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思春期の子どもを持つあなたに 関谷秀子

妊娠・育児・性の悩み

第11部 行為障害(上)「うちの孫は発達障害?」母親に要求を蹴られて逆上し、暴力行為に及ぶ小6女子の「いつものパターン」

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 行為障害では、人や動物への攻撃性(いじめ、脅迫、残酷な行為)、物の破壊や放火、 (うそ) や窃盗、夜遊びや家出、怠学などの反社会的な行動が見られる。一般的ないたずらや反抗をはるかに超えた、悪質なものが多い。10歳になる前に発症する小児期発症型、それ以降に発症する青年期発症型がある。

娘の頻繁な逆上に弱り、母親は精神科に

 A子さんは東京近郊に住む小学6年生の女の子です。5年前に父親を病気で亡くし、母と弟、そして母方の祖父母と5人で暮らしています。

 小学校最後の夏休み頃から、「お母さんが自分の要求に従わない」と頻繁にキレるようになり、暴れたり、物を壊したりするようになりました。

 自分の娘の突然の 変貌(へんぼう) に参りきった母親は、体調を崩して仕事を休みがちとなり、精神科に通院するようになりました。同居する祖父母が、「発達障害についてテレビで見た。A子がそうではないか」と、2人そろってクリニックにやってきました。

 最近は、発達障害の特集などが放映されることも多いため、心配になった家族が受診されることが増えています。突然、A子さんが粗暴な行動を取るようになったことで、祖父母はテレビで見た「行為障害」の心配をしているようでした。

 30代の若さで夫を突然亡くした娘を心配した祖父母は、A子さんの家族と同居することを申し出ました。仕事で忙しい娘のために、掃除や洗濯、食事作りに加え、孫のA子さんや弟の育児も、祖父母が積極的に手伝ってきました。

 父親を亡くした孫のショックを少しでも癒やそうと、祖父母らの親戚は協力して、一緒に旅行に行ったり、クリスマスやお正月、誕生日には集まって過ごしたり。小さな子ども2人の精神的な支えになるように、努力してきたそうです。

 大きな悲しみを背負ったA子さんも、祖父母や親戚の援助もあり、徐々に元気を取り戻していったそうです。6年生になるまでは、とりたてて大きな問題もなく、勉強や運動も問題なくこなし、親しい友達もいたそうです。

 A子さんの祖父母は、孫に対して口うるさく、言葉遣いなどには厳格であり、「~しなさい」「~してはいけない」と、きちんとした (しつけ) をしてきました。実の娘であるA子さんの母はもちろん、孫のA子さんも従っていました。

 しかし、A子さんは6年生になると、急に態度や言葉遣いが反抗的になりました。
 母親や祖父母が何かを言っても、「うぜぇ」「うるせえ」「死ね」「くそ」などの言葉を吐き、勉強や家での手伝いもしなくなりました。3歳年下の弟が大切にしているマンガを破いたり、いじめて泣かせたりも増えていきました。

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社会と個人の異常の関係性 反抗期

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

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昔から核家族化の影響やゲーム依存は言われてましたが、携帯電話、ネットやスマホの普及を主とした社会の変容や安定雇用社会の神話の崩壊に伴い、精神的な症状も多様化してきました。

どこまでが先天的で、どこまでが後天的で、矯正あるいは共存が可能なのか難しい所です。
異常の定義そのものもその立場や考えで変わることも大事です。
何も異常がない人は異常です。
トップアスリートは常人に交じりつつ異常な努力と生活を続けられる異常なメンタリティが要求されます。

さて、ここで思い出すのが、非行や反抗期はどこに消えたのかという問題です。
15の夜、という有名な歌がありますが、学生の保護期間の役割と身体の成長に伴う心身の意識の乖離が集団として、様々な変化をもたらします。

身体の変化のみならず、まだ子供でいたい気持ちと自立したい気持ちといきなり自立できない現実と未知の世界への恐怖がないまぜになって、思春期は不安定です。
精神疾患や心身症状も思春期発症が少なくないのはこのためでしょう。
また、先進国では、形の成人と社会的自立や経済的自立のギャップが大きいため複雑化します。

大人だって、生活と責任とペッグした大人の仮面をかぶっているだけで、本性は幾つか子供のままですが、暴れた子供が求めているのは、父親の影か代理か、自立への道筋やガイドなのか?
人は人や社会と繋がりながらどこまでも孤独な中で叫んでいるかのようですね。

成長とは自己の部分否定の連続で、殻を破るわけですから破壊衝動を伴うのは当然です。
一方で、その衝動をどういう風に落ち着けるのか?
嗜好品やエネルギーの発散も含めて考える必要があります。

親はいつか死にますが、何割かの子供は心にぽっかり空いた空洞を埋めたくて、社会通念に反抗して、他者に了解不能な言動や行動をとります。
それさえ存在意義の表現に過ぎないと理解できるまでに時間はかかります。

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