ごぼう先生のイス健康体操2.0
医療・健康・介護のコラム
介護予防は、お金と訓練で可能なのか?
介護予防できた自治体に400億円。何ができたら?
政府が2020年度の当初予算案で、介護の予防や自立支援に成果を上げた自治体に手厚く分配する交付金を、現在の2倍の400億円程度へ大幅に拡充させるという報道がありました。
このニュースは、ツイッターをはじめとするSNSを中心に話題になりました。
ポイントは、「認知症予防や要介護度の維持・改善に向けた取り組みを自治体間で競わせ、介護費の膨張を抑える狙いがある」という趣旨の説明の中で、地域間で一体“何を目標として競わせるのか”という点です。
SNSでは、今回の予算案の目標が、各地域の介護費用や医療費を削減するということで、果たして「生活が充実するのだろうか」「論点がずれている」という指摘を多く拝見しました。
筆者は、地域密着型デイサービスを経営して約5年になります。
介護認定が必要になった方々と数多く出会ってきました。
その中で気付いたのは、年を重ねて介護を受けることを自ら志願している方は、ほとんどいらっしゃらない、ということです。
しかし、現場を目にしてみると、早急にも予算が必要だと切実に感じます。
事業は、ボランティア中心で継続ができるのか
私が居住する愛知県岡崎市では、市の事業の一環で「ごまんぞく体操」が普及してきています。
重りを使用した体操で、器具は市からサロンに貸し出しを行っています。
サロンの数がここ数年で急速に増え、38万人の地域に150か所を超えました。
90歳になる私の祖父(要支援1)も家族送迎で週に1度通っています。
その週に1度の外出が、祖父にとって地域との唯一の関わりになっています。
体操の見学に行ってみると、お寺の一室に椅子を並べて、80歳以上の方々が5人。
地域包括支援センターの職員が3人。リーダーの方が1人で体操を行っていました。
お茶や、会場の水道光熱費が 補填 されている場所もあるそうですが、基本的にはボランティアで開催されています。
参加者には個人の名前が記載されたファイルが渡されていて、そこに身体測定の記録の表記がしてありました。
週に1度の体操に、身体の評価(健康状態)まで無料で提供していただけるのです。
仕事ではない、無償の介護予防教室の提供。
おじいちゃんの孫として、場所の提供と、体操の指導をしてくださるリーダーさんには、心から感謝をしています。
ただ、果たして、地域のリーダーはボランティアだけで運営を継続していけるのか。
このような場所に補助金を充ててもらえるなら、現状のサービス内容で充分なので、サロンの継続を心から願いたいと感じました。
全国各地、介護予防の多様性を紹介
ごぼう先生として、年間60講演。
1万人の方々と一緒にイス体操を行っています。
これまでに400か所ほどの地域で体操を行ってきました。
特に印象に残っている、地域の特徴をお伝え致します。
<岡山県 岡山市>
年に1度、イオンモール岡山で講演会を開いています。
5階の会場でしたが、ほとんどの席が埋まる600人の方々が参加されていました。
会場には、テレビ局も来て、岡山市全体の高齢者サロンが盛り上がっていることを伝えていました。
主催者の目的の一つは、年に一度の“みんなの遠足”とおっしゃっていました。
<北海道 池田町>
人口6600人ほどの町。
「ふまねっと運動」や体操教室など、通いの場所に力を入れている町でした。
その取り組みに町民の皆さまが意欲的に参加して、相互に「自立支援」を行っていることに自信を持って発言されていた表情がとても印象に残っています。
また、町の職員さんは、講演会に参加されたひとりひとりの参加者の名前を呼んでいることが印象的でした。
<愛知県 豊田市>
オレンジ色のTシャツは、毎年地域のリーダーになると支給されるシャツだそうです。
同じビジュアルから、強い一体感を感じました。
また、年度ごとに少しだけ色が異なることから、介護予防の歴史を感じました。
年度ごとの記念品の支給は、リーダーのモチベーション向上にもつながっているように感じました。
<台湾 台北市>
今年6月に台湾でイス体操をさせていただく機会がありました。
驚いたことは、90歳のお年を召した方でもスマートフォンを所持されていて、家族とのコミュニケーションは、LINEで行っているとおっしゃっていたことです。
最先端の時代の変化に、世代に関係なく、大人全体で対応している様子でした。
何を基準にして介護予防を評価するのか、難しいところがありますが、私自身、全国を回って、3万人以上の方々と出会って大切だと感じたことは、「表情が柔らかいかどうか」ということが私なりの答えです。
表情が変われば、動きも変わるからです。
その表情を動かすキッカケをつくるには、場所と人と環境の準備。
そして、居心地の良い地域を継続していくために、お金は必要です。
日本全体、どこの地域に行っても共通している願望は、笑顔になることではないでしょうか。
笑顔が生まれる地域づくりに、介護予防の効果的な予算活用を願うばかりです。
そして、私自身も全国各地をこれからも飛びまわり、さらなる「お達者」に生活できるヒントを探して参ります。
誰もが気持ちよく過ごせるコミュニティーが広がって、生活の豊かさが向上していくことを切に願います。
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