文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

大人の健康を考える「大人び」

医療・健康・介護のコラム

「健口」で健康(5)磨き残し除去し歯周病予防

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 このシリーズでは、予防歯科学が専門の大阪大歯学部教授、天野敦雄さんに聞きます。(聞き手・佐々木栄)

「健口」で健康(5)磨き残し除去し歯周病予防

 歯は親知らずを除いて28本あります。日本人の歯の平均本数は40歳代で27・8本ですが、50歳代では25・8本、80歳代になると13・6本まで減ってしまいます。仕事の忙しさを理由に、歯に無頓着だった人が定年後、「現役時代に歯医者に行っておけば……」と後悔することも多いのが現実です。

 歯を失う最大の要因は、プラーク( 歯垢しこう )に潜む歯周病菌が引き起こす「歯周病」。症状が進むと、歯肉が腫れたり、歯を支える歯槽骨が溶けたりします。日本人の8割が歯周病で、▽4割は軽度(歯磨きで治る)▽3割は中等度(歯が抜けるのを治療で防げる)▽1割は重度(歯が多く抜ける)――となっています。

 ある時、62歳のご婦人が予防歯科を受診されました。「主人の母は朝しか歯磨きしないけれど、85歳で歯が全部ある。なのに朝晩磨く私はもう7本も失った」と。差はどこにあるのでしょう。

 歯周病は、歯ぐきの抵抗力と比べて歯周病菌の病原性が高い人に発症します。抵抗力に影響を与えるのは遺伝と生活習慣です。健康的な食事、規則正しい生活、たばこを吸わない、ストレスが少ない、などが歯ぐきを強くします。

 歯周病を発症しやすい菌は、18歳以降にキスでうつるとされます。 直箸じかばし などによる唾液感染もあります。犬や猫の歯周病菌も人にうつるので、顔をなめられないようにするのが無難でしょう。

 歯周病は正しい歯磨きで予防できますが、たいていはどこかに磨き残しがあります。だからこそ年に2~3回、歯科で磨き残しを除去してもらう必要があるのです。

【略歴】
 天野 敦雄(あまの あつお)
 大阪大学歯学部教授。高知市出身。1984年、大阪大学歯学部卒業。ニューヨーク州立大学歯学部博士研究員、大阪大学歯学部付属病院講師などを経て、2000年、同大学教授。15年から今年3月まで歯学部長を務めた。専門は予防歯科学。市民向けの講演や執筆も多く、軽妙な語り口・文体が好評を得ている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

otonabi_logo_200

大人の健康を考える「大人び」
大人に特有の体の悩みに応えるコーナーです。各テーマの専門家がアドバイスします。

大人の健康を考える「大人び」の一覧を見る

最新記事