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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

2020年4月の診療報酬改定 中医協の議論がヤマ場に 医師の長時間労働の是正、かかりつけ機能の推進へ

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本体の改定率プラス0.55% 全体ではマイナス

2020年4月の診療報酬改定 中医協の議論がヤマ場に 医師の長時間労働の是正、かかりつけ機能の推進へ

 診療報酬の改定論議がヤマ場を迎えている。診療報酬とは、保険で受けることのできる医療の値段のことで、初診料や再診料などの基本的な診療費から、病気や治療の種類ごとに細かく分けられた手術料や処置料などまで、1点10円で個々に点数が定められている。原則2年に1回見直され(2019年10月には消費税引き上げに伴う臨時の改定を実施)、2020年4月が次の改定の時期にあたる。

 今回の改定の基本的な柱には、「医師の長時間労働の改善などの働き方改革」、「かかりつけ機能の推進など患者・国民に身近な医療の実現」「医療機能の分化・強化や地域包括ケアシステムの推進」「後発医薬品の使用促進などの効率化・適正化」が掲げられている。

 国は12月17日、診療報酬本体の改定率をプラス0.55%(うち0.08%は消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応)とすることを決めた。内訳は、医科が0.53%、歯科が0.59%、調剤が0.16%。一方、薬価をマイナス0.99%、材料価格をマイナス0.02%引き下げ、全体ではマイナスとなる。

中医協 支払い側、診療側、公益委員の3者で論議

 診療報酬点数の具体的な個別の改定について話し合われるのが中央社会保険医療協議会(中医協)だ。厚生労働相の諮問機関として、法律に基づいて1950年に設置された。

 中医協の委員は20人と決められている。支払い側(1号側)と呼ばれる健保組合や患者の立場などを代表する委員7人、診療側(2号側)と呼ばれる医師会や病院団体、歯科医師会、薬剤師会を代表する委員7人と、学識経験者6人の公益委員からなる。このほか専門委員として、看護協会や製薬企業の代表など10人が議論に参加する。下部組織として薬価などの専門部会や小委員会なども置かれている。

 委員の構成はかつて、支払い側、診療側が各8人で、公益委員は4人だった。2004年に歯科診療報酬をめぐる中医協委員の贈収賄事件が発覚したのをきっかけに、有識者会議が中医協の改革案についてまとめた。それを受けて07年から、支払い側、診療側の委員を1人ずつ減らして各7人とし、公益委員を2人増やして6人とする現在の人数配分に変更された。

 中医協には、診療報酬の改定率そのものを決める権限はない。改定率は予算編成の過程を通じて内閣が決定する。また、改定の基本的な方針は、厚労相の別の諮問機関である社会保障審議会の医療保険部会、医療部会でまとめられる。中医協はその基本方針と改定率に基づいて、個別の診療報酬点数の新設や廃止、増減などについて審議するといった流れだ。

9月から本格論議スタート 来年2月にとりまとめへ

 診療報酬改定に関わる本格的な議論は9月にスタートした。総会の開催は当初は週1回ペースだったのが、10月下旬からは週2回のペースで開催。年内は12月20日が最後となった。改定率の決定を受けた年明けからは、いよいよ具体的な診療報酬点数について議論を進め、2月上旬頃には改定案の答申がまとめられる見通しだ。

 中医協の会議は公開されており、一般の人でも傍聴することができる。主に会場となる厚生労働省の講堂には、医療関係者をはじめ、多くの傍聴人であふれていることが多い。

 保険者として医療費の使われ方をチェックする立場(支払い側)と、報酬を得る立場(診療側)という当事者同士が直接話し合う場とあって、激しい意見の応酬となることも珍しくない。

 たとえば今回の改定論議でも、かかりつけ医機能を評価した「機能強化加算」について、加算の意味や患者の負担増を文書で説明すべきだとする支払い側委員の主張に対し、医師が時間をかけて説明するのは難しく、説明は保険者側の仕事だなどと反論する診療側の委員の間で、激しいやりとりが繰り返される場面もあった。

 支払い側と診療側の間で仮に最終的に意見がまとまらなかった場合には、公益委員による裁定が行われることもある。

どんな医療のあり方を目指すのか

 診療報酬改定の意味は、単なる医療の値段を決めるだけではない。これから、どんな分野に力を入れ、どんな医療のあり方を目指すかを、医療費の配分という面から具体化するものだ。少子高齢化が進むなかで、病床の役割や地域包括ケアシステムづくりなど課題は多い。年明けから再開される中医協の議論の行方に注目だ。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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2件 のコメント

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保険診療の内外の枠組みを考える全体最適

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

2019年12月29日読売新聞関西版では阪神大震災後滞っていた神戸の郊外の新たな都市計画の記事があり、また、IRを巡る政治家の汚職や医大教授の講...

