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思春期・青年期に発症する「円錐角膜」って何? 「不治の病」から、進行を止められる病気に

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 「 (えん)(すい) 角膜」という、一般にはほとんど知られていない目の病気がある。文字通り、角膜が円錐状に変形し、近視や乱視が進む。悪化するとメガネやコンタクトレンズでも十分な視力が得られず、日常生活にも支障が出る。治療法がなかったが、近年、進行を止める手術が開発され、早期発見が重要になってきた。(藤田勝・ヨミドクター副編集長)

前方に突出している円錐角膜(加藤直子さん提供)

前方に突出している円錐角膜(加藤直子さん提供)

角膜に亀裂、視野が真っ白に

 都内の会社員男性(50)は高校3年生のとき、自宅で突然、左目の視野が白く濁って見えなくなった。「近視はありましたが、一体何が起きたのかわからず、パニックでした」。これは、円錐角膜が急に進行したときに起きることがある「角膜急性水腫」という症状。角膜に亀裂ができて、目の中の水が入り込み、白く濁ってしまう。

 濁りは2~3か月で消えたが、以来約30年、円錐角膜の左目は近視や乱視でぼんやりとしか見えず、メガネをかけても十分な視力は得られない。コンタクトを何度か試したが、角膜がゆがんでいるので浮いてしまい、ゴロゴロ感が出たり、乾いたりしやすい。結局、車の運転などに不便はあるが、普段はメガネをかけ、「右目で生活している」という。

 南青山アイクリニック東京(東京都港区)の眼科医・加藤直子さんによると、円錐角膜の原因ははっきりせず、遺伝的素因や環境要因が絡んで発症するらしい。アトピー性皮膚炎やアレルギーのある患者に多いともいわれる。患者数は200~300人に1人程度。若いうちに進行しやすく、中年以降はほとんど進行しない。症状の程度は個人差がある。まれに角膜急性水腫が起きるが、これは自然に治るため、あわてる必要はないという。

まずメガネ、次はコンタクト、最後は角膜移植

 従来、軽症ならメガネ、近視や乱視が進めばハードコンタクトで対処するしかなかった。しかし、病状が進むとコンタクトも使えなくなる。最終手段は角膜移植だが、すぐに受けられるとは限らず、移植後は拒絶反応を抑える薬を使い続ける必要がある。前出の会社員男性も、「移植は勇気がいる」と受けていない。視力矯正のレーシック手術は、時間がたつとよけいに角膜をゆがめるため、円錐角膜には行われない。

角膜を固くして進行を止める手術が普及

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角膜クロスリンキングの手術で、紫外線を照射中の様子(同)

 長く「不治の病」だったが、2003年、病状の進行を止める治療が登場し、世界に広まった。「角膜クロスリンキング」と呼ばれる手術で、原理はシンプルだ。角膜の上皮を削り、薬を点眼し、紫外線を当てる。手術時間は30分程度。これで角膜のコラーゲン線維が固くなり、進行が抑制される。若いうちに受けておけば、後で悩まなくてすむ。

 加藤さんは07年、慶応大学病院で坪田一男・眼科教授と国内1例目の手術を行い、これまで300例以上を経験した。少なくとも10年以上の進行抑制効果が確認されており、合併症の心配も特にないという。

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