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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

公立・公的病院の「再編・統合」検討リスト公表 風評被害も 地域事情を踏まえた議論を

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医師から就職内定の辞退も

 公立・公的病院の再編・統合も含めたあり方の再検討を求めるリストが厚生労働省から公表された問題について、全国公私病院連盟(辺見公雄会長)が11月29日、東京都内で開いた初めての記者会見で、リストに挙げられた病院で医師の採用内定辞退が起きたり、患者を不安にさせたりといった「風評被害」を懸念する声が、加盟団体から相次いで表明された。そのうえで、今後の地域の調整会議の場で、それぞれの地域の実情を踏まえた医療のあり方を議論していきたいことなどが述べられた

地域を「切り捨て」と批判

公立・公的病院の「再編・統合」検討リスト公表 風評被害も 地域事情を踏まえた議論を

写真は、記者会見で話す辺見公雄・全国公私病院連盟会長

 同連盟は1964年に設立され、全国自治体病院協議会、全国公立病院連盟、全国厚生農業協同組合連合会、日本赤十字社病院長連盟、全国済生会病院長会、岡山県病院協会、日本私立病院協会の7団体が会員となっている。今回の病院リストの公表について、辺見会長は、「データの出し方が乱暴すぎる。データが2年前と古いうえに、すでに合併している病院や脊髄損傷の専門病院がリストに載っているなど、現場知らずで、地方の切り捨てではないか。患者さんを不安にさせているというのが一番まずい。みんな怒っている」などと述べた。

 また、全国厚生農業協同組合連合会の加藤幸男氏からは「風評被害という声があるが、うがった見方をすると、発表したこと自体が目的だったのでは。税金で成り立つ中小の公立病院はなくしてしまえということではないか。採用にも多大な影響が出てくる」などとして、厳しく批判した。

急性期の診療実績データを基に作成

 今回の病院リストの公表は、2025年に向けた地域医療構想の実現に向けた議論の一環だ。病床の機能を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の四つに分けて必要数を推計。全国を300余りの区域に分けて議論、調整を図る。

 厚労省は9月、がんや心臓病などの急性期の治療実績を基に、実績が特に少なかったり、近隣に代替できる病院があったりする場合、再編や統合を視野に入れた再検証の要請対象として、公立・公的病院について424病院の実名リストを公表。機械的な手法などに対する批判の声を受け、「各医療機関が担う急性期機能やそのために必要な病床数等について再検証をお願いするものであり、必ずしも医療機関そのものの統廃合を決めるものではありません」などとする説明を追加した。

病院の使命を見つめ直して積極的な議論を 

 全国公私病院連盟の記者会見では、今後の地域での調整会議での進め方について各団体の出席者から、「リストに挙げられた病院だけが ()(じょう) に載せられるのではと心配しており、全体として議論してほしい」といった声や、「本当に必要かどうかはその地域が決めるだろうと考えている。積極的に会議に参加し、病院の立ち位置を主張していきたい」といった声が上がった。

 リストに挙げられた病院の多くを占める全国自治体病院協議会の小熊豊会長は「高度な急性期治療を行っていない、地域密着の地域になくてはならない病院もたくさんある。医師の内定辞退や住民から『病院がなくなるのか』と相談を受けたとか、今後は職員の採用にも影響が出てくるだろうと思っている」などと述べた。

 そのうえで、「厚労省としては何らかの事実を示すために、ああいう指標を用いざるを得なかったのだろう。地域医療構想の会議の活性化、未来に向けた地域の医療提供体制のあり方を考えてほしいとのメッセージと思う」と一定の理解を示し、地域の調整会議の場での議論に臨みたい旨を説明した。

 今回の病院リストの公表は、すでに統廃合されている病院が載っていたことに象徴されるように、個々の病院の事情への配慮に欠けたことは間違いない。病院側からの反発はもっともなことだろう。病院全体の8割を占める民間病院についての問題もある。この日の会見では、善意に解釈すればとの断りつきで、リスト公表を奇貨として地域での積極的な論議につなげたいとの意見が出された。各地域における議論の活性化を望みたい。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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2件 のコメント

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地域での中長期的な高度医療の維持の為に

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

心筋生検研究会に来ています。 突然ですが、CTRCD=がん治療関連性心筋障害はご存知でしょうか? もともとの古典的抗癌剤でも各臓器毒性は知られて...

