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がん患者団体のリレー活動報告

コラム

トリプルネガティブ乳がん患者会「ふくろうの会」

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TNBCの正確な情報を発信

 ホルモン剤も分子標的薬も効かない「トリプルネガティブ」と呼ばれるタイプの乳がん(Triple negative breast cancer; TNBC)は、他のタイプに比べて進行のスピードが速いため、再発率が高いと言われます。治療の主な選択肢は、抗がん剤となります。トリプルネガティブ乳がんは、乳がん全体のおよそ10~15%と言われており、認知度は低く、情報も十分ではないのが現状です。「ふくろうの会」は、そのような状況・環境を改善するために活動しています。

トリプルネガティブ乳がん患者会「ふくろうの会」

第10回勉強会で、トリプルネガティブ乳がんについて学ぶ会員と一般参加者。講師は神戸市立医療センター中央市民病院乳腺外科の木川雄一郎先生(2019年9月、神戸市内で)

治療の選択肢が少ない乳がん

 乳がんには「サブタイプ」というものがあり、それによって治療法が異なります。TNBCは早期で発見されてもほとんどの場合、抗がん剤治療が必要になります。多くの乳がん患者さんが受けているホルモン療法は効果がありません。薬の選択肢が少なく、薬剤の開発がTNBC予後改善の要になると言われています。

 会の創立者である福原宏美は2012年5月に32歳で「TNBC」と診断されました。当時、TNBCという病気をインターネットで調べても、数行しか書かれておらず、何一つ良いことがなく、TNBCの患者会がない…というのが現状でした。

 どんな病気かもよく分からず、同じ悩みを共有できる仲間ともなかなか出会えないため、不安と孤独を感じていました。さらにこの病気が抱える問題や現状を調べる中で、効果があるだろうと分かっている薬が使用できないことや、新薬の臨床試験が進んでいないことも知りました。

 目の前に効果があるかもしれない薬があるのに使えない現状に、悔しくてたまりませんでした。そこで、仲間と共に患者会を立ち上げる決意を致しました。

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勉強会が開かれた会場には、抗がん剤による脱毛に備えたウィッグを希望者に無償提供している

 「ふくろうの会」は、

 「TNBCの現状と正確な知識や情報を多くの方々に知ってほしい!」 

 「TNBCに対して有効とされる薬が、一つでも多く保険適用になってほしい!」

 この二つが当会の大きな活動目標であり、ホームページや勉強会による啓発活動、薬の承認のために行われる臨床試験の推進活動を行っています。

 「ふくろう」には、「先を見据えて切り開く力」という意味があります。

 TNBCの「予後不良」という現状を払拭できるよう、前に進み、道を切り開いていきたいという思いで、「ふくろうの会」と名付けました。

新薬の承認に向けて署名活動や要望書提出

 私たちは、「患者だからこそできることがある!」という思いを大切に、何ができるか、何をしたらよいか、について会員皆で考えて活動をしてきました。以下に紹介する二つの活動は、まさに患者当事者だからこそ、という思いが伝わり、成し遂げることができた活動だと思います。

TNBCに対するカルボプラチンの有効性を評価する臨床試験実施に向けて製薬会社に薬剤の無償提供を要望するための署名活動

 TNBCに対してカルボプラチンという抗がん剤の効果が期待されていますが、現状では保険適用されておらず、さらなる臨床試験が求められています。そんな中、当会顧問である神戸大学病院乳腺内分泌外科特命教授の谷野裕一先生が主導され、カルボプラチンを用いた臨床試験が計画されました。しかし、この試験に要する費用は膨大で、大きな壁となりました。

 何か協力できることはないかと考えましたが、当会のような弱小患者会が寄付金を募ったとしても大きな力にはなりません。そこで、製薬会社にこの臨床試験に使うカルボプラチンの無償提供を要望しようと考え、2017年12月から18年12月まで署名活動を実施し、約9000人もの署名をいただきました。その思いが届き、日医工株式会社が臨床試験に使われるカルボプラチンを全て無償提供してくださることになり、現在試験が行われています。

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アテゾリズマブの早期承認と適正使用に関する要望書を提出

 免疫の力を使ってがんを攻撃する免疫チェックポイント阻害剤「アテゾリズマブ」という薬剤が、大規模臨床試験でTNBCに効果的であると報告されました。そこで当会は、TNBC患者がこの薬で少しでも早くかつ安全に治療を受けることができるよう、他の患者会と共に2019年7月、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)に、本薬剤の早期承認、医療機関での適正使用の推進を要望しました。

 その結果、同年9月20日、「PD-L1陽性のTNBC」に対して保険適用されました。同年11月27日には薬価収載され、販売開始となりました。また、要望書提出のもう一つの成果としては、保険適用から薬価収載までの期間に生じる「ドラッグラグ」に対して、施設限定で中外製薬が薬剤を無償提供してくださったため、薬を必要としている全国の患者さんたちに届けられました。

 ふくろうの会はこれからも、患者の思いを大切に、TNBCの未来のために何ができるかを考えながら、活動を続けてまいります。

トリプルネガティブ乳がん患者会「ふくろうの会」

 2016年1月に会代表の福原宏美ら患者数人により設立された。会員数は現在、約130人。拠点はおかずに、〈1〉全国の患者様に向けてホームページによる情報提供〈2〉年に2回程度、勉強会と懇親会開催(これまでに東京都、名古屋市、大阪府、神戸市、広島市で開催)〈3〉会代表の福原が、市民公開講座や大学医学部講義に招かれて講演〈4〉勉強会の内容をまとめた記事や、新薬情報、活動報告などを掲載した会報を年2回作成…などの活動を行っている。2020年は4月19日に第11回勉強会を東京都内で開催する予定だ。

 ホームページ  https://tnbcfukurounokai.wixsite.com/tnbc

 このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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公益財団法人 正力厚生会

 正力厚生会は1943年(昭和18)に設立され、2009年に公益財団法人となりました。「がん医療フォーラム」の開催など、2006年度からは「がん患者とその家族への支援」に重点を置いた事業を続けています。
 現在は、医療機関への助成と、いずれも公募によるがん患者団体への助成(最大50万円)、読売日本交響楽団弦楽四重奏の病院コンサート(ハートフルコンサート)を、事業の3本柱としています。
 これからも、より質の高いがん患者支援事業を目指していきます。
 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル29階
 (電話)03・3216・7122   (ファクス)03・3216・8676
  https://shourikikouseikai.or.jp/

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