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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

子どもの事故を予防する「3E」とは…「目を離すな」「注意しろ」では守れない

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変えられるものを変える

 図1に効果のある傷害予防(3E)と効果のない傷害予防(3I)として整理しました。校長先生や管理者を処罰する(個人の責任にする:Individual)、実際には見守りで防止できない傷害を見守る(非科学的で無理な傷害予防:Impossible)、3Eに基づかない周知徹底や謝罪(その場しのぎ的対応:Instant)などは、傷害予防上は効果のないアプローチ(Ineffectiveなアプローチ)であり、頭文字をとって、ここでは3Iと呼んでいます。3Iは、筆者らのグループの造語です。効果のない傷害予防(3I)ではなく、効果のある傷害予防(3E)を採用することが大切です。

 傷害予防の原則は、傷害が起こった状況を、「変えたいもの」「変えられないもの」「変えられるもの」の3つに分けて考えることです (図2) 。変えたいものは、重症度が高い傷害の発生数、傷害による死亡数などですが、これらは直接、変えることはできません。子どもの年齢、発達段階、天候、季節、時間などは傷害の予防を考えるときに重要な情報ですが、これらも変えることはできません。製品や環境、製品の配置などは、われわれが直接変えることができます。

 すなわち傷害予防とは、傷害に関わる要因の中から、「変えられるものを見つけ、変えられるものを変えることによって、変えたいものの発生頻度や重症度を変えること」なのです。

 以上、原則を示しましたが、具体的にどうしたらいいかわからないと思います。これからの連載で、これらの原則を基に、個々の事故や、関係する人の役割についてお話ししてみたいと思います。

安全な製品や環境 社会で整備

 10年前、自動運転の車が街中を走ることなど想像もできませんでしたが、今では実現しています。道路上の電光掲示板には「安全運転を心がけて」という表示がありましたが、自動運転であれば、そんな表示は必要ありません。

 子どもの事故も同じで、これまで「目を離すな」「注意しろ」などと完全無欠を求められ続けてきましたが、それは不可能です。これからは「過度に注意にたよらなくてもいい」「少しは目を離してもいい」くらいに安全な製品や環境を社会で整備していくことが必要です。そうしなければ、子どもの事故予防にはつながらないのです。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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