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思春期の子どもを持つあなたに 関谷秀子

医療・健康・介護のコラム

第12部 身体症状症(下)両親の離婚後、友達のような母娘の関係がもたらしてしまったこと

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母親がいれば、友達はいなくても大丈夫…

 その後、何度かクリニックに来るようになったA子さんですが、ある日、こんなことを口にしました。

 「学校では友達といつも3人組になってしまい、真ん中に入って友達の仲を取り持ったりしちゃうんです。そんな役回りは疲れるから、本当はやらなければいいんだけど、無意識にやってしまうんです」

 離婚した父母の間にはさまって、両方に気遣ってきた行動を、友達関係の中でも繰り返してしまっているようでした。

 そして、もう一度、母親について尋ねてみると、「友達みたいな存在です。あまり、お母さんらしくはない。友達とは話が合わないけれど、お母さんとは話が合うんです。だから、本当のことを言うと、友達はいなくても大丈夫なんです」と語りました。さらに、「お父さんがいなくなって、お母さんはかわいそう。私が守ってあげないと」と夫がいなくなった母親を気遣っている様子がうかがわれました。

 A子さんは母親を気遣うあまり、発達課題である親離れが進んでいませんでした。それに伴って、学校でも人に気を使うばかりで、本当に親しい友達関係が持てていないことがわかりました。

 再度、母親に話を聞いてみると、やはり「誰よりも、A子が一番話しやすい」と言います。

 母親も、A子さんを自分の娘としてではなく、相談相手として弱音を吐いたり、頼りにしたりする存在にしているわけです。それに応え、しっかり者のA子さんが母親の「お世話」をしてきました。

 現状のような母娘関係が続いてしまうと、A子さんにとっての友達のポジションには「母親が一番の友達」と、母親が居続けてしまうことになり、親離れが進まず、結果的に中学校で友達ができにくい状態を作り出しています。

相反する母親への気持ちが吐き気に

 まず、最初に大切なことは、母親自身が子離れすることです。自分自身の離婚によって、A子さんとの結びつきが強まりすぎていたことを、きちんと理解してもらう必要がありました。

 普段、A子さんと母親はいつも同じ部屋で生活を共にしているそうです。A子さんにとって、母親と離れて一人で勉強したり、本を読んだり、音楽を聴いたり、寝たりする部屋が必要です。さらに、私は母親に、娘以外に相談相手を作ることを強く勧めました。つまり、A子さんと母親には、物理的にも精神的にも一定の距離が必要なわけです。

 その後も、「吐き気がする」と、A子さんは母親の作った食事を食べられない時期がありました。それと同時に、過剰なまでに自分を頼りにしている母親への反発心や怒りの一方で、夫のいないかわいそうな母親を守らなければならないという、相反する気持ちが、自分の中にあることに気が付くようになりました。そんな自分自身の葛藤が、「吐き気がして母親の作った食事を食べられない」という行動を引き起こしていることも、徐々に理解していきました。

 A子さんはゆっくりではありましたが、母親からの自立の道を歩み始めました。

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shisyunki-prof200

せきや・ひでこ
精神科医、子どものこころ専門医。法政大学現代福祉学部教授。初台クリニック(東京・渋谷区)医師。前関東中央病院精神科部長。

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