ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
[余命3か月の入居](1)「俺はチロに看取られたいんだよ」愛犬と奇跡の日々
願い通りにチロに看取られて旅立ち
伊藤さんの口癖は「俺はチロに看取られたいんだよ」でした。伊藤さんがこのセリフを言う時、膝の上にいるチロは、それまで眠っていたのに顔を上げ、ひたむきな瞳で伊藤さんを見つめていました。まるで伊藤さんの言葉がわかっているかのようでした。
その願いはかない、伊藤さんが最期を迎えた瞬間、枕元にはチロがいました。念願通り、チロに看取られて旅立たれたのです。
伊藤さんがよく口にした言葉が、他に二つあります。一つは「少しでも長くチロと一緒にいられるように頑張るぞ」というものでした。実際に、伊藤さんは一日でも長生きできるように必死だったと思います。病気のために食欲もないはずなのに、頑張って毎回すべての食事を召し上がっていました。大嫌いなピーマンまで召し上がっているので、娘さんが驚いたほどです。
余命をはるかに超える10か月
この二つめ目の願いもかないました。結果として伊藤さんは、さくらの里山科で余命をはるかに超える10か月も生きることができました。これは奇跡だと思っています。
もう一つの言葉は、「俺が死んだら、ここでチロをみてやってくれよ」というものでした。私たちが「チロのことは最後まで確実に面倒をみます」と答えると、安心したようにほほえむのでした。
この三つ目の願いも、もちろんかなっています。伊藤さんが亡くなって3年たった今も、チロはさくらの里山科で元気で過ごしています。チロがいつか、虹の橋で伊藤さんに再会するまで、私たちはしっかりチロを守っていきます。
伊藤さんとチロの奇跡の日々については次回以降、詳しくお話したいと思います。
このコラムは、拙著「 看取 り 犬 ・ 文福 の奇跡」(東邦出版)と重なる内容が多くありますが、拙著が感情面の描写を中心にした小説仕立てだったのに対し、本コラムではより客観的に状況を説明し、介護や病気に関する解説も加えていきます。また、現在進行形のエピソードが多いので、拙著の内容の後日談も書いていきます。(若山三千彦 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」施設長)
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私もワンコを飼っています。昔は猫も飼ってました30年も前に亡くなった愛猫の事を今も時々思います。子育てで忙しく二段ゲージの中で飼ってあまりスキンシップしてあげられなかった事が心残りです。寝込む事もなくある朝事切れていました13才でした。
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心の支えがいかに大事かわかるエピソードですね。 そして人によっては、極めて主観的なものである可能性もありますが、それが有効であれば否定することも...
心の支えがいかに大事かわかるエピソードですね。
そして人によっては、極めて主観的なものである可能性もありますが、それが有効であれば否定することもできません。
死後もペットを預かってくれるというのが、今後利用されるのか、悪用防止の線引きも含めて難しいですが、ふと考えさせられます。
ペットは基本的に人間に逆らいません。
なぜなら、逆らえない人間社会だからです。
その構造がわかっていてさえ、なお、人間は裏切らないものにすがってしまいます。
未婚率も上がっていますが、将来起こりうる事態を思えば、今後一般的になっていくのかもしれないですね。
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