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慢性腎臓病の”負の連鎖”を発見 体内時計を狂わせて腎機能が悪化

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慢性腎臓病の”負の連鎖”を発見 体内時計を狂わせて腎機能が悪化

©Getty images

 日本の成人のおよそ8人に1人が罹患しているとされる慢性腎臓病(CKD)。高齢化の進行や生活習慣病の増加に伴い、患者数が増えている。早稲田大学理工学術院と横浜市立大学の共同研究グループは、CKD患者では病気そのものが体のリズムを調節している体内時計を狂わせ、腎機能の悪化を促すという”負の連鎖”が起きていることを明らかにした。日ごろの生活習慣を整えて、体内時計のリズムの維持を目指せば、腎臓病悪化の予防につながる可能性があるとしている。

 研究グループは、慢性的な腎不全症状を起こさせたマウス(CKDモデルマウス)を用いて、CKDと体内時計の変化や睡眠障害との関連について調べた。また、体内時計をつかさどる「時計遺伝子」の1つであるClock(クロック)に変異を起こしたマウスを用いて、体内時計の乱れが腎臓病の発症や進行に影響を与えるかどうかを検討した。

 その結果、CKDモデルマウスでは活動量の低下、睡眠の断片化(睡眠の質の低下)、飲水行動や尿の増加が見られた。研究グループは、脳の視床下部に存在し、生体リズムを調節している「中枢時計」の働きが減弱していることが原因ではないかと考えた。

睡眠や血圧の日内変動リズムに狂いが生じる

 また、腎臓に存在し、24時間の周期を刻み、血液中の老廃物の濾過、尿の生成、血圧などをコントロールしている時計遺伝子の日内リズム(体内に組み込まれた24時間のリズム)に対する働きも低下していた。こうした変化に伴い、CKDモデルマウスでは血圧の上昇、心拍数の低下、睡眠時に血圧が低下しないといったCKD患者で見られる症状が認められ、体内時計の乱れが原因である可能性が示唆された。

 次に、時計遺伝子Clockに変異を生じさせたマウスにCKDを発症させた実験では、通常のCKDマウスと比べて、腎機能の指標となる尿中クレアチニン値の低下や炎症・線維化マーカーの悪化などが見られた。

 これらの結果から、CKDは病気そのものが中枢時計や体内時計の乱れを引き起こし、睡眠・覚醒パターンや血圧の日内変動のリズムに狂いが生じることが分かった。さらに、体内時計のずれにより腎機能の悪化が促されるという負の連鎖が起こることも明らかになった。

 研究グループは、一連のメカニズムを解明することにより、新たな体内時計調節薬や腎臓病治療薬の開発につながる可能性があると期待している。(あなたの健康百科編集部)

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