文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

ニュース・解説

大量出血で緊急入院も…親子ともに命がけ、「多胎育児」の壮絶な現実

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 不妊治療の広がりもあり、双子や三つ子などの多胎児が増えています。厚生労働省の人口動態統計によると、出生に占める多胎児の割合は1980年代後半から少しずつ増加し、現在は妊婦のおよそ1%が多胎児を出産しています。多胎育児は、年の違うきょうだいを育てるのとは、どう違うのでしょうか? 実態を知るため、子育て支援に取り組む認定NPO法人「フローレンス」(東京)が、9~10月、ネットでアンケートを実施。その調査から見えてきた多胎児家庭の厳しい状況を、同法人の市倉加寿代さんに報告してもらいました。

保育園のお迎えで疲れ果て

 皆さん、こんにちは。フローレンスの市倉加寿代と申します。

 私には、4歳と2歳の双子の3姉妹を育てている友人がいます。1年ほど前でしょうか、彼女の保育園のお迎えを手伝うことになりました。

 双子用のベビーカーに乗せようとすると、なぜか3人とも断固拒否。友人の説得もむなしく、全員で歩いて帰ることになりました。双子と手をつなぐ私。荷物を載せた大きなベビーカーを押す友人。その目は、一人で歩く長女をずっと追っています。万一、この子が何かの拍子に走る車の前に飛び出したらと思うと、私も気が気ではないのですが、両手が塞がっていてどうにもできません。

 大人なら5分の道のりを30分ほどかけて、無事に家にたどり着いたときには、 安堵(あんど) と疲労で倒れ込みそうになりました。私の20年来の友人とその娘たちは、こんな命がけの日々を送っていたのです。

調査で集まった親の悲痛な叫び

 私にも、8歳と4歳の子どもがいます。2人が同時に生まれてきたら、そりゃ大変だろうと思ってはいたのですが、現実は想像をはるかに超えていました。彼女が「クローゼットの中に籠もって、時間が過ぎるのをただ待っていることがある」というのを聞いて、「これはまずい」と感じ、時々、お迎えから寝かしつけまでを手伝うように。「この問題を広く知ってもらう必要がある」と考え、多胎児を育てている人が、何に困っていて、どんな支援を必要としているのかを調べることにしたのです。

 9月にネットでアンケートを開始すると、回答が一晩で200件を突破。最終的には、全国の多胎児家庭から1591件の回答を集めることができました。

 その拡散力もさることながら、内容にも驚かされることになりました。今まで表に出てこなかった、追い詰められた親の叫びが渦巻いていたのです。

最も辛いのは、「外出・移動」

 「多胎育児中に『つらい』と感じた場面」として、それぞれの項目を選んだ人の割合は、以下の通りでした(複数回答)。

  • 外出・移動が困難である:89.1%
  • 自身の睡眠不足・体調不良:77.3%
  • 自分の時間がとれない:77.3%
  • 大変さが周囲に理解されない:49.4%

 自由記述などを基に、さらに詳しく分析してみました。

 まず、最も多くの人が「辛い」と答えた外出・移動の困難さについては、いくつかの要素があることがわかりました。

  • 準備が大変。全員の着替えや荷物の用意に加え、子どもたちの機嫌に翻弄ほんろうされる
  • 交通機関に乗るのが大変。双子用の大きなベビーカーは、バスに乗車拒否されたり、タクシーに乗せられないことがままある。電車に乗っても、エレベーターがない駅ではホームから出られない。周囲への迷惑になると感じて、そもそも電車やバスを使うことをためらってしまう。
  • 段差があったり幅が狭かったりして、ベビーカーでは通れない店や道路がそこら中にある
  • 出先で子どもが泣いたり騒いだりした時に、周囲の目が気になる

 多胎児を連れた外出・移動では、行く先々にこうした関門が待ち受けているのです。その結果、引きこもりがちになり、会話は、ほとんど同居の家族とだけ……という回答者も少なくありません。 「市の保健師や職員からは、児童館や保育園の園開放に参加するよう言われるが、一人ではなかなか連れ出せない」 という声も。他の親子などとの交流が、自分にも子どもたちにもいいことは分かっているけれど、行きたくても行けない状況。それを周囲に理解してもらえないつらさもあるようです。

1 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事