2019年12月29日読売新聞関西版では阪神大震災後滞っていた神戸の郊外の新たな都市計画の記事があり、また、IRを巡る政治家の汚職や医大教授の講演会の謝金が紙面を賑わしています。
そうかと思えば、今の株高は現金のだぶつきによる資金流入が原因だと、ある新聞の経済欄にあります。
言い換えれば、富やサービスの偏りの中で、原資やハコモノを出してくれる人や企業への優遇税制なんかも考えていいのかもしれません。
真面目な人からすれば許せなくても、市町村に金とサービスを引っ張ってきてくれるのが政治ですし、こういうところに書くことで、役所や企業が詳細な仕組みを考えてくれればいいかなとも思います。
大企業の優遇税制も、何らかの形で庶民に還元されれば不平も減るかもしれません。

昨年は医療機関のクラウドファンディングのニュースも多々ありましたが、診療報酬という保険診療の表舞台の利害調整も重要ですが、それ以外の要素にも目を向ける必要があります。
大がかりな手術や治療ができるようにするのは大変ですが、高精度のCTやMRIに関していえば、プロトコールもある程度統一されてきているので、かかりつけ医をそろえた市町村の医療圏に低被ばくCTや高速MRIなどのサービスがいきわたるようにすればと思います。
有名病院でも、画像診断の見落としやレポート放置のニュースもありますが、それらも、利害調整してITソフトや人員確保を推進させればいいのではないかと思います。
医療とは保険診療とその従事者や施設を指すのではなく、関わる全ての個人や組織、インフラを指すという全体像が見えれば、もう少し良い方向に進むのではないかと思います。
あとは、市民や政治家が企業や役所を動かせるか否かだと思います。

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中長期な個人と全体の仕事と学びのブレンド

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

十数年前の新研修医制度が医局崩壊し、地域医療崩壊の原因の一つと言われています。 批判的意見は、その不利益を受けた地方の大学の一部の医局やその関連...

十数年前の新研修医制度が医局崩壊し、地域医療崩壊の原因の一つと言われています。
批判的意見は、その不利益を受けた地方の大学の一部の医局やその関連の病院や市町村からの声でした。
人事を使った情報統制と指揮系統の崩壊。

しかし、それだけではなく、医療デバイスや画像診断の進化による医療格差の増大、ITによる医療情報アクセスの利便性の改善により、無理筋の医療の安全神話の崩壊のタイミングが重なっただけのようにも思います。
そして、事の善悪はさておき、患者の心づけで誤魔化されていた勤務医の過重労働や給与の問題を、病院の採算なども含めて、出口無くあれこれメスを入れたのも大きな問題のように思います。

歴史的経緯や政治も絡むうえ、病院と企業と役人の上層部だけで決められる制度は中堅以下には触りようがないので、実はその部分をどうするかの問題もあります。
新人や中堅もキャリアを諦める方が自分では変えようもない手詰まりや過重労働で死ぬよりはまだましですから、フリーランスや開業医も増えたそうです。

昨今はフリーランス麻酔科医への「潰し」や新専門医の問題が、同時に出産育児に携わる医師の復帰の阻害や地域医療の崩壊に繋がるのであれば、どう考えるか?
中医協の末端のコスト構造の会議もそうですが、同時にそれが医療の質や医療者の働き方や学び方にどのように作用するか考えて調整していく必要があります。

かかりつけ医制度なんかも、企業に働きかけて大病院などでの新たな有給休暇制度とセットで画像診断によるキー臓器の精密健診とセットにしたら進みそうですけどね。
かかりつけ医の弱点は規模と器材と人材なわけですから、それらを補う情報や動線を整理すればいいでしょう。
逆に医師や政治家も職種ごとの働き方や繁忙期なんかを知る必要も出てきます。

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