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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

子どもが急に発熱 スマホで病児保育の空き検索、申し込み

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産婦人科医が発案 「あずかるこちゃん」

 子どもが急に熱を出した。幸い大事はなさそうだが、普段利用している保育園では預かってもらえない。でも、明日は会社で大事な会議。仕事を休むわけにもいかない。病気の子どもを預かってくれる施設や空き状況がすぐに分かり、簡単に予約をすることができる仕組みがあればいいのだけど――。

 そんな親の願いをかなえたいという一人の産婦人科医が発案したのが、病児保育運営支援システム「あずかるこちゃん」だ。1月23日に東京都内で開かれた「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2020」(経済産業省主催)では、開発・運営するベンチャー企業「CI Inc.」(シーアイ・インク)が、ビジネスコンテスト部門のグランプリを受賞した。昨年秋に始めた実証実験を経て、いよいよ4月には本格稼働する予定だ。

ニーズはあるのに低い病児保育の利用率

ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテストでグランプリ受賞のスピーチをする園田さん

ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2020でグランプリ受賞のスピーチをする園田さん

 CI Inc.の代表を務める園田正樹さん(37)は、産婦人科医として産後うつなどの問題に関わりつつ、大学院で公衆衛生を学び、病児問題の解決に実践的に取り組みたいと2017年に会社を設立した。

 発熱や感染症などのため、通常の保育園などで預かることができない「病児」の一時的なケアや保育のためには、医療機関や保育園などに設けられた「病児保育室」がある。ところが、園田さんによると、制度そのものの認知度が低いことや予約方法などの使い勝手の悪さから、利用率が低いのが実情だ。申し込み予約は多くが電話であり、病状の変化などによるキャンセルも多く、施設側にとっても忙しい朝の時間帯に、問い合わせに応じなければならないなどの負担が大きいという。

空き状況を「見える化」 希望順に複数施設の予約も

 そこで、「あずかるこちゃん」のシステムでは、スマホのサイトから地域の病児保育室の場所を検索でき、契約している施設については、詳しい内容や空き状況を「見える化」し、そのまま予約の申し込みができるようにした。LINEでも24時間の予約やキャンセルが可能にする。

 また、今後、自治体との契約ができた場合には、利用者が希望順位をつけたうえで複数の施設を予約することができるようにもする。たとえば自宅近くの第1希望の施設に空きがなければ、とりあえず第2希望の施設を確保しておき、第1希望の施設にキャンセルが出れば、自動的に繰り上がるという仕組みだ。

 施設間で利用状況の情報を共有することで、たとえば同じ種類の感染症の子どもは同じ部屋で受け入れるといった調整が可能になり、受け入れの幅も広がるとしている。

昨秋から実証実験を開始 4月に正式スタートへ

 「あずかるこちゃん」は、病児保育室のある医療機関・保育施設や事業を委託している主体の自治体と契約してシステムの利用料を得るビジネスモデルだ。

 2019年10月から、東京都内の病児保育室をはじめ全国5か所で、実際に予約申し込みに「あずかるこちゃん」を活用してもらう実証実験を進めている。20年4月には、正式に運用をスタートさせる予定で、契約施設の増加や自治体への普及を図りたい考えだ。将来的には、「あずかるこちゃん」の運用を手始めに、病児保育が抱える様々な課題の解決に取り組んでいきたいとしている。

ベンチャーと大企業との連携促進目指す

 「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト」は、ヘルスケア分野の社会的課題の解決に挑戦する団体や企業を表彰するコンテストで、今年で5回目。ベンチャー企業と大企業や投資会社などのマッチングを図ることで、成長を促すことを目的としている。この日のイベントには、ファイナリストに選ばれた「ビジネスコンテスト部門」の5者、「アイデアコンテスト部門」の4者が、熱いプレゼンテーションを行った。

 このうちビジネス部門では「あずかるこちゃん」の他に、アトピー性皮膚炎の患者が画像を投稿して情報を共有することで支え合うアプリや、糖尿病の患者が5人1組で励まし合いながら生活習慣の改善に取り組むアプリ、哺乳瓶を参考に開発した誤嚥(ごえん)予防のための訓練器具、VR(バーチャルリアリティー)を活用した発達障害のある人のトレーニングプログラムと、ユニークな事業が紹介された。

 会場を埋めたのは、コンテストの出場者を応援する民間企業などの「サポート団体」で、直接採点には関係しないものの、プレゼンが終わるたびに、応援したい発表に対し、社名の入ったプラカードを掲げた。読売新聞社もサポート団体のひとつとして「yomiDr.」のプラカードを上げた。

 医療や健康に関わる課題を解決したいという思いをビジネスとして成り立たせ、発展、継続させていくには、乗り越えなければならない問題は多いだろう。コンテストの審査員から発表者への質問でも、具体的な事業化に向けての課題などが聞かれた。夢を実現していってほしいと願う。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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社会のセーフティネットのレベルを上げる

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

籠に乗る人担ぐ人、そのまたわらじを作る人。 田中角栄の本で知りました。 このようなネットワーキングサービスは、今後競合他社も含めて増えていくべき...

籠に乗る人担ぐ人、そのまたわらじを作る人。
田中角栄の本で知りました。
このようなネットワーキングサービスは、今後競合他社も含めて増えていくべきでしょう。
皆が使うものであれば、直接対価だけでなく、広告料の発生する余地があります。

現実問題、子供や老人や病人の世話は核家族化や一人家族化の進む中で、また政府の行う男女共同参画の中で必然的に発生してくる話です。
たまに預けられる場所があれば、育児ストレスによる虐待なんかも減るでしょうし、非行なんかも減ると思います。

他紙でもありましたが、そういうシステムにはフリーライド(タダ乗り)の問題とか色々あるわけですが、そもそも問題があってもシステムがないよりましですし、量があってこそ質を選べるわけですから、企業も政府も推進していく必要があります。
利用者が増えるほどに、コストダウンも質の改善も望めます。
東京に人口が集まる構造と同じです。
逆に、その中で実績やスキルを身に着けて、稼げる人も出てくるでしょうから、仕組みを整えた市町村が人口増大や維持に向かうのではないかと思います。

専門家や役人の上層部の判断が現実を良い方向に動かせる状況にない時、補完システムが発生してきていいと思いますし、そういうものを見て官の方もやり方を変えればいいと思います。
僕が書いているのはまさに口だけですが、それを見た誰かが形にしていけばいいのではないかと思います。

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