性のある状態です。これは一大事です。

 「緑内障」(グラウコーマ glaucoma)という用語はヒポクラテス全集にもみられる古い言葉だそうですが、19世紀末ごろから、眼圧が高くなって視力を損なう状態を指す医学用語になりました。

 なぜ「緑」なのかは諸説ありますが、瞳が緑(もしくは青)に見えたという先人の観察からのようです。白人ではそう見えるのかもしれませんが、私には緑に見えたことがありません

 江戸時代の医書にも「青そこひ」という語があり、「そこひ」に「内障」という字をあてていました。当時の日本の医者にもそう見えたのか、今となってはわかりません。

 ところで、眼圧が一定(正常値は10~21mmHg)に保持されているのは、毛様体で作り出された、水晶体と角膜の間の空間を満たす 房水(ぼうすい) という透明な液体が一定量に保たれているためです。房水の多くは 隅角(ぐうかく) (目の表面の角膜と、その内側で明るさを調節している虹彩に挟まれた部分)にあるシュレム管を通って、およそ100分かかって排出され、すべての房水が入れ換わります。

 さて、緑内障は、「開放隅角緑内障」と「 閉塞(へいそく) 隅角緑内障」に大別され、前回のコラムで取り上げた「開放隅角緑内障」は、隅角が広く開放されている形を持つもので、今日の緑内障の大半を占めていると述べました。

 一方、今回話題にしている「急性緑内障発作」は、「閉塞隅角緑内障」で起きるものです。狭い隅角が何かをきっかけに閉塞してしまい、房水の排出ができなくなることが原因です。

 隅角が狭いかどうかは、その人が生来持っている目のつくりによります。狭隅角は、遠視の方に多いとされますし、また東日本より西日本の方に多いというデータもあります。

 閉塞の程度が極端になれば、房水の出口が狭くなってしまい、眼圧が上がり(時に50mmHg以上になる)「急性緑内障発作」となるのですが、眼圧が時々上がる場合や、常時高めの眼圧で推移するものでは、次第に視神経に影響が出て、視野の一部の感度が次第に低下します。これらを含めて「閉塞隅角緑内障」と称します。緑内障全体の10%程度とされます。

 瞳を開く散瞳薬(点眼)や、抗コリン薬(痛め止めや抗不安薬の多くにこの作用がある)が眼圧を上げるリスクになりうるのは、このタイプの緑内障です。

 よく、胃カメラ(内視鏡)検査などの時に「緑内障はありませんか」と問診されることがあるのは、検査に使う鎮静剤が抗コリン作用を持つので、それを使っていいかどうかを確かめているのです。

 緑内障があっても、開放隅角ならまず心配いりませんし、元々、狭隅角の方も、白内障手術後やレーザー虹彩切開手術をしてあれば、急性緑内障発作のリスクは大きく軽減されていることを知っておくのはよいことです。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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