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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

[余命3か月の入居](3) 愛犬と一緒に看取り介護での入居申請、職員で緊急会議

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 特別養護老人ホームで ()() りを行うこと。すなわち病院で亡くなるのではなく、ホームで亡くなるのを職員が看取り介護をすることは、昨今、厚生労働省が推奨しています。そのため、多くのホームが看取りを行っています。

 「さくらの里山科」では、毎年30名前後のご入居者様が亡くなりますが(現在の特別養護老人ホームは入居者が重度化しており、亡くなる方が多いのが普通です)、そのほぼ全てをホームで看取っています。

看取り介護の実施は非常に慎重

[余命3か月の入居](3)愛犬と一緒に看取り介護での入居申請、職員で緊急会議

 しかし、それでも私たちは看取り介護を行うのには非常に慎重です。それは看取り介護には大きなリスクがあるからです。リスクの主なものは家族とのトラブルです。それはどんなものか、一つ例をあげて説明します。

 看取り介護の結果、ホームの中で入居者が亡くなります。その時は、家族も穏やかに見送られたのに、数日後に (ひょう)(へん) する場合があるのです。最期に体調が急変した際、「なぜ救急車を呼ばなかったのか」「それはホームの過失ではないか」と責めてくるのです。もちろん、看取り介護をするのですから、「体調が悪化しても救急車は呼ばない」と家族と話し合って決めています。それでも、なぜ救急車を呼ばなかったと責められる場合があるのです。その背景には、家族間のもめごとがある場合が多いと思います。

救急車呼ばなかったことで家族とトラブルも

 例えば、いつもホームに会いに来て、ホームといろいろ相談している家族(私たちはこのようなご家族様をキーパーソンと呼んでいます)が長男だとします。入居者が亡くなった後、遠方にいて、普段は会いに来られない次男が、「なぜ救急車を呼ばなかったのか」と兄を責め立てるんです。次男は、最後の頃の入居者様の状態を実際には見ていなかったので、救急車を呼ばなかったことが納得できないのですね。

 もちろん長男は、救急車を呼ばないことについてホームと事前と話し合ったことは次男に説明してくれるはずです。しかし、次男から「兄貴はお袋が大切じゃないのか。お袋を殺されて悔しくないのか。それでも息子なのか」と言われると、言葉が返せなくなってしまうということもあるでしょう。

 そして、非常に嫌な話をすると、ホームの過失で死亡したのなら賠償金を請求できると考える方もいます。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里 山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。19年7月、ホームでの人とペットの感動のドラマを描いた「看取みといぬ文福ぶんぷくの奇跡 心が温かくなる15の掌編」(東邦出版、1389円税別)を出版、大きな反響を呼んだ。

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