歌手 丸山圭子さん
一病息災
[歌手 丸山圭子さん]卵巣嚢腫(のうしゅ)(3)入院中 未来へのヒント
手術後の入院は1か月ほどに及んだ。ベッドの上では、子どものこと、退院後の生活のこと、そして離婚成立後の音楽活動への復帰について考えた。
1970年代にシンガー・ソングライターとしてデビューし、大ヒットも出すことができたが、音楽界は大きく変化していた。90年代半ばは、カラオケで盛り上がるような派手な曲ばかりが売れ、大人がじっくりと耳を傾けられるようなサウンドは苦戦していた。
復帰してから、どんな曲を作り、歌っていけばいいのだろうか――。
そんなことを考えながら、病院の大部屋のベッドで体力の回復を待ちつつ、ヘッドホンで様々な音楽を聴く日々だった。
ある日、主治医から「いつも何を聴いているんですか?」と尋ねられたことをきっかけに、自分が音楽を作り、歌ってきたことを話した。隣のベッドに入院していた20歳ぐらいの女の子が、その会話を聞いて、目を輝かせた。ぜんそくの治療中だが、シンガー・ソングライターを目指し、自分で曲を作り、歌っているという。
「退院したら、私に作詞作曲、それに歌を教えてください」と言われた。
気軽に「いいですよ」と答えたが、それが自分の未来にとって、新しい可能性を示唆していたことには、まったく気づかなかった。
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歌手 丸山 圭子さん(65)
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