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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと 塩谷信幸

コラム

アンチエイジングは子供のころから!?

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アンチエイジングは子供のころから!?

 僕が88歳でも現役で仕事をしていることもあって、「アンチエイジングのために何をしていますか?」とよく質問されます。その都度、「特別なことはしていません」とお答えしてきました。ですが、改めて考えてみると、意識しないぐらい当たり前の習慣になっていることはあります。その一つは、ゴルフ好きで3度エイジシュートを達成し、106歳で天寿を全うした医師でもある 親父(おやじ) の健康法です。

106歳で大往生した父の健康法は「玄米菜食」

 親父は元来、体が弱かったので、自分で色々と健康には留意してきたと言っていましたが、その一つが「玄米菜食」です。親父のメンターは東大医学部教授の二木謙三博士でした。1940年代に初版が出た「健康への道」という親父にとってのバイブル的な書物で、「完全食」という考えを説かれています。

 一言で言えば、自然界の食材は野菜であれ、果物であれ、魚、肉であれ、皮から芯まで丸ごと食べれば栄養素は完全にバランスが取れるという考えです。最近になって、皮と実の間に貴重な栄養素が含まれていると言われ始めたようですね。その時の癖で、いまだにリンゴでも桃でも皮ごと食べ、魚でも可能な場合は頭から骨までかじるようにしています。

 また、調理法にもうるさかった。煮過ぎると栄養素を破壊するというのです。ビタミンCなどその最たるものですね。調味料も使ってはいかんというというのです。人間の体は、必要なものは舌と食欲で嗅ぎ分けるようになっている。つまり、必要なものは自然に摂取するようにできている。人工の調味料はその舌をごまかすから、体が必要としない、場合によっては害のあるものまで () るようになり、病気を引き起こすーー。

調味料や砂糖はダメ、子供にはつらかった

 これを原理主義的に信奉した親父から強制されると、食べ盛りの子供としては悲惨な食生活になります。親父にとっては何よりも砂糖が毒の権化なのです。そのため子供時代はキャラメル、チョコレートの類は一切ご法度でした。おばあさんが、たもとから親父の目を盗んで手渡してくれなければ、“毒”がいかに美味かは知らずに育ったでしょう。

 僕は親父ほど徹底していないので、砂糖が入っているものも食べますが、子供のころに身に付いた習慣の影響は今も続いています。

 さて、食事の次は運動です。ここでも親父の健康法が影を落とします。家中に平行棒だの運動器具が設置されているだけでなく、狭い庭は鉄棒、ごくごく小さなプールなどが占拠していました。風邪をひかないというので、和辛子を手ぬぐいに浸した辛子湿布もやらされました。学校から帰ると、このような責め具が待ち構えていました。

自転車の遠乗りが好きだった

 親父は学生時代、ボート部で、乗馬もよくしていました。僕は運動がからきし駄目。野球などやったことはもちろん、見たこともありませんでした。その僕が唯一楽しんだのが、自転車でした。当時はギア付きなどありません。普通の自転車で週末はどこへでも出かけました。東京・下北沢の我が家から北へ進めば、水道道路にぶつかります。そして、玉川上水沿いに御岳や高尾山まで日帰りの強行もいといませんでした。これで足腰が鍛えられたのでしょう。

 10年ほど前、タクシーの事故で前後から挟まれ、腰椎の3番と4番の圧迫骨折を起こし、2か月ベッド上で安静を強いられた時も、ほとんどリハビリの必要もなく、復帰できました。「ずいぶん筋肉がしっかりしていますね」と療法士にほめられたのを思い出します。

 特に健康に留意しなくとも、ここまでやってこられたのは、子供時代のレガシーと言えるかもしれません。

 このような事情があるので、「アンチエイジングはいつから始めるべきですか」と聞かれると、「子供の時から」とお答えしています。かと言って、高齢期に差し掛かっている皆さん、また高齢期真っ盛りの方々、もう手遅れなどと思わないでください。良い食事や運動などの生活習慣、アンチエイジングはいつから始めても、それなりの効果は上げることができます。実践する人たちを見ていてそう思います。(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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shioya_prof

塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オールバニ大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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