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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

ケアプラン作成を丸投げしない どんな生き方を望むのか、自分で考え、選ぶ

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ケアプラン作成を丸投げしない どんな生き方を望むのか、自分で考え、選ぶ

義父の在宅介護の経験をきっかけに

 ケアプランをたてる際には、どんな暮らしや生き方をしたいのかを自分の頭で考え、主体的にサービスや事業者を選びたい――。そんな「丸投げしない」ケアプランづくりを理念に掲げる「全国マイケアプラン・ネットワーク」代表の島村八重子さん(65)に、自分でケアプランを作成することの意義や作成のコツなどについて話を聞いた。

  ――活動を始めたきっかけは何ですか。

 1996年に、脳梗塞を患った義理の父親を自宅で介護することになったのがそもそもの始まりです。義父は (えん)() 障害のために気管切開をしており、家族によるたんの吸引が必要な状態でしたが、住み慣れた家に戻りたいという父の希望をかなえたいと、在宅療養で最期をみとりました。当時はまだ介護保険がなかった時代ですが、病院や自治体の方に、利用できるサービスがいろいろあることなどを教えていただき、乗り切ることができました。

 介護保険制度がスタートした2000年に、義母が要介護認定を受けました。義父を介護した経験があったことで、ケアプランづくりから自分でやれないかと思ったのがきっかけです。

自己決定、自己選択から自己作成へ

  ――とは言っても、実際に自分でケアプランをつくって申請するのは大変だったのではないですか。

 話が少し遡りますが、義父をみとった直後は、さすがに燃え尽きたというか、何もやる気が起きない時期がありました。これではまずい、働こうと思ったときに新聞の求人広告で見つけたのが、「さわやか福祉財団」が募集していた編集補助の仕事です。

 実は私、大学を出た後、就職をせずに専業主婦になったので、きちんと働くのはこれが初めて。もともと書くことは好きで、子どものPTAの広報便りをつくったり、父の介護の時には「やえこのしんぶん(新聞)」と名付けてワープロで父の療養の様子をまとめて関係者に配ったりしていました。「やえこのしんぶん」は父の療養の情報が共有できてよく分かると、すごく評判がよくて、採用されたのは、面接に持っていったおかげかもと思っています。

――そこで、介護保険について学んだわけですか。

 はい。当時は介護保険の創設に向けて議論が盛り上がっていた時期で、たくさんの情報に触れました。「自己選択」「自己決定」と来れば、その流れで「自己作成」となるのは、私としては自然な流れでした。周囲に「自分でできるかな?」と尋ねたら、「できるよ。島村さんなら」と勧められ、その気になったわけです。財団での仕事はその後やめましたが、介護保険ができた当時の純粋な理念に触れることができたのは大きかったですね。

自宅前にベンチを置いて 井戸端会議がなによりのケア

――その後、お 義母(かあ) さんの介護は?

 もともと義父の訪問診療に来てくれていた主治医が、体の弱ってきた義母の介護認定を勧めてくれたのがケアプランづくりのきっかけで、要介護度は1でした。

 プランをつくるにあたって、義母と一緒にデイサービスの見学にも行ったのですが、中をちらっと見ただけで顔がこわばったのが分かりました。気位が高いというか、「体操しましょう」とか言われても、うまくできないといやな人なんですね。役所の人には「軽いうちから慣らした方がいいですよ」なんて言われましたけど、これまで絶対そんなことはしないで生きてきた人だし。

  ――結局、デイサービスには行かなかった?

 はい。義母のキャラクターを無理にかえる必要はないだろうし、かえってストレスになるのはおかしいと考えました。では、どうしようかなあ、と悩んでいたら、家の前で義母が「八重子さん、ここにいすがあればいいのよ」と。

 2世帯住宅である自宅の前は塀もなく、広い歩道で、顔見知りがみんな通ります。義母は何十年も地域で暮らしてきて、井戸端会議が日常だった人。言われた通りに家の前にベンチをおいたら、義母は日がな一日近所の人と話をして過ごしていました。介護保険でヘルパーさんは少し使いましたけど、そういう意味ではケアプランは簡単でしたね。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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