ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
[余命3か月の入居](1)「俺はチロに看取られたいんだよ」愛犬と奇跡の日々
「俺はチロに 看取 られたいんだよ」。伊藤さんの言葉は、4年たった今も耳に焼き付いています。伊藤さんが息を引き取られる時の穏やかな顔と、それをひたむきに見つめるチロの瞳を思い出すと、今でも涙がにじんでしまいます。
延命もホスピスも拒否して入居
ポメラニアンのチロと飼い主の伊藤大吉さん(仮名)(写真)が、私が経営する特別養護老人ホームに入居したのは2015年10月のことです。その時、伊藤さんは末期がんのため、余命3か月と言われていました。余命3か月での入居、それは前代未聞のことでした。そして、伊藤さんがチロと過ごした日々は、私たちにとって忘れえぬものになったのです。
末期がんで余命宣告を受けたら、みなさんはどうしますか? 残された日々をどう過ごすか、誰もが必死に考えると思います。伊藤さんが望んだことは、愛犬のチロと一緒に過ごすこと、それだけでした。治療も延命も全てを捨て、入院もホスピスも拒否して、チロと一緒に過ごすことだけを選んだのです。そうして伊藤さんは、全国で唯一のペットと一緒に入居できる特別養護老人ホームである「さくらの里山科」にやって来ました。
入居当日からチロと散歩 車いすになっても毎日
伊藤さんは、チロとの生活を、チロと過ごす一瞬一瞬を本当に大切にしていました。なんと入居した当日、すぐにチロの散歩に出かけたのです。この頃、まだ伊藤さんは 杖 をついて歩くことが出来ました。季節は秋。枯れ葉の舞う街路樹の下を歩く伊藤さんとチロの影が長く伸びて重なるのを見て、伊藤さんの余命を知っている職員は、涙を抑えられなかったと語っています。
入居して2週間もたたないうちに、伊藤さんは歩くことが困難になり、車いす生活になりました。それでも車いすをこいで毎日、チロの散歩に出かけていました。
チロは、いつも伊藤さんと一緒にいました。夜はもちろん同じベッドで眠り、朝は一緒に起きてきます。日中は、いつも伊藤さんの膝の上にいました。丸まったチロの背を伊藤さんがなでると、チロはうれしそうに顔を上げて笑顔を浮かべるのでした。ふたりの姿は幸せそのものでした。
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私もワンコを飼っています。昔は猫も飼ってました30年も前に亡くなった愛猫の事を今も時々思います。子育てで忙しく二段ゲージの中で飼ってあまりスキンシップしてあげられなかった事が心残りです。寝込む事もなくある朝事切れていました13才でした。
その事を教訓にして今、飼っているワンコ逹には幸せな最後を迎えて欲しいと思っています。ペットは私にとっては家族と同じです。動物は命の時間が人より速く過ぎます悲しいけれど残りの時間を楽しい日々を過ごさせてあげたいと思っています。
ペットは家族と同じです最後も一緒に居たいのは人もペットも同じ気持ちだと思います。
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ペットにすがる気持ちの合理性
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心の支えがいかに大事かわかるエピソードですね。 そして人によっては、極めて主観的なものである可能性もありますが、それが有効であれば否定することも...
心の支えがいかに大事かわかるエピソードですね。
そして人によっては、極めて主観的なものである可能性もありますが、それが有効であれば否定することもできません。
死後もペットを預かってくれるというのが、今後利用されるのか、悪用防止の線引きも含めて難しいですが、ふと考えさせられます。
ペットは基本的に人間に逆らいません。
なぜなら、逆らえない人間社会だからです。
その構造がわかっていてさえ、なお、人間は裏切らないものにすがってしまいます。
未婚率も上がっていますが、将来起こりうる事態を思えば、今後一般的になっていくのかもしれないですね。
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