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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

医師不足、地域偏在の解消へ向けて

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新たな指標に基づく確保計画を2019年度内に策定

医師不足、地域偏在の解消へ向けて

 医師の数は年々増えているのに、地方での医師不足や、地域や診療科ごとの偏在は、なかなか解消されない。医師がどの地域で何の診療科に従事するかは原則自由で、地域や診療科ごとに適正に医師を配置する仕組みがないためだ。国は、単純な人口比だった従来の指標に代えて、地域の特徴を考慮した新たな医師偏在指標を作成。都道府県は2019年度内に医師確保計画を策定し、20年度から計画に基づいた対策に取り組むよう求められている。医師不足、偏在問題の解決は待ったなしだ。

1年に4000人近く増加

 国は昨年12月、2年に1度実施している「医師・歯科医師・薬剤師統計」の結果を発表した。全国の医師の総数は32万7210人(2018年末現在)で、前回調査に比べて7730人増加した。年間4000人近く増えている計算だ。1982年に比べるとほぼ倍増しており、人口10万人当たりの人数でみても年々増えている。

<img src="https://image.yomidr.yomiuri.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/a11d196dfeb292197953faf66d0d31ea-1.jpg" alt="医師不足、地域偏在の解消へ向けて" width="644" height="429" class="alignnone size-full wp-image-438144" />

 増加の主な理由は、医師の養成数の増加だ。退職年齢にあたる主な年代は、1970年代に新設医大が相次いで開設され始める前の、医学部の定員が現在よりも少なかった時期にあたる。医学部の定員は新設医大の設立で8000人台に倍増された後、一時7000人代半ばに抑えられたものの、この10年ほどの地域枠などの増設で最大9400人ほどまで増員された。2018年、19年の医師国家試験の合格者数は9000人を超える。

東京と岩手では2倍の格差

 全国の医師数が増えている一方で、地域ごとの格差は依然大きい。今回発表された医師・歯科医師・薬剤師統計で、人口10万人当たりでみた医療施設に従事する医師は全国平均で246.7人。これを都道府県別にみると、最多の徳島県(329.5人)と最も少ない埼玉県(169.8人)では、約2倍の開きがあった。

 人口10万人当たりの医師数は従来、医師の偏在指標として用いられ、これだけでも格差が大きいことはみてとれるが、国は、医師確保計画の基盤とするためには地域の特性を考慮したさらに精密な指標が必要だとして、2019年2月に新たな医師の偏在指標を発表した。

 新たな医師偏在指標は、(1)医療ニーズや人口の年齢構成などの違いとその変化、(2)昼間人口と夜間人口の違いや県境を越えた患者の流出入、(3)へき地などの地理的条件、(4)医師の年齢構成や男女比率の違い、(5)医師偏在の単位(区域、診療科、入院・外来)の5要素を考慮することとした。全国を300余りの医療計画の単位に分けた2次医療圏と都道府県ごとに、医師の偏在指標を計算して、医師確保計画を策定する上での基盤とする。

 国が2月に示した暫定的な指標の数値によると、都道府県別で最も高かったのは東京都で、最も低かった岩手県とは、約2倍の格差があった。2次医療圏別では、最も高かった東京都の区中央部と最も低かった秋田県の北秋田では10倍以上の差があった。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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3件 のコメント

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暫定的な新専門医制度といくつかの未来

寺田次郎 放射線科サッカー部スペイン代表

災害時派遣などの為の技術職や看護師のバンクなんかもできるそうですね。 5Gネット回線や新幹線延伸その他インフラの整備も含めて、潜在的なワークシフ...

災害時派遣などの為の技術職や看護師のバンクなんかもできるそうですね。
5Gネット回線や新幹線延伸その他インフラの整備も含めて、潜在的なワークシフトの土壌の整備は整いつつあります。
あるいは、無人化店舗実験が示すように営利企業の方が先に動くでしょうか?
各都道府県の新専門医制度の新人の振り分けも発表されましたが、日本の技術や資材及びマンパワーの偏りをどのように中長期的に運用するかの問題でしかありません。

あれもこれも都心部と山間部を一緒にしたがったり、個人や家族に田舎のルールへの厳密な帰属を求めるから無理なわけで、現場とサポートワークでワークシェアできるように移行してほしいですね。
夜間高次救急や高度診断は、検査結果や静止画または動画処理による国内外の診断コンサルタントは利くでしょう。

