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線虫がん検査とは?…広津崇亮・HIROTSUバイオサイエンス代表取締役

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1滴の尿でがんを検知 実用化直前「線虫がん検査」の可能性を開発者に聞いた

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がん探知犬がヒントに

 ――この検査の発想のきっかけは、がん探知犬だったとか。

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体長約1ミリの線虫(HIROTSUバイオサイエンス提供)

 がん探知犬を健康診断に導入した自治体もあるようですが、犬の場合、がんをにおいでかぎ分ける訓練が必要なのがネックですね。個体差が大きかったり、飽きてしまったりする難しさがあります。線虫検査は生まれ持った性質を利用するだけです。

――犬の嗅覚の良さはおなじみですが、線虫がなぜ鋭い嗅覚を?

 嗅覚に特化している、という感じですね。目がないし、耳もない。それでも、エサを探したり、天敵から逃げたりするのは、動物として大事なことです。人間は目に頼っていますが、ほとんどの動物は嗅覚にかなり頼っています。線虫は他の感覚がないので、嗅覚を研ぎ澄ますしかなかったということでしょう。

――大学では、線虫を材料に嗅覚を研究していたんですね。

 人間の嗅覚と仕組みは同じなので、モデル生物として使っていました。いいにおいと思うか、オレンジみたいなにおいと思うか、脳内でどういう情報処理をしているのか……。それを人間では解析しづらいので、線虫の簡単な神経回路を使って研究していました。

――そもそも、線虫が寄っていくのはエサを求めて?

 ほとんどのモチベーションはエサだと思います。

――検査のために線虫を飼育するコストは、あまりかからないですか。

 放っておけば、勝手に増えます(笑)。雌雄同体なので、オスとメスを入れてという手間もなく、1匹だけで勝手に卵を産んでくれます。そして、ある温度に保てば勝手に増えていきます。どのくらいの期間で、どれくらいに増えるというのもわかっています。

――検査の機械化にも取り組んだそうですね。

 がんの有無を判断するのは線虫ですが、その動きを解析するのは機械です。その機械ができたことで実用化が可能になりました。全自動化はできていないので、当初は、それなりに人は必要ですが。

――いいことだらけのようですが、課題はありませんか。

 生物なので、機械がやるのと違い、環境の影響で結果にぶれが出るということも言えると思いますが、ある程度の範囲に収まるとわかっています。検査精度は、今以上に良くするように研究を進めています。後は、尿を集めて検査し、結果を報告するという一連の流れがスムーズにいくかどうか、一部自治体職員の協力を得て、検証する作業を進めています。

海外でも高い関心

 ――世界にも広がりそうですか。

 今、オーストラリアで臨床研究の最初のところが終わり、このあと大規模臨床研究に入ろうしている段階です。米国にも会社を作り、先日、1週間滞在し、プロモーションを行ってきました。どう受け取られるかと思っていたのですが、すごく興奮してくれて、これは世界で必要とされる技術なんだということを理解しました。

――これまで順調に進んできたように見えますが、苦労もありましたか。

 日本人は、本質とずれたところが結構気になり、すごくネガティブになりがちです。海外では、「いいな」と思ったら、「少々デメリットがあってもやろうぜ」となる。前向きなマインドがあるんです。残念ながら、日本はベンチャーを取り巻く文化がない。そういうことを感じて帰ってきました。

――2018年10月に一般社団法人「日本生物診断研究会」を作られました。いずれ学会にしたいということですが、線虫以外にも診断に使える生物がいますか。

 検査画像を見て「ここにがん細胞がある」と診断するのは、人よりもハトにやらせた方が精度が高いなんていう論文もあります。すごい能力を持った生物は線虫だけじゃないので、こういったことは、他にいくらでもあると思います。この会には、医学界で実績のある先生方が多く入ってくれました。生物診断への期待の大きさの表れだと思います。

――基礎研究者からベンチャーの社長への転身、どうですか。

 研究とビジネスには似た部分も大きいです。ベンチャーは何もないところから新たな市場を切り開くのですが、理学の研究もゼロから1を生み出すことに価値があります。そういう意味では、フィールドは全然違うけれど、すごく面白いです。

広津崇亮さん

ひろつ・たかあき
 1972年、山口県生まれ。「HIROTSUバイオサイエンス」代表取締役。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。九州大学大学院理学研究院助教などを経て、2016年から現職。著書に「がん検診は、線虫のしごと 精度は9割『生物診断』が命を救う」(光文社新書)。

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2件 のコメント

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既存の診断戦略の中での拡大戦略を考える

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

マーケットシェアや競合者との争いで消えたビジネスアイデアというものは山ほどあるので、自分でやりたいように、利益も求めすぎずやるのもいいのかもしれ...

マーケットシェアや競合者との争いで消えたビジネスアイデアというものは山ほどあるので、自分でやりたいように、利益も求めすぎずやるのもいいのかもしれないですね。

この診断機器がステージ0-1のがんの検出でも優れるのであれば、おそらく、超音波診断やいずれ普及が始まる超低被ばくCTと並列で、スクリーニングで大きな威力を発揮するのではないかと思います。
画像診断では早期がんと見分けのつきにくい種々の病変もあり、画像診断かこの検査かではなく、診断やドックの様々なパスウェイでのハマりどころを考えるのが有効かもしれないですね。

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今後の進捗に期待

さやさや

「15種類のうち、どのがんかはわからないけれど、「有無」を調べる。これだけでも、日本では大きな意味があります。」とのことですが、有の場合、15種...

「15種類のうち、どのがんかはわからないけれど、「有無」を調べる。これだけでも、日本では大きな意味があります。」とのことですが、有の場合、15種すべて精密検査うけるのでしょうか。胃がんと大腸がんだけでも検査すれば、それで見つかって助かる人は増えるでしょうが、他のがんにも罹患していないとは限らないし、逐一調べると時間も費用も、結果がでるまでの精神的な負担も大きいと思いますが。特異性と感度がともに高く、がんの種類が特定できる検査法を開発していただきたい。

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