がん患者団体のリレー活動報告
医療・健康・介護のコラム
小児がんピアサポート推進協議会
小児がん患者家族を支えるサポーターを養成
小児がんは1年間に2000人~2500人が発症する、極めてまれな病気です。しかし、子どもの生命を奪う病気の第1位です。患者は長期にわたって過酷な治療に耐えなくてはなりません。幸い、病気そのものは治っても、薬や放射線など治療によって成長してから心身に影響が表れる「晩期合併症」にも苦しめられることがあります。このような小児がんを巡る様々な問題を家族が一身に抱えることが多く、そのため家族へのサポートは重要となります。私たちは、小児がん患者の家族に対し、同じ悩みを経験した家族が思いを共有する「ピアサポート(仲間による支援)」を推進する活動を草の根的に行っています。
養成研修、成人のがんに比べて小児がんで遅れ
ピアサポートを行う人は「ピアサポーター」と言います。ピアサポーターになるには、〈1〉相手の尊厳を守る〈2〉自分と相手の領分をわきまえる〈3〉自分の能力を超えることを相手に対して行わない〈4〉相手の秘密を守る――という四つの約束が重要だと思います。実際にピアサポートを行うには、学ぶべき多くのことがあります。成人のがんでは、国が2011年、ピアサポーターの養成研修プログラムの作成に資金を出して始めました。しかし、小児がん特有の治療経過などに基づいたピアサポーター養成研修は存在しませんでした。
相談場面を想定したロールプレイも
そこで、全国の小児がん親の会の代表者らが2013年、「小児がんピアサポート推進協議会」を設立しました。小児がんピアサポーター養成研修プログラムを独自に作成し、現在、全国の小児がん拠点病院で実施しています。研修は年2回の開催です。2日間の日程で、1日約12時間、講義と演習をびっしり行います。
具体的には、小児がん専門医や看護師、ソーシャルワーカー、養護教員、病児や家族の心理的な支援を行う「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」、臨床心理士らが講義を行い、小児がんに関する多方面の最新医療情報を提供します。
また、小児がんの家族による相談場面を想定したロールプレイなども取り入れ、より実践的なプログラムとなっています。日々、直面する悩みを解決する力を養ってもらうことが目的です。
「自分の体験を今闘病している人に役立てたい」
この研修会は既に200人以上の参加者があり、数回、繰り返し受講する人もいます。また参加者の9割以上が小児がんの子どもを持つ親で、ここ数年では、小児がんを経験して成長した患者本人も含まれるようになりました。家族背景としては、3割以上が子どもを亡くされています。残りは、外来などでフォローアップしている病児の家族、完治した病児の家族です。
参加した人たちがピアサポートに取り組む理由は、「自分の体験を今闘病している人たちのために役立てたい」「自分の子どもの生きた証しを、活動を通じて感じていたい」など様々です。しかし、いずれの人たちも研修会に参加した後は、自分たちの活動の場で生かせるヒントを得たと喜んでいます。
今年11月、11回目の養成研修を行いました。今までに開催した施設は、国立成育医療研究センター、東京都立小児総合医療センター、神奈川県立こども医療センター、京都大学病院、京都府立医科大学病院、兵庫県立こども病院、名古屋大学病院の7か所で、2020年2月には九州大学病院での開催を予定しています。すべての「小児がん拠点病院」(全国で15病院)で養成研修を行うことを目標に、メンバー一同で取り組んでいます。
小児がんピアサポート推進協議会
全国で活動する小児がん患者家族会約40団体が、情報交換・活動共有を目的として「小児がん患者会ネットワーク」と題したホームページを2008年に開設。その傘下団体として、同ネットワークに参加する10団体が13年、小児がんの患者家族のピアサポートに関する基本的なスキルを身につけるための研修事業を行うことを目的に「小児がんピアサポート推進協議会」を設立した。研修会は、小児がんの患者や家族、小児がん近接領域の患者家族会に関わる人は誰でも参加可能。また小児がんの療養・治療に携わる専門職、ボランティアなど、ピアサポートについて学んでみたいという人も本会のホームページから申し込むことができる。
ホームページ https://cc-peersupport.com/
このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。
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