アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直
医療・健康・介護のコラム
「個性ではない。障害です」医師の厳しい言葉に…僕が初めて「自閉症」と向き合った日
泣く妻 跳びはねる息子
千葉の郡部に引っ越すことが決まっていた僕らに、
「(大都市の)ここなら様々な支援が受けられますが、引っ越した先には何もありませんよ。覚悟してください」
という言葉が追い打ちをかけた。
まだ泣いている妻と、傍らで上機嫌にぴょんぴょん跳びはねている長男を連れて、区役所からのバスを待った。バスはなかなか来なかった。真っ青に晴れ上がった空に風景がこびりついて、まるで油絵だと思った。
ようやく来たバスで駅に行き、そこで別れた。僕はその足で職場へと向かったのだ。いつもより遅い時間の都心へ向かう列車はすいていて、僕はぼんやりと座っていた。特段、悲しいとも、つらいとも思わなかった。ただ、それまではかわいいだけだった息子とのいろんな思い出や、他人の言葉や、漠然とした考えが、意識を出たり入ったりした。
無意識のうちに涙が…
40分ほどたって、職場に最寄りの水天宮前駅が近づいた。当時は、そこが地下鉄の終点だった。心の中は空白に近かった。だけど、気がつけば、両目からは涙がボロボロと流れ出ていた。他の乗客が 怪訝 な顔でこちらを見ている。人はおかしいから笑うのでなければ、悲しいから泣くのでもない。ただ、あふれ出るのだと知った。
医師の厳しい言葉は、現実を見ない若い両親の目を覚まさせるためだったのだろうか。 思えば、僕と息子の歴史は、この日、始まったのだ。(梅崎正直 ヨミドクター編集長)
この連載では、もうすぐアラサーに突入する自閉症の長男を巡る、けっこう大変だけどフツーの日々をつづっていく。
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