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夫と腎臓とわたし~夫婦間腎移植を選んだ二人の物語 もろずみ・はるか

医療・健康・介護のコラム

「キノコをもらったマリオのよう」と言われ…でも、夫がくれた腎臓 いつまで維持できるの?

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 昨年暮れに、友人とご飯を食べながら腎移植の話をしていた時のこと。友人に、「腎移植って、キノコを食べて元気になるマリオみたいだね」と言われて意表を突かれたことがあった。

 その時は、「腎臓を食べたわけじゃないけどね」と笑ってしまった(マリオがゲットしたキノコを食べているのかは知らない)。だけど、後になって、「マリオのキノコだったら、どんなにいいだろうなぁ……」と少し考え込んでしまった。夫から提供された”キノコ”は二つとなく、失われる可能性もあるからだ。

移植後2週間で訪れた移植腎を失う危機

「キノコを食べたマリオのよう」と言われ…でも、夫の腎臓をいつまで維持できるの?

 実は、腎移植後2週間で急性拒絶反応を起こし、移植腎を失いかけたことがある。自覚症状はなく、いや、むしろ体調は絶好調だった。だから、医師に血清クレアチニン値の急上昇を指摘された時は、「ウソでしょ」と、夢から覚めたような絶望感があった。

 しかしなぜ、急性拒絶反応は起こってしまったのか。前提として、夫と私の“相性”は悪くなかったはずだ。腎移植前に行った適合検査によると、私たちのリンパ球クロスマッチの相性は、3段階評価のいちばん上だった。医師から「バッチリですね」とお墨付きをもらい、「金メダルとったようなもんだよ」と大喜びしたのは、幻だったのだろうか。

ただ、いくら相性が良くても、血縁関係にない夫の腎臓を移植している以上リスクはあった。さらに、私には妊娠歴があり、「抗ドナーHLA抗体」もある。移植後3か月は、非常にゆらぎやすい状態で、何があってもおかしくなかったのだ。

 落ち込む私を励ましてくれたのは、私の主治医である東京女子医科大学病院の石田英樹先生。「大丈夫。急性拒絶反応は、早期に発見できれば、その大部分は薬で治療ができます」と話してくれた。

 その言葉通り、血液検査で血清クレアチニン値の急上昇が認められたその日、精密検査の腎生検とステロイドパルス療法が行われ、翌日には腎機能は正常値に戻った。それから2年間、移植腎の腎機能は安定し、心身ともに健やかに生活できている。

油断は禁物 元の疾患が再発することも

 石田先生によると、移植後に、腎機能増悪をきたす要因は、移植後早期なのか、それとも維持期(移植後4か月以上)なのかによって、大きく異なるという。だからこそ、いかなる場合にもすぐに対処できるよう、検査を行い、病態を鑑別して適切な治療をする必要がある。

 早期の場合は、急性拒絶反応の他に、腎動静脈の血流不全、 膀胱(ぼうこう) 尿管逆流など移植手術に伴うものがあげられるが、術後、時間がたつとともに、それらの頻度は減る。

 一方、維持期になって腎機能が悪化した場合、拒絶反応、糸球体腎炎などの原疾患の再発、薬剤性腎障害、感染症、尿路合併症などが主な原因にあげられる。

 私の原疾患である「IgA腎症」が再発する可能性もあるそうだ。再発すれば、腎移植以前と同じように、「尿たんぱくを1g/日未満、血圧を130/80mmHg未満にし、高脂血症などもコントロールすることが大切で、食事療法や降圧剤、ステロイドなどの内服薬による治療が基本」となる。

 救いもある。移植腎は急には悪くならないそうだ。20年、30年とゆるやかに腎不全に至ったタイプのレシピエント(臓器受容者)は、やはり、ゆっくりと長い年月をかけて悪化の一途をたどるのだろう。

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もろずみ・はるか

医療コラムニスト
 1980年、福岡県生まれ。広告制作会社を経て2010年に独立。ブックライターとしても活動し、編集協力した書籍に『成約率98%の秘訣』(かんき出版)、『バカ力』(ポプラ社)など。中学1年生の時に慢性腎臓病を発症。18年3月、夫の腎臓を移植する手術を受けた。

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