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心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」

医療・健康・介護のコラム

「会社の飲み会がホントに苦手」 人間関係に疲れて休職…超過敏「HSP」の人たちが持っている「才能」

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 「先生、私の診断は『HSP』ではないでしょうか?」

 ある日の心療内科の外来。Z也さんが切り出した。

 「う~ん、HSPねぇ……」

 担当医の私はしばらく考えこんでしまった。

「会社の飲み会がホントに苦手」人間関係に疲れて休職…超過敏「HSP」の人たちが持っている「才能」

イラスト:高橋まや

周りから「完全主義者」と呼ばれ

 Z也さんは、33歳の男性。外来の診断は「全般不安症(DSM-5)」。以前は「全般性不安障害」と呼ばれていた病気だ。彼の場合は、前医にかかっていたころから、強い緊張感や不安、神経過敏、疲れやすさ、集中力低下、睡眠障害などがあり、この診断名で治療が続けられてきた。

 「今の会社も、もう限界です。上司は仕事もできないのに威張ってて、大変な事案はみんな部下に押しつけてくる。同僚は同僚で、仕事はいい加減だし、やる気もない。イヤな仕事を次々に押しつけられて、人間不信が一層ひどくなりました」

 そういうZ也さんは、周りから「完全主義者」と呼ばれている。ちょっとした間違いがひどく気になる。メールの言葉づかいや変換の間違いを許せない。ずさんな仕事を見ると、イライラしてつい相手を責めてしまうのだ。

 「生まれてからずっと、信頼できる友だちもいないんですよね」
 と、ため息交じりに語るZ也さん。

 人間関係があまりにも下手なので、「発達障害」ではないかと考え、専門のクリニックを受診したことがあるという。

 「結果は『グレー』判定でした。アスペルガー症候群の可能性はあるが、確定にいたるほどのレベルではない。『自閉症スペクトラム(ASD)の疑い』ということで、様子を見るように言われておしまいでした」

 結局、Z也さんは会社の人間関係でヘトヘトになり、有給休暇を取って休みに入った。もともと仕事はできる方だし、IT関係は出入りの激しい業界だから、次の仕事を見つけるまでの骨休めだと思うことにしたそうだ。

感受性強く、対人関係に傷つき

 ヒマになったので、気楽にネットを散策していると、「HSP」という言葉と出会った。

 「ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)」とは、1996年、エレイン・アーロンによって提唱された心理学上の概念だ。「超過敏な人たち」と表現されることもある。生まれつき感受性が人一倍強いため、対人関係などで傷ついたり、抑うつ的になることも多い。

 「思い返してみると、小さい頃から『超敏感』な子どもだったんです」とZ也さん。「臭いに敏感で、ある木の下を通るだけでゲーゲー吐いて、親を困らせました。通学路もほかの子たちと違う道になるんですよね。テレビも苦手。画面から出る電磁波がダメで、自分一人だけテレビを見られなかった。電気専門店のテレビコーナーなんて、近づくこともできないんです。大学に入ってからパソコン買うのも大変。安物のPCは画面が見られない。結局、高級品を買うしかなくなるんです……」

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梅谷 薫(うめたに・かおる)

 内科・心療内科医
 1954年生まれ。東京大学医学部卒。90年から同大学で精神科・心療内科研修。都内の病院の診療部長、院長などを経て、現在は都内のクリニックに勤務。「やまいになる言葉~『原因不明病時代』を生き抜く」(講談社)、「小説で読む生老病死」(医学書院)など著書多数。テレビ出演も多い。

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2件 のコメント

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世の中よく見ると見えるものは沢山あります

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

いまどきこんな病名まであるんですね。 良い仕事は完璧に近いモノを言うわけなので、繊細な部分はあって当り前な気もします。 ミクロ単位の仕事とセンチ...

いまどきこんな病名まであるんですね。
良い仕事は完璧に近いモノを言うわけなので、繊細な部分はあって当り前な気もします。
ミクロ単位の仕事とセンチ単位の仕事が違うのは当たり前だし、両方の性質を兼ね備えている人間ばかりでもないというだけの話ですが。

一方で、こういう病名が、繊細な人を守るのであればいい話でしょう。
普通の人は専門職の細かい仕事の中身ではなく、職種や肩書、あるいは収入とか世間にあるイメージでしか他人を判断できないからです。
それは、何も他人だけでなく、近親者もそうです。

さて、よく観察すると、態度や行動から透けて見えるものは沢山あります。
隠すためにわざと逆の態度を取る人も多いですね。
あまり真正直に口にして良い事もないですが、趣味としてやる分には面白いこともあります。
一方で、見ざる聞かざる言わざる、なんて言葉があるのは人間社会では色々ややこしいからですよね。

医療でも客観的真実が感謝や報酬の対象にならないことはよくあって、考えさせられます。
感謝されると信じています、は便利な言葉で、何パーセントかは書きません。
サッカーもそうですが、偽善かもしれない行動や言動は半分趣味だと割り切ると気が楽です。

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詳しい者ではないですが

「メールの言葉づかいや変換の間違いを許せない。ずさんな仕事を見ると、イライラしてつい相手を責めてしまうのだ。」 HSPの人ってこれができるイメー...

「メールの言葉づかいや変換の間違いを許せない。ずさんな仕事を見ると、イライラしてつい相手を責めてしまうのだ。」
HSPの人ってこれができるイメージが無いんですけどどうなんでしょうか? むしろ責められる側の気持ちを伺っちゃうイメージ…

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