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思春期の子どもを持つあなたに

妊娠・育児・性の悩み

第13部 第二次性徴がもたらす、心の変化(下)子どもは、自分の人生をスタートさせようとしているものの……

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体が性的に成熟に向かうと、親の存在が

 思春期に入り、ひげが生えて、体も大きくなったA君が、相変わらず幼い子どものままでいることを、母親は当然と思っているようでした。

 A君が年齢相応に性的な興味をもったり、親離れとともに、自己主張を始めたりしていることにも、理解することが難しいようでした。

 そんな傾向は、A君の母親に限ったことではありません。

 成長して、体が大きくなっても、「いつまでも親の意に沿う素直で従順な子どもであり続けてほしい」と願う親はたくさんいます。大きくなったわが子を、幼いころと同じように自分の手元において、あれこれ世話を焼き続けたい、と考える親もしばしばいるわけです。

 でも現実は、思春期を迎えた子どもと親の関係は、変化することが自然なことなのです。

 「第二次性徴」を迎え、体が性的に成熟に向かうと、それまでは、なんでも親に相談して、助けを求めてきた子どもでも、性的な興味や関心が芽生えてくると、それを親との間で共有することはできなくなります。これが親離れの本質になります。

「意地でも親との関係を断ってやろう」と

 自分の子どもに親離れが始まったとき、親は気づかなければならないことがあります。それは、子どもに対して、「してあげられること」「できないこと」があるということです。

 この段階で、子どもは親とは異なる自分自身の人生をスタートさせようとしているのです。

 親がそのことに気づかず、幼年期同様に「親がなんでもしてあげられる」と思いこんでいると、子どもの内面には「蹴っ飛ばしてでも、意地でも親との関係を断ってやろう」との強い反抗心が芽生える可能性があるのです。

 さらに、親が自分自身の親から自立せずに、経済的、精神的に依存している場合には、親離れしていく子どもの気持ちが理解できなくなりがちです。

 子どもが離れていくことに抵抗し、かえって過干渉になることで、結果的に子どもの激しい反発を繰り返し誘発してしまっている親御さんも少なくありません。

 ですから、クリニックで「子どもの反抗がひどい」との訴えに対しては、親子間でどのようなやり取りが繰り返されてきたかを思い出してもらう必要があります。

 親自身が、自分の親から自立できていない、つまり「親離れできていない親」の場合、自分が子離れしたり、自分の子どもが親離れをしたりするときに、子ども以上に痛みを伴うことも多くなります。

 親離れ、そして子離れは、親にも一層の成熟を求められる、難しい課題であると言えます。

思春期に性的な興味を持つことは当然

 さて、A君です。

 ちょうど大人への発達路線を進み出した時期であり、彼の言動は決して異常なことではなく、むしろ喜ばしいことなのです。というのも、いつまでも幼稚園時代のような親子関係から抜け出せず、なんでも母親に依存する習慣が抜けない子どもも少なくないからです。
 その意味では、思春期に入ったA君の行動は、きわめて当然のことなのです。

 A君の母親は、それまで忙しい夫に代わり、一手に子育てを引き受けてきました。
 そこで私は、「思春期に対しては、息子と同性の父親が助けられることがある」と伝えました。そもそも、A君の母親は、自分が女ばかりの姉妹の中で育ったため、A君の性的な興味や体の変化についてよくわからなかったことで、不安になることが多かったようです。

 A君の年頃では、性的な興味を持つことは自然なことです。まず、それを母親に理解してもらい、性的なことへの心配は父親に任せるように伝えました。

 つまり、難しい思春期に入ったからこそ、今まで以上に思春期の子どもに対しては両親の協力が必要であることを伝えました。

 A君の父親も、それを理解してくれたそうです。

 継続的に数回来院した母親は、A君の変化を理解できるようになっていきました。息子の自立を尊重し、それに伴って、A君の反発を誘発する行動もなくなっていきました。それまでのように、息子に対し「母親がなんでもやってあげる」という考え方を手放したのです。

 思春期を迎えた子どもの変化に驚き、精神的な病気を心配したり、また病気ではないとわかっていても、思春期の子どもにどう接していいのか迷ったりする親御さんは少なくありません。また、子どもの変化に落胆して、自分自身を責めたり、子育てを投げ出したくなったりすることも珍しくありません。

 しかし、そのような状態のままでは、親子関係はますます悪化してしまいます。親自身が精神的なつらさを抱えこみ、そこから抜け出せなくなった場合には、専門家に相談されることをお勧めします。(関谷秀子 精神科医)

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