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迫る2025年、介護の担い手を増やすには…藤井賢一郎・上智大准教授

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介護職は本当に「低賃金」? 34万人の不足をどう乗り越えるか…藤井賢一郎・上智大准教授に聞く

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 少子高齢化で、介護の人手不足が心配されています。厚生労働省の推計では、団塊世代が全員、75歳以上になる2025年度には、34万人の介護職員が足りなくなる見通しです。老いても住み慣れた地域で安心して暮らしていくには、介護の支えが欠かせません。その担い手を増やすには、どういった対策が考えられるのでしょうか。上智大の藤井賢一郎准教授(福祉経営学)に聞きました。(ヨミドクター 飯田祐子)

希望に満ちた職業と思われたが…

  ――近年は、さまざまな分野で人手不足が課題になっていますが、それ以前は介護が、人が足りない業種の代表格のようにいわれていました。

 介護に限らず、対人サービスは不規則な勤務時間などが敬遠されて、元々、事務職などに比べると人気がないのです。2018年度の有効求人倍率でみると、全体が1.62なのに対し、介護サービスや接客・給仕、生活衛生サービス(理容師など)は、いずれも4前後と、かなり高くなっています。この傾向は、今に始まったことではありません。

  ――では、特に介護でそのイメージが強いのは、なぜですか?

 それを知るには、これまでの経緯を振り返る必要があります。

 2000年に介護保険がスタートする以前は、主に社会福祉法人か自治体が介護サービスを担っていました。その時代は、介護は収入の安定した仕事という位置づけで、最近のような暗いイメージはありませんでした。

 日本では、1990年代初めのバブル崩壊後、10年以上にわたって景気の低迷が続き、97年にはアジア通貨危機にも見舞われました。そんな大不況のまっただ中で介護保険がスタートしたのです。

 高齢化により、介護市場が急成長するのは間違いありません。民間事業者がどっと参入し、業界内には希望に満ちた明るいイメージが広がりました。働き手の側からみれば、就職氷河期で、他の業種が採用を大幅に絞っていた時代です。有名大学を出て、介護の仕事に就く若者も少なくありませんでした。そうした双方の事情が合致して介護に人材が集まったのです。

テレビ番組が引き金に

 ところが、その状況もそれほど長くは続きませんでした。NHKが2006年と07年に、東京都内の介護事業所などを取材し、介護の仕事は賃金が低いため人材が流出しているというテレビ番組を放送したことが転機になりました。

 確かに東京では、景気の回復に伴って他産業の求人が増え、賃金も上がっていたため、介護の賃金が相対的に「低い」とみられるようになっていました。番組に登場した事業所は規模が小さく、開設から年月も浅かったようなので、経営が苦しかったのは事実だと思います。そうした地域や個別の事情が背景にあったのですが、番組全体のインパクトが非常に大きく、「あの番組の影響で、求人に対する応募が激減した」と嘆く声を方々で耳にしました。

 他の対人サービスでは当たり前だった人手不足も、介護事業の経営者にとっては、初めて直面する事態です。窮状を訴え、支援を求める声が業界全体に広がり、それが連日、報道されるようになりました。雑誌やネットには、介護の仕事がいかにブラックかを強調したセンセーショナルな記事があふれ、「重労働、低賃金」のイメージがすっかり定着してしまったのです。

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2件 のコメント

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誰が教育と治安のコストを負担するか?

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

賃金格差進行は地方や業態を問いません。 介護だけでみるより、全体像の中での位置づけが大事だと思います。 医療や教育もブラック化が言われて久しいで...

賃金格差進行は地方や業態を問いません。
介護だけでみるより、全体像の中での位置づけが大事だと思います。

医療や教育もブラック化が言われて久しいですが、IT化によって各業態の仕事や賃金がある程度可視化されたために、逆に、割り切って職歴や現場経験に授業料を払わされている感じですね。
大学や企業もそういう感じはします。
黒字企業さえリストラを進めています。
利益を上げていけているのは一部の企業だけですし、国内外の不安定な社会情勢の中で、それを続けていけるのは極めて限られた組織だけですから、企業もお金を出したがらないわけです。

これからますます表の年収だけでなく、経費計上も含めて考えてやる必要がありますし、一時的な失業は計算に入れて生きないと仕方ありません。
雇用者と被雇用者、資本家と労働者の違いの一部解消や仕事の構造改革とも言えますが、IT化による社会やビジネスの変化が個人や組織の在り方を変えるのは仕方ないでしょう。
大企業や大都会への資本の一極集中で構造被害者も増えているわけですが、中長期的には貧困や教育不足が治安の劣化と安全コストの増大を招く中で、官も民も既存の法律や仕組みを表裏から学ぶ必要性に迫られています。
形やサイズの問題で出荷できない地元の食材を使った、某地方のこども食堂が大人向けに300円でも解放されたと他紙に掲載されましたが、そういう取り組みが全国で広がるといいですね。
また、常勤高給長時間労働というシステムも累進課税との相性が悪く、医療費の増大因子である健康の維持にもマイナスが多いので、これから固定収入の有無とかに置換されていくのかと思います。

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