心のアンチエイジング~米寿になって思うこと 塩谷信幸
医療・健康・介護のコラム
幸せをもたらすのは熱中…定年退職後に新しい分野を
数学者でノーベル賞受賞者でもあるバートランド・ラッセルには色々な著作がありますが、中でも「幸福論」は一般の方にも人気がある本の一つで、内容は全て「心のアンチエイジング」に通じるものがあります。そして、ラッセルが「幸せをもたらすもの」の一つとして、まず挙げている言葉が「熱意」です。ですが、よく読むと、むしろ「熱中」と言ったほうが良いかもしれません。周りのことはすっかり忘れ、ある一つのことに夢中になった状態ですね。
子供の頃はだれでも経験した夢中になる感覚
これは子供の頃はどなたでも経験した心境ではないでしょうか。例えば男の子の多くが一度は夢中になる昆虫採集。僕の場合は天文学でした。星座表を手にして、夜空を眺める。そしてプラネタリウムに日参する。四六時中そのことばかり考えて、他のことは頭に入らない。小学生ならそれが許されました。しかし、小学生の頭ではあるところまで行くと、学力がついていかない。そして、興味の対象は移っていきます。
中学に入ってからは化学の実験でした。家のガレージの2階を実験室にして、当時手に入る試薬類をかたっぱしから入手し、中学1年のレベルでできる実験を総なめしました。こうして、ただただ夢中で打ち込めることは、確かにラッセルの言うように幸せな状態でした。
高校、大学と進むにつれ、現実的になっていきます。専門を選ぶにあたっても、これで食えるかどうかという、動機が優先します。僕の場合は食いっぱぐれがなかろうと 親父 の職業、つまり医師の道を選びました。こうして確たる目的意識もなく医学部に入ったので、授業になじめず、これでいいのかと悩んだことを今思い出します。
ですが、医業の良いところは、いったん患者さんを診るようになると、医師としての自覚が生まれ、仕事に意義を感じるようになることです。そして、さらに形成外科に魅せられ、65歳の定年まで無事勤め上げることができました。
サラリーマンのアンチエイジングは定年退職後が問題
これが普通のサラリーマンですと、ポストによってそれぞれに仕事の面白さがあると思いますが、いつも希望通りというわけにはいかないでしょう。そして、定年が来れば職場を去らねばなりません。心のアンチエイジングの立場からの問題は定年後にあります。ことに日本の場合、企業人は現役の時は会社が全ての会社人間で、それを奪われるとぽっかり穴が開いてしまうのではないでしょうか。
そこでどう生きがいを見いだすか。つまり、高齢期のQOLをどう保つかですね。そこで役に立つのが、一つは趣味の世界です。
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