心筋生検研究会に来ています。
突然ですが、CTRCD=がん治療関連性心筋障害はご存知でしょうか?
もともとの古典的抗癌剤でも各臓器毒性は知られていましたが、免疫チェックポイント阻害薬の承認がこれに影響を与えています。

それが本文と何の関係があるのか?
おそらく、今の時点でわからない人が多いと思います。
政府や企業が唱える、癌と共生する社会への転換において、癌治療とは癌だけでなく、薬剤副作用や併存する様々な疾患との付き合いも含まれてきます。

医師を医師資格や専門医資格の数だけで見ると、その辺が難しいことになります。
是正されるべき部分もあるのかもしれませんが、数合わせだけしても仕方ないどころか、さらなる揉め事の理由にさえなります。
地方病院の一人医長の重たすぎる責任問題も大きな問題です。

住民や理解にも寄り添わざるを得ない部分もありますが、一方で、住民がある程度理解を始めた方がいいとは思います。
兵力分散で地域全部が崩壊するより、地域の中核病院だけでも強化された方が中長期的にはうまく行くとは思います。
勿論、医療者や官公庁の側も、一般人向けのわかりやすい資料を整理するとか、そういう仕組みは大事なのではないかなと思います。
お互いが自分たちの正義を振りかざしたとき一番衝突し被害が大きくなるのは戦争の常で、問題の可視化には有用でも、その次の段階を冷静に読んでいく必要があると思います。

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戦争との比較でわかる地域医療の撤退と殿戦

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

病院の使命だの、医師、看護師、関連職種の使命だの言われたところで、角度を変えれば資格認可の特殊サービス業です。 それぞれの命や生活も大事です。 ...

病院の使命だの、医師、看護師、関連職種の使命だの言われたところで、角度を変えれば資格認可の特殊サービス業です。
それぞれの命や生活も大事です。
そして、野戦病院という言葉がありますが、医療は半分戦場です。

人の心や体を救うために非人道性を伴う医学を学び、そして学び続け、時に非人間的な状況の患者や上級医、その他と向き合って、新人程高率に、物理的にあるいは社会的に死んでいきます。

地方の切り捨てという言葉は地方都市の切実な感情からの表現ですが、関西や関東さえまだら医療崩壊の進みつつある地域もある中で、新専門医制度のくくりの中で都心部で比較的自由な状況で資格や実務に生活を整え、ある程度の実務レベルに達した指揮官の医師が育ってくるのを待つのが国家全体の方策でしょう。
医学部地域枠の柔軟な運用もかんできますが、地方都市を救うには我慢も必要です。

今年は様々な地方都市に出稼ぎに行きましたけど、インフラの整備や地域住民や地域病院関係者の意識=指揮系統が整えば、息を吹き返しうる地域医療などいくらでもありました。
一方で、丸投げ系の医師患者関係の修正をせず、医師の動線や生活、キャリアを顧みないラブコールなど、逆効果でしょう。
(同じ言葉の病院にも医師にも色んな意味合いがあります。)
むしろ、都心部と兼任で勤務してくれる医師のヘルプをお願いするべきです。
交通費や二重生活、お金や交通会社への陳情で解決することです。

戦争に例えれば単純です。

皆、自分の願望の提示ばかりでなく、現実とのすり合わせが大事です。
意識を変えるために、修正できない患者や医療関係者の死屍累々が必要なのか、修正に舵を切るのか、それはどうなるんでしょうね?
システム改編も含めて、多分、20年計画で、もう一度前を向けると思います。
日本はテクノロジー国家ですから。

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