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認知症治療薬の最有力候補、治験中止から承認申請へ…前代未聞の大逆転なるか?

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投与量の引き上げで、結果が一転

投与量の変更で、結果が一転

 解析の時期によって、結果がひっくり返ったのはなぜか。臨床試験の途中で、ある変更が実施計画書に加えられたことが大きく影響しているという。

 それまでの研究により、アデュカヌマブは高用量(体重1キログラム当たり10ミリグラム)で効果が表れやすいとみられていたが、脳に浮腫(むくみ)が生じる副作用を避けるため、当初は、一部の患者で投与量を抑えていた。その後、投与量を徐々に上げる場合は、副作用をある程度、軽減できることなどがわかり、16年7月と17年3月の2度にわたって実施計画書が変更され、一部の患者の投与量が引き上げられた。

 その結果、中間解析後に追加されたデータには、高用量の投与を受けた患者がより多く含まれることとなり、効果が大きく表れたとみられる。

 二つの臨床試験で成否が分かれたのも、同様の理由だ。どちらも、対象とする患者(早期アルツハイマー病)などの条件は全て同じだったが、開始時期が1か月ずれていた。そのため、後からスタートした方で、投与量の変更による影響がより大きくなり、効果が明確に表れたと考えられるという。

 バイオジェンによると、先にスタートした臨床試験も、高用量の投与を10回以上受けた患者のデータのみを解析すると、Aβの除去や認知機能の低下抑制などは、成功した臨床試験と同じ傾向を示していた。

「1勝1敗」FDAはどう評価?

 この結果に基づいてFDAと協議を行ったうえで、今年10月、来年の早い時期に米国で承認を申請すると両社が発表した。日本と欧州でも、申請に向け、当局との話し合いが始まっている。

 曲折を経て、いよいよ承認申請へと動き出したアデュカヌマブ。承認されれば、前代未聞の「試験中止からの大逆転」となるが、二つの臨床試験の「1勝1敗」という結果について、まずはFDAがどう判断するか。

 バイオジェン日本法人の松田尚人・臨床開発部長は、「データを丁寧に見ていけば、P1b試験(少人数の患者が対象の臨床試験)を含む三つの臨床試験の結果が、一貫していることがわかります」と、総合的な評価に望みをかける。

 専門家の間では、「確実に効く薬が登場すれば、なぜ効くのか、どう効くのかを明らかにすることで、アルツハイマー病の研究が前進する」という期待もある。承認を巡る各地の動きが注目される。

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