文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直

医療・健康・介護のコラム

「個性ではない。障害です」医師の厳しい言葉に…僕が初めて「自閉症」と向き合った日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

泣く妻 跳びはねる息子

「個性ではない。障害です」医師の厳しい言葉に…僕が初めて「自閉症」と向き合った日

そのころの洋介(左)

 千葉の郡部に引っ越すことが決まっていた僕らに、

 「(大都市の)ここなら様々な支援が受けられますが、引っ越した先には何もありませんよ。覚悟してください」

 という言葉が追い打ちをかけた。

 まだ泣いている妻と、傍らで上機嫌にぴょんぴょん跳びはねている長男を連れて、区役所からのバスを待った。バスはなかなか来なかった。真っ青に晴れ上がった空に風景がこびりついて、まるで油絵だと思った。

 ようやく来たバスで駅に行き、そこで別れた。僕はその足で職場へと向かったのだ。いつもより遅い時間の都心へ向かう列車はすいていて、僕はぼんやりと座っていた。特段、悲しいとも、つらいとも思わなかった。ただ、それまではかわいいだけだった息子とのいろんな思い出や、他人の言葉や、漠然とした考えが、意識を出たり入ったりした。

無意識のうちに涙が…

 40分ほどたって、職場に最寄りの水天宮前駅が近づいた。当時は、そこが地下鉄の終点だった。心の中は空白に近かった。だけど、気がつけば、両目からは涙がボロボロと流れ出ていた。他の乗客が ()(げん) な顔でこちらを見ている。人はおかしいから笑うのでなければ、悲しいから泣くのでもない。ただ、あふれ出るのだと知った。

 医師の厳しい言葉は、現実を見ない若い両親の目を覚まさせるためだったのだろうか。 思えば、僕と息子の歴史は、この日、始まったのだ。(梅崎正直 ヨミドクター編集長)

 この連載では、もうすぐアラサーに突入する自閉症の長男を巡る、けっこう大変だけどフツーの日々をつづっていく。

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

umezaki_masanao_prof

梅崎正直(うめざき・まさなお)

ヨミドクター編集長
 1966年、北九州市生まれ。90年入社。その年、信州大学病院で始まった生体肝移植手術の取材を担当。95年、週刊読売編集部に移り、13年にわたって雑誌編集に携わった。社会保障部、生活教育部(大阪本社)などを経て、2017年からヨミドクター。

アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直の一覧を見る

15件 のコメント

コメントを書く

障害は周りにある不便さのこと

フルイ

私の孫は自閉症と診断された。保育園に入って1か月もたたないうちに「うちではこれ以上お預かりできません」と言われた。次に入園した保育園では、専任の...

私の孫は自閉症と診断された。保育園に入って1か月もたたないうちに「うちではこれ以上お預かりできません」と言われた。次に入園した保育園では、専任の先生がついてくれた。マンツーマンで教わることができたおかげで2年間通うことができた。

つづきを読む

違反報告

子どもの障害

WizardOzu

うちにも2人の息子がいる。長男はアスペルガー症候群、次男は注意欠陥・多動性障害(ADHD)。何で2人とも障害があるのか、と悩みました。でも子ども...

うちにも2人の息子がいる。長男はアスペルガー症候群、次男は注意欠陥・多動性障害(ADHD)。何で2人とも障害があるのか、と悩みました。でも子どもが成長するにつれ、親が死んだ後、子どもたちが何とか暮らしを立てられるようにすることが親の仕事と考えて、いろいろな教育施設に通わせた。まあ今は2人とも曲がりなりにも給料をもらって生活している状況ですが、独立しての生活は難しい。他の人がどう思うかは別にして、この障害も一つの個性ととらえることにしている。個性とはその人間が持っている性格、障害全てを含めてでいいのではないかと今は思う。

つづきを読む

違反報告

障害は個性ではない

頑張る

障害を個性と言う人もいるが、障害を個性とは何? 障害は個性ではない。障害は障害。障害があっても頑張ることが大事。

障害を個性と言う人もいるが、障害を個性とは何? 障害は個性ではない。障害は障害。障害があっても頑張ることが大事。

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事