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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

医療・健康・介護のコラム

3枚目のパッドはこう使う! これがプロのオムツ交換テクだ

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「朝まで安心」の技を学ぶ

 4人部屋の父さんのベッドをカーテンで囲むと、ベテランの男性スタッフが、「岡崎さん、お嬢さんにオムツの当て方を教えるので、少し付き合ってくださいねー」といいながら、なれた手つきで父さんのズボンをズルリと下ろし、いきなり大事な部分が丸出しに。補助役の女性スタッフも含む3人の大人が、下半身すっぽんぽんのおじさんを取り囲んでいます。ちょっとシュールな光景に、娘としては、なんだか複雑……。

 ベテランスタッフによると、「いろいろ試した結果、このあて方ならば、夜9時から朝5時まで尿モレ知らず」とのこと。「そ、そんなに、長時間モレずに済むのか!」と驚き、プロの超絶テクニックを習得しようと、気持ちを切り替えました。

漏斗状のパッドの中に…

 まずは、テープタイプのオムツを手に取り、ギャザーをしっかり立てます。このギャザーには、防壁となって尿や軟らかい便をせき止める役割があるのですが、寝かせたままだとその役目を果たせないのです。

 そして、横向きに寝た父さんのお尻のすぐ脇にオムツを広げて置き、お尻が当たる部分に尿取りパッドを重ねて敷きます。そこに父さんのお尻が乗るように、あおむけに寝転がってもらいます。

 股の間に、オムツのおなかが当たる部分があるので、そこに2枚目のパッドを重ねます。

 「なるほど、後ろと前をパッドで完全ガードするのね!」

 ここで3枚目のパッドを手に取り、くるりと巻いて先のとがった漏斗のような形にしたかと思うと、いきなりその中に父さんのアレの先を差し込んだのです! すっぽりとかぶせて包み込んだら、先端をおへそ側に倒して、穴をふさぎます。

 「おしっこが出る部分に直接巻くから、しっかり吸収してモレにくいんだ~。すっかり忘れていたけれど、ヘルパーの資格を取った時、講座で習ったかも!?」

 ベテランスタッフによると、この尿取りパッドの3枚使いがコツなのだとか(ちなみに男性と女性では、パッドのあて方が違うそうです)。

最後のテープ貼りが最重要

 最後に、股の間からオムツの前部を引き上げて下腹部全体をくるみ、左右に2本ずつあるテープで留めるのですが、実はここが一番重要! ウエストにぴったりとフィットさせながら、上のテープを貼ります。足回りもグッと引っ張り、太ももの付け根とオムツの間になるべく隙間ができないようにして、下のテープを留めます(あまりきついと本人が苦しいので、引っ張り過ぎに注意)。上のテープの先端を下(脚の方)、下のテープの先端を上(ウエストの方)に向けて、クロスさせるのがコツです(本人の体格によっては、クロスではなく平行やハの字にした方がいい場合もあるようです)。

 「赤ちゃんのオムツはテープが1本だったけど、大人は2本あるんだよな~」

 こうして無事、「朝まで漏れないオムツのあて方講習」は終了。「今夜のオムツ替えは任せて!」と、意気揚々と父さんと実家に戻ったのでした。

成果を見せる機会が…

 ああ、それなのに……。4か月ぶりの我が家で、ずっと楽しみにしていた刺し身をはじめ、大好物が並んだ夕飯をたらふく食べた父さんは、なんと食事中に「大」を漏らしたのです。大慌てで汚れたオムツを外し、とりあえずパンツタイプをはいてもらったら、いろいろあった一日で疲れたのか、「今日は、もう寝る」と、そのままベッドへ。もちろん翌朝はいつもの通り、パジャマも布団もびちょびちょです。父さんは、その日の午後からショートステイ施設に入り、1か月先までそこで暮らす予定。私がせっかくマスターした技を披露する日は、いつ来るのでしょうか……。(岡崎杏里 ライター)

登場人物の紹介は こちら

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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