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神経に異常 多発性硬化症…日常注意し再発予防

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 神経を覆う さや が傷ついて起きる難病「多発性硬化症」。ものが見えにくい、まっすぐ歩けない、手がしびれる、物忘れが多い――など症状はそれぞれ異なるが、国内で患者が増えている病気だ。再発を繰り返して症状が重くなることがあり、専門医の受診と治療が欠かせない。(矢沢寛茂)

神経に異常 多発性硬化症…日常注意し再発予防

 全身の神経は、電気信号を伝える神経細胞が多数つながってできている。この細胞の長く延びている部分は、情報伝達をスムーズにするための「 髄鞘ずいしょう 」と呼ばれる絶縁体で覆われている。電線を保護するビニール膜のような役割がある。

 中枢神経の脳や視神経、脊髄の髄鞘が破れ、神経が所々でむき出しになると、信号が正常に伝わらなくなる。こうして様々な症状が表れるのが多発性硬化症だ。

 この病気は、中枢神経の至る所に異常が生じる。脳がダメージを受けると、記憶力や判断力などが低下し、視神経が傷めば、物の見え方に異常をきたす。脊髄の場合は手足がしびれたり、排せつをするのが困難になったりする。

 また、症状が何度も表れたり消失したりするのも、この病気の特徴だ。症状が治まるたびに患部が徐々に硬くなり、本来のしなやかさが取り戻せなくなる。

  国内 7~8割女性

 なぜ発病するのか、明確な原因は分かっていない。細菌やウイルスなどと戦って体を守る免疫が、中枢神経の髄鞘を誤って攻撃するという説が有力だ。

 この病気は高緯度の北欧などに暮らす白人に多く、日本ではまれな病気だったが、近年は増加傾向にある。現在の国内患者数は1万人を超すと推定されており、女性が7~8割を占める。発症は20~30歳代が多いが、子どもがかかることもある。遺伝はしないが、白血球の型や体質で発症しやすさに違いがあるとされる。

 多発性硬化症の疑いがあれば、まず磁気共鳴画像装置(MRI)で脳や脊髄の状態を調べる。その後、脳や脊髄を浸す脳脊髄液を採り、炎症の有無を検査する。

 発症時には、免疫反応を抑える「ステロイド」を大量に点滴し、炎症を鎮める治療が一般的だ。十分な効果がなければ、人工透析の装置で血液中の炎症成分を取り除く「 血漿けっしょう 交換」を行うこともある。

 再発予防には、症状や生活スタイルに合わせて、自己注射と内服薬、点滴を選択する。

  過労やストレス回避

 現状では根治は難しく、再発や進行度も予測できない。このため、症状が治まっている間の日常の過ごし方が重要となる。

 例えば、体温が上がると、体調を崩すことがある。暑い場所で過ごしたり、お風呂やサウナに入ったりする際は注意したい。また、感染症は再発の引き金になる可能性があり、予防を心がける。禁煙も重要だ。

 ただ、日常生活についてあまり神経質になる必要はない。過労やストレスを避ける。適度な運動は、体力維持だけでなく気分転換にもなる。

 近畿大教授(脳神経内科)の くすのき 進さんは「多発性硬化症を根本的に治すのは難しいが、近年は再発予防薬が増え、安定した状態を長く保てるようになった。思い当たる点があれば、早めに脳神経内科の専門医を受診してほしい」と話す。

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