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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

2020東京五輪・パラリンピックを機にHIV・エイズ対策推進を

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世界エイズデーを記念しシンポジウム

2020東京五輪・パラリンピックを機にHIV・エイズ対策推進を

 世界エイズデー(12月1日)を記念したシンポジウムが2日、東京都内で開かれた。主催したのは、厚生労働省の「2020年五輪大会に向けた東京都内のHIV・性感染症対策に関する研究班」(代表=田沼順子・国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター医療情報室長)。大勢の外国人が訪日し、海外からも注目が集まる東京五輪・パラリンピックという機会をとらえ、より一層のHIV・エイズ対策を進めようというのが目的だ。

厚労省研究班が3年計画で

 研究班は2019~21年度の3か年。まず初年度は、大勢の人がイベントに集まる事態への準備調査として、リオデジャネイロやロンドンなど過去の五輪開催都市の取り組みを調査したり、東京都内を中心とした性感染症対策に携わる医療機関の準備状況についてのアンケート調査を行ったりしている。

 東京五輪、パラリンピックが開かれる20年度には、旅行者への情報発信や差別・偏見対策、感染予防などに関わるネットワーク作りや現状調査を計画。そして3年目の21年度には、五輪による影響の評価やレガシー(遺産)構築に向けた事後調査のほか、HIV対策に取り組む世界の都市でつくるネットワーク「Fast-Track Cities」への加盟の実現可能性を測る考えだ。

行政と民間が一体となったロンドンの取り組み

 研究班では今年9月、ロンドンで開かれたHIV対策に取り組む都市ネットワークの会議に出席。合わせて2012年に五輪が開かれたロンドンでの対策について調査した。

 それによると、無料でオンラインで申し込める郵送自己検査キットや日本では未承認の予防投薬の実施、利用者が入りやすい雰囲気の検査施設、政府の公認を受けた民間活動団体(NGO)自らが30年までにHIV流行を終わらせる計画を立案したことや、資金を集約して統一性・デザイン性のある予防啓発が実施されているなどの取り組みが奏功し、ハイリスク層の新規HIV感染者が過去5年で40%も減少していることがわかった。

ピーク時に比べるとやや減 東京が3割以上

 厚労省のエイズ動向委員会が今年8月に発表した2018年のエイズ発生動向調査によると、HIV感染者とエイズ患者を合わせた新規報告数は1317人で、1500人前後だったピーク時に比べるとやや減少傾向にある。地域的には東京都が3割以上を占めるのに続き、大阪府、愛知県と都市部に多い。

 HIVは、作用の異なる薬を組み合わせてウイルスの増殖を抑える治療の進歩によって、近年では健康な人とほぼ変わらない生活を送ることができ、他人への感染も防ぐことができるようになった。一方、就職差別をはじめとした、偏見や差別は依然根強い。

90―90―90達成のために

 国連合同エイズ計画は、2030年までのエイズの流行終結を目指し、20年までに三つの90(%)を達成する目標(90―90―90)を掲げている。(1)感染者の90%以上が診断を受けて感染を知ること(2)診断を受けた感染者の90%以上が治療を受けること(3)治療中の感染者の90%以上で血中ウイルス量を抑制することの三つだ。日本は治療成績は良いとされるものの、診断や治療を受けているかには課題が残るという。

 研究班の田沼代表によると、日本での90―90―90を達成するためには、ロンドンのような利用者目線での検査環境の再構築、HIV診断から治療までの期間短縮、予防投薬とその環境整備などの施策が必要という。

 田沼代表は「HIV・エイズは特に都市部での対策が重要だ。ロンドンのように五輪開催を対策強化につなげて流行を抑制した例もあり、日本でも、世界の注目が集まる2020をHIV・エイズ克服の節目として取り組み、五輪後のレガシーとして残したい」としている。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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