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リンボウ流ストレスとの付き合い方…林望さん

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リンボウ流ストレスとの付き合い方(下)~自分史と回想の効用とは、終活は日常

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 文庫本版で「源氏物語」の現代語訳を10年がかりで完結したリンボウ先生こと作家の林望さん。持病の狭心症や帯状 疱疹(ほうしん) に細心の注意を払いながらの偉業達成にホッとした表情もうかがえました。今後は自叙伝の執筆も計画し、昭和を振り返る写真エッセー集の著作もある林さんに、リンボウ流自分史と回想のススメや、広がりを見せる終活について聞きました。 

(クロスメディア部 塩崎淳一郎)

仕事漬けの日々、3回の帯状疱疹

リンボウ流ストレスとの付き合い方(下)~自分史と回想の効用とは、終活は日常

――玄関に「風邪をひいた者、入るべからず」の貼り紙を見つけました。

 私は風邪に弱いから。すぐにうつる。予防接種をしても接種で熱が出る。帯状疱疹は3回もかかっているんです。主治医の皮膚科の先生は「2回やる人は大抵死ぬわよ」と脅すのですが、3回目は珍しいという。どんどんひどくなる。ひどい目に遭いました。原因はストレスですよね。仕事漬けの日々に、「お前いいかげんにしろよ」という警告を身体が出していたんですね。私は酒もたばこもやらないし、ばくちも打たないし、女遊びもしないし、脂っこいものも食べない。「あなたは何が楽しくて生きているのか」とよく言われますが、確かに生き仏様みたいな生活ですね。この後は即身成仏しかないな(笑)。

――風邪一つにでも細心の注意を払っています。

 それでも引くんです。去年の正月にはインフルエンザに感染しました。なんでまた、人混みに行かないし、電車に乗らないし、外で出たものは食べず、様々に自重しているのにインフルエンザなのか。仕方がないね。防ぎきれないものがあるから。もっとも病気から遠ざかった生活をすると免疫力が落ちるという説がある。伝染病にかかったことのないアマゾンの原住民が、外部と接触するとすぐに伝染病に感染するのと同じで、清浄な生活をしているとダメなんでしょうね。ウイルスまみれの世の中に出て行った方がいいのかもしれないけど、それはできないしね。

次は「徒然草」 そして脚色のない「自叙伝」

リンボウ流ストレスとの付き合い方(下)~自分史と回想の効用とは、終活は日常

――源氏物語の現代語訳を終え、70歳を迎えて次のお仕事は。

 次は「徒然草」の現代語訳です。これはごちそうの後のデザートで、あまり胃にもたれない。徒然草は1冊で終わりますし。本文の難しさで言うと、源氏を100だとすると、徒然草は10ぐらい。ものすごく易しい。現代語訳をする必要がどこにあるのか、と言いたいほどです。私の「謹訳 徒然草」は、ほとんど原文のままになるかもしれないなあ(笑い)。来年には出したいと思っています。オリンピックを記念して。

――徒然草が終わったらどうしますか。

 終わったら即身成仏ですよ(笑)。頭を丸めて出家をするか。

 何かをやるとは思うけど、大きなことに挑戦していくだけの体力、気力、知力が、もはや残っていないんです。

 実は、自伝を書こうと思っています。自叙伝を。日本人は昔から自叙伝を書かない民族なんですよ。古典を見渡しても、日本人の自伝はほとんどありません。日本の伝記は、その人を尊敬する誰かが敬意を持って書くスタイルです。日本人は、自伝を自己宣伝みたいにとらえて、みんな嫌がる傾向にある。日本で自伝と言われるのは、「福翁自伝」が最初じゃないかな。福沢諭吉は、西洋人のようなマインドを持った先駆者ですね。

 欧米では大きな仕事をした人が、仕事を終えた後に、田園に隠居をして犬を散歩しながら生涯の最後の仕事として自伝を書く。それが欧米の文人のありようで、僕はそういうことを試みてみたい。これまでにも自伝的な作品を書いたが、脚色して小説として書いているので、純粋な自伝を書き残そうと思っています。

「一つの系図作りが、ほんとうの自分史」

――いま、自分史を書くことが流行しています。

 自分史を書くには、自分の親や祖父母、先祖のことを書くわけです。そして地縁、どこで生まれたかという地方史の側面もあります。ふつうの家庭の方は系図なんてないでしょ。名家の人は別ですが。系図を誰かが作らないと残らない。だから、自分史を書く方は、自分は昭和時代に生まれて、こういう時代を過ごしてきた、親は大正に生まれて、祖父母は明治に生まれてとか、分かる限り調べて書き残す。一つの系図作りが、ほんとうの自分史だと思うんです。

 「俺はこんな仕事をしてきた」などという内容ではなく、なぜ自分はここにいるのか、いかにして自分はこの人生を生きることができたか、ご先祖に思いをはせ、自分はこうして生きてきたから、子や孫やひ孫よ、子々孫々、こうした人生を知ってくれという内容にすべきですよ。自分以前の歴史を受け止め、子孫へのメッセージを残すというのがほんとうの自分史なんです。どの家庭でも明治ぐらいまでは大体分かると思うんですよね。明治は、若い人にとっては江戸時代ぐらい遠いんですよ。だから、今の団塊の世代が元気なうちに調べておかないと。幸いなことに、わが家はご先祖のことを書いた史料が深川神明社から出てきたもんですから、曽祖父の前の前ぐらいまで分かるんですよね。

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