心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」
医療・健康・介護のコラム
「会社の飲み会がホントに苦手」 人間関係に疲れて休職…超過敏「HSP」の人たちが持っている「才能」
相手の気持ちがわかり過ぎて
彼は、人の気持ちがわからないわけではない。むしろ、相手の気持ちがよく理解できるために、共感しすぎて振り回され、疲れ切ってしまうのだ。
「職場の飲み会とか、本当に苦手なんです。周りが盛り上がるほど、自分は疲れて『盛り下がって』しまう。『ちょっと用事があるんで』と言って自分の部屋に戻ると、『あぁ、一人はいいなぁ!』って心から思いますよね」
彼のような「過敏」な人たちは、私の外来でも時々見かける。HSPに該当する人たちは、全人口の15~20%にのぼるという研究もある。感覚が過敏すぎて、強い刺激や人間関係に疲れ切ってしまい、不安や抑うつで病的になって外来に通っているのだ。
「HSPは、まだガイドラインに載っている診断名ではないので、とりあえず、今の診断名で治療は続けましょう。HSPだとすれば、困難なことばかりでなく、他人よりも優位な点も多いから、それを生かすような工夫をすればよいと思いますよ」
Z也さんには、そのようにアドバイスしてみた。
過敏性は集団の危険を察知する能力
その後しばらくして、彼の生活にも転機が訪れたようだった。
「先生、新しい勤務先が見つかりました。IT関係の会社で、在宅勤務が基本。仕事は出来高払いで、会社へはときどき行くだけでいいそうです。やはり、自分の安心できる環境で、よけいな気を使わずに仕事できるのが一番ですよね。おかげで、前から個人で運営している映画のおすすめサイトも、充実させられそうです。先生もぜひ、のぞいてみてください!」
Z也さんもずいぶん元気を取り戻したようだ。
HSPの人たちは、抜群のセンスを生かして、芸術や技術の分野で先進的な仕事をすることも多い。「過敏性」とは、もともと「集団の危険を察知するために発達した能力」だとも言われる。時代を先取りする細やかな感性は、むしろ「新しい人類」の可能性を 拓 くものかもしれないのだ。
「あ、先生、新しいカウンセラーのご紹介、ありがとうございました。とてもセンスのよい女性だったので、今度一緒に映画を見ることにしました」
「おいおい、いつの間に……」
と言おうとしたら、彼の姿はすでに外来から消えてしまっていた。(梅谷薫 心療内科医)
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いまどきこんな病名まであるんですね。 良い仕事は完璧に近いモノを言うわけなので、繊細な部分はあって当り前な気もします。 ミクロ単位の仕事とセンチ...
いまどきこんな病名まであるんですね。
良い仕事は完璧に近いモノを言うわけなので、繊細な部分はあって当り前な気もします。
ミクロ単位の仕事とセンチ単位の仕事が違うのは当たり前だし、両方の性質を兼ね備えている人間ばかりでもないというだけの話ですが。
一方で、こういう病名が、繊細な人を守るのであればいい話でしょう。
普通の人は専門職の細かい仕事の中身ではなく、職種や肩書、あるいは収入とか世間にあるイメージでしか他人を判断できないからです。
それは、何も他人だけでなく、近親者もそうです。
さて、よく観察すると、態度や行動から透けて見えるものは沢山あります。
隠すためにわざと逆の態度を取る人も多いですね。
あまり真正直に口にして良い事もないですが、趣味としてやる分には面白いこともあります。
一方で、見ざる聞かざる言わざる、なんて言葉があるのは人間社会では色々ややこしいからですよね。
医療でも客観的真実が感謝や報酬の対象にならないことはよくあって、考えさせられます。
感謝されると信じています、は便利な言葉で、何パーセントかは書きません。
サッカーもそうですが、偽善かもしれない行動や言動は半分趣味だと割り切ると気が楽です。
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詳しい者ではないですが
ま
「メールの言葉づかいや変換の間違いを許せない。ずさんな仕事を見ると、イライラしてつい相手を責めてしまうのだ。」 HSPの人ってこれができるイメー...
「メールの言葉づかいや変換の間違いを許せない。ずさんな仕事を見ると、イライラしてつい相手を責めてしまうのだ。」
HSPの人ってこれができるイメージが無いんですけどどうなんでしょうか? むしろ責められる側の気持ちを伺っちゃうイメージ…
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