Dr.えんどこの「皮膚とココロにやさしい話」
医療・健康・介護のコラム
イギリスで「フランス病」、フランスで「イタリア病」と呼ばれた感染症は?
梅毒にも国名 「うちの国の病気じゃない」から?
梅毒も実を言うと、意外と知られていませんが、国名が付けられたりしています。梅毒は面白いことに、イギリスでは「フランス病」、フランスでは「イタリア病」と呼ばれていました。「うちの国の病気ではない」と言わんばかりに他の国に責任をなすり付けているかのようですが、この名前にも歴史的背景があったりします。
コロンブスが新大陸からヨーロッパに持ち込んだという説は有名です。コロンブスや遠征した船員が持ち込んだと考えられていますが、もちろん証明するものはありません。あくまで説です。ただ梅毒は、コロンブスらの帰港後にまずスペインで流行し、その後はイタリアで流行しています。その理由は、フランスがイタリアに攻め入った際、コロンブスの航海に同行して梅毒に感染したスペイン人が兵士として加わっていたため、それでイタリアで流行し、後にヨーロッパに拡大したとされています。ちなみにドイツでも「フランス病」のようです。笑ってはいけませんが、フランス、明らかに分が悪いですね。フランス自体は、特に関与していなかったはずなのに。
感染の拡大に従って「ドイツ病」「ポーランド病」……
同じようなことは他の国にもあって、イタリアとオランダでは「スペイン病」だそうです。興味深いのは、ポーランドでは「ドイツ病」、 ロシアでは「ポーランド病」でした。これ、何となく気づかれたかと思いますが、ドイツ→ポーランド→ロシアと感染が広がっていった経路のまんまと思われます。ポーランドはドイツから、ロシアはポーランドからという感じでしょうか。同様にペルシャでは「トルコ病」とのことですから、余計な病気を自分の国に 流行 らせたにっくき国の名を付けたくなるのもわかるというものです(笑)。
性感染症の「三冠王」? 一体どこで?
数年前、外来に毛じらみの患者さんが来ました。毛じらみも立派な(?)性感染症です。「治ったら、またフーゾクに行きたいので早く治してほしい」という非常に残念な訴えでした。「梅毒も流行ってきているから気をつけないと……」という話をしたところ、「ん? 梅毒? あー、それはもうやってるから大丈夫っす」との返事。話を聞いたら 淋 病もやったことがあるらしく、尿をする時に信じられないほどの激痛だったとのことでした。
「淋病、梅毒、毛じらみ……。ついに三冠王か?。やべえな?」と笑っていました(少なくとも「王」ではないです)。感染症にかかっても、もはや何とも思っていないようでした。う~ん、この人はどこで感染したのか? もし、この人の感染症に国名(あるいは場所の名前)を付けるとしたらどこになるんだろうか? そんなことを考えたことを思い出しつつ、今回のコラムをおしまいにしたいと思います。(遠藤幸紀 皮膚科医)
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