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大量出血で緊急入院も…親子ともに命がけ、「多胎育児」の壮絶な現実

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細切れの睡眠…惨事と隣り合わせの毎日

 多胎育児の一日の流れを可視化するため、あるお母さんから双子の育児日記(生後27日)を提供していただいて、24時間のおむつ交換と授乳、 沐浴(もくよく) のタイミングを図で表してみました。

 2人合わせて、授乳は19回、おむつ交換は28回。昼夜の別なく、びっしりと印が描かれています。これでは、主たる養育者(多くの場合、母親です)がまとまった睡眠を取るのは、まず不可能。自分の食事や入浴、トイレさえままなりません。

 アンケートでも、ほとんど眠れないつらさを訴える声が数多く集まりました。中には、一歩間違えば惨事につながりかねない、深刻な状況をうかがわせるものもありました。

  「10分寝て起こされ、1時間かけて夜泣きの子を寝かしつけ、30分寝て起こされ、また夜泣き……。気が付いたら外は明るくなっていて、また一日が始まる」

  「毎日ほとんど寝られず、泣いている長女の口を塞ぎそうになった」

  「生後2か月の頃、寝不足で判断力がなくなり、誤って子どもを落としてしまい、ケガで入院させてしまった。命にかかわる事故だったと思う」

自分の健康も犠牲に

 極限の状況で、親が自分の健康を二の次にしている様子もうかびます。

  「腰や背中が始終、痛い。風邪をひいても動くしかない」

  「帝王切開で出産、出血多量で貧血気味のまま育児が始まった。毎日、ほとんど眠れず、子宮復古不全でさらに大量出血し、緊急入院。原因は過労と言われた」

  「(自分の体調が悪くて)病院に行きたいが、2人を連れていく苦労と比べたら、自力で治す方がマシ」

 多胎児は、妊娠中から母胎の負担が大きく、早産や妊娠糖尿病などのリスクも高いとされます。多胎児のお母さんは、自分の命を削るようにして子どもを産み、育てているのです。

子どもにネガティブな感情も

 そんな過酷な生活の中では、子どもに対してネガティブな気持ちになるのも無理はありません。

 アンケートでは、「気持ちがふさぎ込んだり、落ち込こんだり、子どもに対してネガティブな感情を持ったことはあるか?/あったか?」という問いに対して、なんと93.2%の方が「ある・あった」と答えました。

  「毎日が戦争。気が変になるし、死にたくなる」

  「ノイローゼ手前にまでなって、子どもを投げてしまったことも」

  「新生児の頃は、我が子なのに恐怖の対象でしかなかった。いまだに新生児の泣き声を聞くと、 動悸(どうき) がして手が震える」

 限界まで、いや限界を超えたところで、必死に目の前の子どもの命を明日につないでいる姿が浮き彫りになりました。

ワンオペ育児は父親の責任?

 私たちは先月、厚生労働省で記者会見を開き、アンケートの結果を発表しました。回答者の一人で、3歳の双子の女の子を育てる角田なおみさん(39)も出席し、「私は育児に向いていないと思い詰め、子どもをあやめるか自殺しようか、どちらがいいか迷っていた」と、涙で声を詰まらせながら語りました。

 このことがメディアで報じられると、「彼女がこんなに苦しんでいる間、夫は何をしていたのか?」という反応があったのです。

 角田さんのご主人は、夕方にいったん帰宅して子どもたちの世話や家事をしてから、また職場に戻ることもあったそうです。ご主人なりに、できる限りのことをしていたものの、仕事で家にいない時間が長く、その間は角田さんが孤軍奮闘するしかなかったのです。

 アンケートの回答にも、「ワンオペ育児」(主に母親が、家事と育児を一人で担うこと)という言葉が度々、登場します。子育ては母親が担うべきという、根強い意識。日本の長時間労働が、夫婦の信頼関係さえも揺るがしている現実。改めるべき点はいくつかありますが、そもそも、こんなに大きな負担を家族だけに負わせるべきなのでしょうか?

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