山崎まゆみの「心もとろける癒やしの温泉」
医療・健康・介護のコラム
尾崎紅葉も癒やした露天風呂 栃木県塩原温泉郷で「マイ温泉」探し
温泉に何を期待しますか――。
効果効能をあげる人が多いでしょうね。
その効き目がわかりやすいほど、名湯と呼ばれやすいのかもしれません。
明治時代に西洋医学が導入される前は、温泉が薬として使われてきたことは、この連載でも触れてきました。とはいえ、一度入っただけで、速効性があるわけではないのも、また温泉です。
ただ、先人が温泉で病を治した「復活例」ならたくさんあります。
自然の色彩豊かな川岸露天風呂
貫一、お宮で知られる「 金色夜叉 」。著者の尾崎紅葉は、この作品を書きあげた後、神経痛に悩み、続編を仕上げられずにいました。そこで持病を治すことを目的に、栃木県塩原温泉郷に湯治に来たとされます。
なかでも「塩の湯温泉」は、その名の通りにナトリウム成分が豊富に含まれ、ぐっと温まります。ぬるめの湯ですから、尾崎もゆっくりと入浴ができたでしょうし、さぞかし神経痛を和らげただろうと想像します。
源泉は今も変わらず絶え間なく湧き続け、尾崎紅葉が利用した川岸露天風呂の湯船もそのままの状態で残っています。湯の花が湯船にこびりつき、茶褐色に変色して、でこぼこに。金属のような、鉄のような匂いがします。
ここで湯に 浸 かり、見上げるとそびえ立つ渓谷が目に入ります。これからの季節は、崖に生えた木々が真っ白い雪に飾られ、お湯は茶褐色、さらに手が届きそうな距離にある川の色は 翡翠 色。その色彩豊かな景色は飽きさせません。
じんわりじんわりと温かさが体に染み入ります。長湯をしても川風が 火照 った頬を冷やしてくれるので、ずっとずっとここにいたくなるのです。
尾崎紅葉が湯治して間もなく、『続・金色夜叉』が刊行となりました。症状と塩の湯温泉のお湯の相性がマッチして、高い効果を得られたのではないかと推測します。
多種多様なお湯が沸く「温泉のデパート」
近年、私は、自分と相性のいい温泉を探すことを提案しています。
名付けて、「マイ温泉」。
自分に合う温泉なんて、たくさん入らなければわかりません。一日に泉質の異なる温泉に入り、湯の違いを感じる必要があります。自分の肌に寄り添ってくるか、立ち向かってくるか、それを知るために入り比べをするのです。
そんな湯巡りに絶好のロケーションが、尾崎紅葉が 逗留 した塩原温泉地域です。私は、塩原温泉は「温泉のデパート」と呼びます。15キロ圏内に約60軒の宿泊施設、多種多様な源泉150か所が点在しているのです。
「塩原温泉郷公式ホームページ」を見れば、この地区の湯力は一目瞭然です。公衆浴場やそれぞれの宿、入浴施設ごとに「温泉カルテ」が表示されています。
入浴の後に、「自分が好きな湯」や「自分に合う湯」が見つかれば、温泉の成分が理解できるようになっています。
私も温泉を知るために、一日に15回ぐらいは温泉に入っていた時期があります。極めるには塩原温泉地区が最適です。
数をこなして初めて見えてくる温泉道。
ぜひ、温泉道の世界へ。お待ちしております。
塩原温泉郷(塩原温泉観光協会)
【 所在地 】〒329-2921 栃木県那須塩原市塩原747
【 電 話 】0287-32-4000
【 泉 質 】塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、硫黄泉、酸性泉、単純泉
【 効 能 】慢性皮膚病、やけど、慢性婦人病、動脈硬化症など
【アクセス】JR東北新幹線那須塩原駅からバス65分
【ホームページ】http://www.siobara.or.jp/
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