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[俳優 黒部進さん](上)ウルトラマンのレッテル、30年間触れたくなかったが、今はハヤタ役が誇り

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 天皇陛下が学習院初等科2年生の時、百貨店の書籍売り場で自ら350円を払って1冊の本を買いました。「怪獣図鑑」。この前年、1966年に「ウルトラマン」(TBS系)の放送がスタート。当時の、多くの男の子にとって怪獣は特別な関心事で、怪獣と戦う「ウルトラマン」の最高視聴率は40%を超えました。それから50年余り。何度かのブームを経て、関連のイベントは今も毎年のように開かれています。ウルトラマンに変身した科学特捜隊のハヤタ隊員を演じた俳優の黒部進さん。80歳を過ぎた今、ウルトラマンへの思いや俳優人生について聞きました。(聞き手・渡辺勝敏、写真・中山博敬)

今も開かれているウルトラマンイベントへの出演は楽しみ

[俳優 黒部進さん](上)ウルトラマンのレッテル、30年間触れたくなかった黒部進さん、今はハヤタ役が誇り

――ウルトラマンの人気は衰えず、関係のイベントは今も盛んに開かれていますね。

 先月も東京でトークショーがありました。「ウルトラセブン」の 森次晃嗣(もりつぐこうじ) さん、「帰ってきたウルトラマン」の団 時朗(じろう) さん、「ウルトラマンA」の高峰圭二さんや女性陣が集まりました。こういうショーは楽しいですね。50年以上もファンのみなさまに支えていただくなんて 希有(けう) なことですよ。本当にいい作品やスタッフに恵まれたと思っています。見ず知らずの人とも、ウルトラマンの話で打ち解け合うことができるんです。ウルトラマンについて話をするのが、今は一番の楽しみですよ。

――「科学特捜隊」のメンバーとは仲が良いそうですね。

 ムラマツキャップ(小林昭二さん)は残念ながら早く亡くなってしまいましたが、アラシ隊員(毒蝮三太夫さん)、イデ隊員(二瓶正也さん)、アキコ隊員(桜井浩子さん)とはイベントなどで会うと、必ず飲みに行く仲間です。

若いころにヒーローなんてやるな、と言われた

――今はウルトラマンを演じた経験を大切にされていますが、長い間、ウルトラマンとは距離を置いていたそうですね。

 ウルトラマンの仕事をいただいた時、先輩の俳優さんたちからは、「若いころにヒーローなんてやっちゃだめだよ。役者がやるもんじゃない」って言われました。そういう時代でしたね。僕もできればやりたくないと思いましたが、食べていかなければいけませんから。

――ハヤタ隊員の役にはすぐに入っていけましたか。

 どう演じるか。参考にするものはないわけですよ。これは自分に与えられた仕事だから自分の感覚で、僕流の方法でやっただけです。ただ、スマートにいこうとは思いました。監督からは格好良く走るように言われましたね。ややがに股なので、それを修正しながら走れっていうことで、走り方を練習しました。それに、あのオレンジ色の科学特捜隊のユニフォームを着るのにも、抵抗がありましたね。

放送中は一話を通して見たことがなかった

――ウルトラマンは1年で39話が制作されましたが、どんな思いでハヤタ役に取り組みましたか。

 怪獣とウルトラマンが戦う特撮部分と私たち俳優が演じる部分は、全く別に撮影するわけです。セリフなどの音声は後で入れるアフレコという形で、その時は、カットごとに途切れ途切れで映像を見ます。完成試写は開かれましたが、僕たちは撮影があるから、その場にはいません。本当は週1本仕上げなきゃいけないのに、1本目に1か月かかっていましたから、撮影スケジュールが次から次で、忙しかった記憶があります。放送期間中は一話を通して見たことはありませんでした。

――その後、ウルトラマンを通して見る機会はなかったんですか。

 俳優としてやっていく上で、ウルトラマンに出ていたというのは、長い間、自分で触れたくないし、人にも触れられたくもないと思ってきたんです。「ウルトラマン役者」なんて、自慢できる仕事じゃない、と。そんな気持ちもあって、僕自身は、ウルトラマンには冷ややかだったかもしれません。実際にウルトラマンを通して見たのは、1998年、60歳のころです。「ハヤタとして、父として」(扶桑社)という本を出したのですが、そのために6話ぐらい見たのが初めてでした。

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