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医師が教える「女と男、髪と地肌の話」 田中洋平

医療・健康・介護のコラム

ミノキシジルは、薄毛への救世主?

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 男性の頭髪が減っていくのは宿命です。前回、ここでお伝えした通り、ある程度の年齢になると、抜け毛促進ホルモンの「ジヒドロテストステロン」が分泌されるからです。ストレスや過労などが加わることで、毛根周辺の血流が悪くなれば、その傾向はさらに顕著になります。

 「ヘアサイクル」と呼ばれる新陳代謝が衰えると、自然に回復することは考えにくく、何もしなければ、ほとんどの場合、年齢とともに薄毛は進行していきます。

 しかし、それも10年前までのこと。時代は変わりました。
 今回も、抜け毛・薄毛に対して、医療ができることをお伝えしようと思います。

元は高血圧症の治療薬

 ホルモンによる抜け毛は、前回のコラムでお伝えした通り、内服薬である程度は予防・改善することができます。ただし、毛根周囲の血流低下による抜け毛、それに新たに生える毛の減少により、ヘアサイクルが短縮してしまうと、それで十分とは言えません。

 そこで用いられるのが「ミノキシジル」です。髪に関心のある男性なら、一度は耳にしたことがある薬品名だと思います。

 ミノキシジルは、50年以上前に血管拡張剤として、高血圧症の治療に使われていました。それが抜け毛予防や発毛促進にも効果があるとされ、1999年には日本国内でも一般医薬品として発売されました。

 当初は頭部に直接つける外用薬だけでしたが、現在では専門の医療機関で、内服薬、それに注射薬による治療も可能となり、どれも高い効果をあげています。もちろん、抜け毛治療のために、薬を飲んだり、注射をしたりすることに抵抗を感じる患者さんも少なくありません。

 どれを選択するかは、ご本人次第です。より高い効果を得るために、外用と内服や注射を併用することも可能です。

 薄毛に悩んだ末、私のクリニックに通うようになった長野県内在住の30代の患者さんは、高い効果を求めて、内服、それに外用を併用していました。しばらくすると、ある程度、髪の毛が復活して、大変、喜んでいました。その後、手間のかかる塗り薬はやめて、飲み薬だけ継続しています。それでも、十分な効果を維持しています。

必要なところだけに塗れる外用薬

 まずは、外用剤について、ご説明しましょう。

 標準的には、1日2回、1回1ミリリットルを、頭皮につけます。これにより、毛根周囲の血流低下を効率よく改善し、養毛育毛を促進して、頭皮の劣化の予防もできます。

 外用薬のメリットとして、副作用を最小限に抑えることができること。ミノキシジルは、薬剤が行き渡った血管を拡張させることで効果を発揮しますので、飲み薬などでは手や胸、 下腿(かたい) の毛なども増えてしまうことがあるのです。

 外用薬なら、髪の毛が必要なところだけに塗ることができます。頭頂部や前頭部、分け目など、「ちょっと寂しいな」「もう少し、髪があればいいのに」と感じる部分をターゲットにすることができるわけです。

 最大のネックは面倒くささでしょうか。毎日毎日、朝晩2回、ある程度、頭皮を清潔にした上で塗布をするのは、それなりの手間になります。

 また、ごくまれに頭部のかゆみ、ふけ、発赤などを訴える患者さんがいます。
 費用負担が増えてしまいますが、一般薬局などで購入するよりも、まずは医師の診察の下で行うほうが安心かと思います。

手軽な内服薬。気になる副作用は

 続いて、飲み薬はどうでしょう。

 メリットは毛根周囲の血流低下を効率よく改善できること、毛根周囲の血流改善により養毛育毛を促進し、頭皮の劣化、 菲薄化(ひはくか) を予防してくれます。抜け毛の進行、ヘアサイクルの短縮、薄毛を食い止められるのです。

 さらに毎日、決まった時間に飲むだけですから、手間のかかる塗り薬に比べると、はるかに手軽です。

 副作用として、ごく少数の患者さんに「顔のほてり」「むくみ」「腫れ」などが起きます。1000人に1人ぐらいの割合ですので、過度に恐れる必要はないのですが、実は私も副作用が出てしまう1人。この薬を飲むと、少し下まぶたが腫れてしまいます。

 もう一つ、歓迎できない副作用として、前回にご紹介したフィナステリド同様に、頭髪以外の毛髪、特に手の甲や指、胸毛、下腿の毛が増えてしまうことがあります。

 内服薬が良く効いている証拠とも言えますが、気になる方には脱毛も可能です。私のクリニックでは、レーザー治療をご案内しています。

 ミノキシジルの内服の効果も持続しないので、毎日継続して飲む必要があります。従って、費用的な負担は軽くありません。とはいえ、ご自身の髪の毛、それに頭皮が健全化します。植毛やかつらなどのほかの方法と比較し、経済的な負担や手間などを長期的に検討すべきでしょう。

 もちろん、保険適用とならない自由診療ですので、医療機関によって費用に違いがあります。私のクリニックでは、診察料も含めてミノキシジルの内服薬は1か月に約15000円、フィナステリドとのセットで約20000円をいただいています。

 また、毎日服用することも手間だから、「月1回の注射で」と言う患者さんもいます。確かに、外用剤の塗布はもちろんのこと、忙しい方にとっては、内服薬を忘れずに飲むこともそれなりの手間かもしれません。注射による治療については、私の独自の研究結果もありますので、次回以降に詳しく説明いたします。

眼瞼下垂症の治療で薄毛が根治する可能性も

 それでも、「命にかかわる病気ではないのに、薬に頼るのは・・・・・・」と 躊躇(ちゅうちょ) する患者さんもいます。

 以前に一度ご紹介しましたが、薄毛に悩んでクリニックに来られる患者さんには、まず 眼瞼(がんけん) 下垂症かどうかのチェックをお勧めしています。

 まだ、養毛育毛治療としてのミノキシジルが普及していなかった頃、松本市内の50代の男性患者さんが、薄毛にお悩みで様々な治療法を試していました。どれも、効果が十分でなく、私のクリニックに相談に来ました。私が一目見ただけで、その患者さんは、おでこに力を入れて、いつも緊張している状態で、明らかに眼瞼下垂症の状態でした。それが原因で薄毛になっている可能性がありました。

 そこで、目を開く構造を正常にする手術をしたところ、まずは頭痛、肩こり、冷え症などの眼瞼下垂症の様々な症状が取れ、やがて髪の毛がぐんぐん増えていき、半年後の術後の経過観察の際には別人のように若々しくなりました。治療をした私自身が、その 変貌(へんぼう) ぶりに驚かされました。

 男性の薄毛治療は劇的に進み、オプションも増えています。それでも、かなり進行してしまって、ほとんど髪がない「つるつる」の状態になってしまっている患者さんの場合、内服薬や外用剤だけで効果が出るまでは、かなり長い時間がかかったり、十分な効果が期待できなかったりする可能性もあります。

 次回、詳しくお伝えしますが、現時点でできる医学的な治療は、実はまだあるのです。自己判断で植毛などに飛びつく前に、まずは専門のクリニックに出向いて、もっとも自分に向いている治療を見つけてほしいと思います。(田中洋平 形成外科医)

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田中 洋平(たなか・ようへい)
 クリニカタナカ 形成外科・アンティエイジングセンター(長野・松本市)院長 新潟薬科大学客員教授、東京女子医科大学非常勤講師。1975年生まれ。

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