村八分についてもネットで調べましたが、過去の状況との平等感と未来の可能性のための制度や運用の変更のどちらをとるかの問題でしかありません。
誰が決めるわけでもなく、時代と市場が決める、というだけのことではないかと思います。

今まで信じてきた物語や指揮系統を書き換えるのは、それこそ別の国になるようなもので、トラブルを減らすための暫定処置も或いは必要かもしれません。

医療も医局や類似団体の興亡とともに、仲介業者が活発化している昨今です。
医療関係のあらゆる職種で再編が続くと思いますが、患者、医療者、政府などが継続して見直しをやっていくしかないですね。

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違反報告

役所や地域の想定外の事態も想定内にする

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

1月14日の読売新聞に、現代の赤ひげ先生の記事が出ていました。 島根の離島の総合診療医。 人手も減る中で、その信頼から難度の高い手術も任され、新...

1月14日の読売新聞に、現代の赤ひげ先生の記事が出ていました。
島根の離島の総合診療医。
人手も減る中で、その信頼から難度の高い手術も任され、新しい抗癌剤の治療も都内と連携を取って行ったとありました。
(このことは賛否両論だと思います。)

勉強不足のため、似たようなシチュエーションの医療機関がいくつあるのかわかりませんが、代わりの人材が育つパターンと育たないパターンで分類するといいんじゃないかと思います。

似たような総合診療医でも人や地域の相性の良しあしはあります。
人材の融通というのは、日本の縦割り行政ではまずうまく行かないので、育たないパターンも想定して、どういう風に役割分担をして、医療サービスを維持するのかゆるゆると考えていくべきだと思います。
(放射線治療医の不人気も、人付き合いの好きでない、得意でない放射線科医を無理に治療医に回して崩壊している施設もあります。)

間接的には国土の防衛線や資源の確保など領土の問題にも絡みますので、法制度や国家的支援、常勤医の少ない地域では欠勤時の代行システムに関してもオープンに議論した方が良いでしょう。

その仕組みを考えるためには、離島で常勤の医師やバックアップ施設の医師の悩みとか、匿名で上手に吸い上げる方が良いと思います。
あるいは、どこの職種や企業でもそうかもしれないですけどね。
そもそも、都心の田舎と田舎の都心さえ置かれた状況は全然違いますが、その事を理解している上官や役人が何人いるかですね。
そして、行くことと住むことには大きな隔たりがあります。
そういう意味では、大規模施設の上官候補生はせめて視察くらいはするべきなのかもしれません。

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多くの医師は大病院で出世するわけではない

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

今回は異論ですが、中核的な病院の院長に将来就くための要件として医師不足地域での一定期間の勤務を必要とする施策というのは果たして本当に必要なのかは...

今回は異論ですが、中核的な病院の院長に将来就くための要件として医師不足地域での一定期間の勤務を必要とする施策というのは果たして本当に必要なのかは不明です。(必要だと思っている人がいるのは理解します。)
確かに、中核病院を多数支配下に収めるような組織の上役の場合は、人事の難しさを肌身でわかるために必要だと思います。

一方で、なんでも気合不足に答えを求めるパワハラ上司の記事が隣にありますが、人手不足の中核病院で神様ごっこや体力勝負に慣れた管理職が増えると生着できる部下の若手が減ります。
言い換えますと、出世を条件に働き盛りの中堅を釣れるのはいいけれど、その時の態度や相性、能力によっては中長期的には地域医療崩壊のリスクになりうるということです。
(それも含めて、地域の生存競争かもしれませんが。)

人数の偏在は、急性期病院や教育医療機関に多数の人員が集まるため、難しい部分はあります。
昔よりも医療が複雑化している中で、そこに人員がとられている部分もしょうがないでしょう。

目の前の状況への危機感は中長期的な問題より心に響きますが、地方も中央も高度検診で救急症例を減らして、医師が燃え尽きずに育っていく、あるいは、出産育児も含めて一度外れても、また現場に戻って来れる仕組み作りが大事だと思います。
バリバリでなくてもベテランの医師がいるだけで、人間的問題が解決されることもあるでしょうし、現場での経験を持って学び直す時間を取る医師もいてもいいと思います。

自分も稼ぐ仕事と別に自分の未来の家族の為の勉強は続けてますが、制度次第ですね。
もともと各科に境界領域は存在しますし、質と量を維持できない専門分野は別の何かに置き換わるでしょう。
臨床も研究も教育も医療界の不祥事が可視化されて久しいですが、形ばかりの反省か否か、一部の若手は自分の生存をかけて見ています。

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