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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

医師不足に悩む6県知事が連携 地域偏在の解消へ向けて訴え

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「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」が設立記念シンポジウム

 医師が都市部に集中して、地域に足りない「医師の偏在」問題の解決を目指し、青森、岩手、福島、新潟、長野、静岡の6県の知事が発起人となり、「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」を設立した。1月31日、東京都内で記念のシンポジウムと記者会見を開いた。

 発起人を代表して、岩手県の達増拓也知事が設立の趣旨を説明。それによると、医療は国民の生活に欠くべからざるものであり、誰もが地域で必要な医療を受けられる必要があるが、地域医療の現場では医師の絶対数の不足や地域・診療科間の偏在がひどく、「地域医療崩壊」の危機的状況にある。都道府県を中心とした取り組みだけでは限界があり、医師不足や地域間の偏在を根本的に解消するには、国全体で地域医療を守る仕組みが必要……などとして、国がこの問題に主体的に関与して取り組むことを求めた。

「緩やかなマッチング制」の提案も

 シンポジウムで基調講演をした辺見公雄・全国公私病院連盟会長は、医師不足や偏在解消の取り組みについて、「前世紀からやっているが、全く進んでいない」と厳しく指摘。「保険があって、医療なしという地域が増えている」などと述べ、医師の偏在がますます広がっている現状を訴えた。

 そのうえで、医師不足・偏在解消のための私的提言として、医師の希望に配慮したうえで地域に適切に配置する「緩やかなマッチング制」の導入や、地域での勤務を医師の開業や保険医になるための要件に加えること、医師の自律に任せるプロフェッショナルオートノミーでは限界があり、国に対して裁判に訴えることなども方法ではないかと呼びかけた。

「医療は公共財」の視点を

 シンポジウムのパネルディスカッションでは、筆者もパネリストの一人として登壇し、読売新聞が2008年10月に発表した「医療改革提言」の記事を引用しながら、医師偏在の解消に向けて意見を述べた。読売新聞の医療改革提言は、医師不足など医療崩壊が叫ばれたこの時期に、信頼できる医療体制を確立することを目指し、ただちに実施すべき緊急対策、中長期にわたる構造改革に分けて提言した。

 提言では、偏在が生じる理由として、医師は診療科や地域を原則自由に選ぶことができるため、激務の診療科や地方の医療機関を敬遠しがちなことがあると説明。2年間の初期研修を修了して専門医の取得を目指す若手医師について、地域・診療科ごとに定員を定めて、計画的にバランス良く配置する制度をつくることを求めた。若手医師の進路の決定にあたっては、医師の希望を聞いたうえで、強制や義務ではなく、医師の希望と意欲をいかす配置の仕組みが求められる……というものだ。

 提言の根幹にあるのは、「医療は公共財である」という考え方だ。医療は国民の命と健康を守るために欠かせない公共財であり、医師の勤務先の選択にも一定のルールが必要で、社会的責務を担う医師のみが、国民の信頼を得ることができる、としている。

共同で政策提言や国への予算要望へ

医師不足に悩む6県知事が連携 地域偏在の解消へ向けて訴え

記者会見する6県の知事ら(中央右が達増・岩手県知事、中央左が花角・新潟県知事)

 シンポジウム後に開かれた記者会見では、達増知事、新潟県の花角英世知事をはじめ、6県の代表が並んだ。

 国が昨年公表した新しい医師偏在指標で、岩手県は全国の都道府県の中で最も医師が足りない47番目。新潟県は46番目だった。達増知事から花角知事へ、連携した取り組みを呼びかけたのがきっかけで、知事の会設立へと至ったという。花角知事は「共通の危機感を持つ県が連携して、共同して行動を起こすことで、国に対しても影響を及ぼすことができるのではないか」などと述べた。

 知事の会では、全国の医療関係者や行政関係者への理解促進、国民の機運を高めることや、国への政策提言を活動の三つの柱にしていく。具体的には、今年度内に各県が作成する医師確保計画を踏まえて、6月に参加県による政策提言をまとめ、7月の国への予算要望へとつなげたい考えだ。8月に開かれる予定の全国の病院事業管理者の会議でも提言していきたいとしている。

(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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医療も地方資源も公共財だが運用は人間

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

医療は公共財なのも確かですし、地域の農作物や水産資源も公共財であり安全保障の根幹です。 一方で、医師や医療人一人一人は人間であって、モノではあり...

医療は公共財なのも確かですし、地域の農作物や水産資源も公共財であり安全保障の根幹です。
一方で、医師や医療人一人一人は人間であって、モノではありません。
それぞれに、資格、実務、ポストへの意識や家族や伴侶との兼ね合いもあります。
地方での専門医の取得や維持の困難もありますが、その入口出口の構造や原因も含めて、未来への落としどころを考えていかないと難しいと思います。

実際、施設や科の医師不足は都心部でもまだらに発生しています。

僕が画像診断に触れて十年ちょっと、地域と標準と最先端の医療はますます開いていますが、診断治療や患者さんを納得させる言葉や理屈はバラバラです。
自分の所に来る途中経過の診断や意見も指揮系統もバラバラ。

本当に必要なのは医師ではなく医療サービスとそれに伴う納得なのですが、医療の宗教性と多様性の問題で、都合の良い神様を演じる医師が特に周辺医療機関から遠い地域では必要です。
しかし、それをやる事で、互換性の高い、中長期的な職業としての、科学的な理屈を使う医師の成長に問題が起こるのであれば難しくなります。

僕は元放射線科なので意見の偏りもありますが、放射線科や病理のような解析部門を地方の中央病院や大学の遠隔診断で強化して、地域住民を説得するナースなどをかました医療チームの方が、ベースの部分で医師としての成長が見込めると若手も考えるかもしれません。
医師個人の確保という束縛性の強い表現ではなく、対話性のある表現の方が良いと思います。
救急医療の高配分も決まりましたが、それが救急やそのバックアップ体制の改善に向かうのか、中朝域的に見ていく必要があります。

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