Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」
医療・健康・介護のコラム
頭痛薬を飲み過ぎて頭痛に 依存性のある成分に注意
今回は、片頭痛のケースを例に、「もっと早く知っておきたかった!」というタイプの市販薬のトラブルを解説します。なお、2019年1月にスタートした本コラムですが、今回が最終回です。市販薬データ集『クスリ早見帖』の病院・診療所への無償配布のご案内もありますので、ぜひとも最後までお付き合いください。

イラスト 奥山裕美
40代女性。大学生の頃から頭痛持ちで、病院では片頭痛と診断されていました。病院の薬で効果はありましたが、市販薬でも同様に効果があったため、社会人になってからは病院を受診せずに、市販薬で対応するようにしていました。
数年ほど前から、仕事やプライベートで心身に負担のかかる状況が続き、頭痛の出る回数が増えました。そのため市販薬を使う回数も増え、ここ半年ほどは毎日のように市販薬を服用するようになりました。心身の負担が大きいために片頭痛が悪化し、それに合わせて市販薬を多く服用していると自分で解釈し、誰にも相談しませんでした。
この間、病院を受診せずに過ごしていましたが、心配した家族に半ば強引に病院に連れて行かれ、外来を受診しました。
頭痛がよく出る方は購入時に相談を
本ケースの女性は、元々あった片頭痛が慢性化(慢性片頭痛)したのかもしれないのですが、もうひとつの別な病気、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」の可能性も考える必要がありました。頭痛の治療薬を過剰に使用することで引き起こされる2次的な頭痛のことです。
そのため、外来では、服用してきた市販薬を中止し、頭痛が出た際は市販薬とは異なるタイプの片頭痛の薬を使う方針となりました。そして、頭痛の出た時間帯や程度、服薬時刻を記録する「 頭痛ダイアリー 」もつけていただき、自分でも振り返れるようにしました。その結果、頭痛の回数は減り、受診前に頭痛の回数が増えた原因は「薬剤の使用過多による頭痛」と診断されました。
「薬剤の使用過多による頭痛」は予防が大切で、頭痛がよく出る方は、薬の飲み過ぎにならないよう、普段から注意する必要があります。人見知りで、なかなか他人には相談しづらいという方もおられますが、薬局やドラッグストアで市販薬を購入する際は、薬剤師や医薬品登録販売者に相談できるよいチャンスです。安全のためにも、気軽に相談するよう努めましょう。
催眠鎮静薬入りは特に注意 薬物依存のリスク
「薬剤の使用過多による頭痛」の原因となる薬物は、市販薬に限らず、様々なタイプの鎮痛薬がありますが、中でも「催眠鎮静薬を含む解熱鎮痛薬」は、より注意が必要です。催眠鎮静薬では、時に薬物依存が問題になるからです。薬物依存とは、薬物の使用を繰り返した結果、脳に生じた異常状態のことで、薬物を再び使いたいという気持ちが抑えられなくなり、繰り返し使うようになるなど、たいへん困った状態です。
催眠鎮静薬の依存性については、一昨年、 厚生労働省の医薬品・医療機器等安全性情報No.342 の中で、「催眠鎮静薬,抗不安薬及び抗てんかん薬の依存性に係る注意事項について」というアナウンスもありました。
依存性への注意が必要な催眠鎮静薬ですが、ご自身の服用している市販薬に催眠鎮静薬が入っていることを知らない患者さんはとても多く、その点がとても気になります。
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いまは、薬局認可の薬剤も増え、薬剤師のかかりつけ医化も水面下で進んでいるように思います。 大病院の医療が高度になっていく中で、ある程度仕方ない部...
いまは、薬局認可の薬剤も増え、薬剤師のかかりつけ医化も水面下で進んでいるように思います。
大病院の医療が高度になっていく中で、ある程度仕方ない部分もありますが、一方で、検査なしに投薬を重ねる意味は分かったうえでやる必要があります。
医師の診察や検査無しの投薬が良いか悪いかではなく、潜在的な救急疾患との距離感や時間軸の意識が大事なのではないかと思います。
何度か、コメントを寄稿させていただきましたが、こういう市販薬の切り口は大事です。
薬は毒でもあり、鎮痛剤の中毒や鎮痛効果にマスクされる疾患の存在の意識は大事です。
また、偏頭痛様の症状があって、その診断に基づいて投薬されている中で、他の疾患の存在や発育が見逃されるケースもあります。
学会演題で行けば、「○○の診断のもと経過観察されていたが、××が発覚した一例」というやつですね。
40代女性であれば、モヤモヤ病や脳卒中のリスクの除外の為に頭部MRIの撮像も考えてよいとは思います。
長らくお疲れ様でした。
またの機会をお待ちしております。
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