気象予報士ママの「健康注意報」 新見千雅
医療・健康・介護のコラム
小児も大人もつらい「ぜんそく」…長期的に薬でコントロールするには
寒冷なシベリア高気圧が発達する晩秋から冬にかけては、西高東低の冬型の気圧配置となる日が増えてきます。この時期は、北西の季節風によってシベリアの寒気が運ばれてくるため、本格的な寒さを感じます。
気温差や冷たい乾燥した空気は、気道を刺激しやすく、風邪をひきやすいというだけではなく、ぜんそくの症状が出現しやすい気候としても知られています。
また、風邪をひいたことから、ぜんそくに移行してしまうケースもあります。ぜんそくの診断をもともと受けている人は、気候の影響による症状の悪化に、より一層の注意が必要ですね。
30年前から大きく変わった治療…気管支の炎症を早期に抑える
ぜんそくとは、気管支が狭くなり、突然呼吸が苦しくなる疾患です。発作が起こると「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音が聴診器なしでも聞こえます。この笛のような音は 喘鳴 と言います。
ぜんそくの治療は30年程前とは大きく変化しているので、いま子どもを育てている親世代の治療のイメージと、現在の治療とでは全く違ったものであるかもしれませんね。
当時は、気管支の周りにある「 平滑筋 」が収縮して気道が狭くなり、発作がおさまると元の正常な気管支に戻ると考えられていました。
しかし、近年では、気管支が収縮するのは炎症から引き起こされるものであり、発作がなく自覚症状のない時でも慢性の炎症が起きていて、長期の管理が必要な疾患という認識に変化しています。
また、気管支の炎症がある程度持続すると、粘膜が厚くなって元に戻らなくなるという「リモデリング」という変化があることがわかってきています。そのため、発作が起きた時だけでなく、早期に炎症を抑える治療を継続的に行うことが、とても大切です。
近年では、慢性の炎症を最も効率的に抑える薬剤として「吸入ステロイド薬」が導入されており、大幅に死亡率が減少しています。
年間の死亡者は、1980年には6000人を超えていましたが、近年では成人は2000人を下回っており、小児は10人以下となっています。
その一方で、ぜんそくと診断される人は増加傾向にあり、日本国内の小児ぜんそくの有病率は約5%と言われています。
吸入ステロイド薬…自己判断で中断しない
小児ぜんそくは15歳までに発症するもので、その中でも5歳未満は乳幼児ぜんそくといいます。
成人のぜんそくは、成人してから新たに発症するものと、小児ぜんそくが治りきらずに再発するものがあります。
どちらのぜんそくも、原因は気道の炎症ですが、小児ぜんそくはアレルギー性のものが多く、成人ぜんそくは小児に比べると非アレルギー性のものが多いという違いがあります。
小児、成人どちらのぜんそくも、長期的に薬でコントロールすることが必要です。長期間管理するための薬は、主に吸入ステロイド薬を使います。気管支の収縮をおさえる「ロイコトリエン受容体 拮抗 薬」や、6歳以上なら症状によってはアレルギーを起こす物質IgEをおさえる生物学的製剤が選択されるなど、治療の幅が広がっています。
ステロイド薬には不安を持つ方が多いかもしれませんが、気道だけに作用するため、全身的な副作用が少ないと考えられています。
しかし、薬で長期間コントロールしていると、全く症状がないというわけではなく、一定の期間で症状を繰り返す方も少なくないようです。
長期間の薬の使用に抵抗がある人も多いと思いますが、自己判断で中断することがないように、薬の量を減らすタイミングなどについて、主治医の先生に相談するのもいいかもしれません。
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