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思春期の子どもを持つあなたに 関谷秀子

医療・健康・介護のコラム

第12部 身体症状症(下)両親の離婚後、友達のような母娘の関係がもたらしてしまったこと

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両親が離婚して、片方の親と密接すぎる関係が

 もう一つ。A子さんは、自分の両親がどうして離婚してしまったのかについて、気になっていないわけがありません。その疑問も、ある種のストレスとして、A子さんの内面に居座っているはずです。

 母親には、「お父さんとお母さんの離婚については今まで何も話してこなかったけれど、あなたが聞きたいことがあれば説明しようと思う」とA子さんに伝えることを提案しました。

 両親が離婚して、片方の親と子どもの関係が密接になりすぎることで、親離れ・子離れが進まないことはしばしばあります。とくに、一人っ子の場合はきょうだいがいないために二人だけの世界に埋没しやすい傾向があります。そうなると、この状態から抜け出すのは簡単ではなく、第三者の介入が必要となってきます。

 時間はかかりましたが、やがてA子さんの母親は、何でも相談できる友達を見つけました。A子さんも、K-POPという共通の趣味をもつ友達と仲良くなり、一緒に音楽を楽しんだり、コンサートに行ったりするようになりました。それまでは、何をするのも一緒だった母娘が、休日にはそれぞれがそれぞれの友達と時間を過ごすようになったのです。

 母と娘の間に年齢相応の境界線ができてきたわけです。

 これは思春期の子どもに限ったことではないのですが、頭痛や吐き気、腹痛などの身体の症状が続いてもそれに相応する検査結果が見つからない場合、それがストレスに起因している場合があります。具体的には思い当たらない場合でも、我々は自分自身で意識していないストレスを心の中に抱えていることもあるわけです。A子さんのケースでも、母親に対する複雑な感情が、頭痛や吐き気などの症状となって顕在化していました。

 原因不明の身体の不調が続く場合には、体のチェックをした上で、心療内科や精神科の受診をお勧めします。(関谷秀子 精神科医)

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shisyunki-prof200

せきや・ひでこ
精神科医、子どものこころ専門医。法政大学現代福祉学部教授。初台クリニック(東京・渋谷区)医師。前関東中央病院精神科部長。

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