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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

上から目線、後発医薬品使用促進策での発言…選択権は患者にあるのが本来

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上から目線、後発医薬品使用促進策での発言…選択権は患者にあるのが本来

 医師の「上から目線」ではない患者主体の医療を実現していくためには、英国式の「コンコーダンス」をぜひ参考にすべきだということを、私は今年出版した「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)の中で強調しました。

 コンコーダンスとは、「医師の考え方や方針と、患者のそれが完全に一致していること」を意味します。

 コンコーダンスは、単に医学的立場だけでなく、医療を受ける患者の社会環境や、生き方や考え方まで包括してようやく実現するものです。

 この場合、患者は医療を医師に丸投げするのではなく、患者自身も自分の病気や症状、治療について深い関心を持ち、情報を得たうえで自分の意見を表明する必要があります。そこまできて初めて、各人にとって真に質の高い、満足度の高い医療が得られるのです。結果のよしあしよりも、プロセス(過程)が大事なのであり、こうなれば、医療不信、医者不信など起こりようがありません。

 そんなことを考えたのは、先月開かれた、厚労相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬改定結果検証部会に関する記事を、医療従事者向けのサイトで見たからです。そこには、「後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用割合80%未満の(診療報酬)加算については適正化していくべきで、非常に低い医療機関には何らかのペナルティーを講じていくべきだ」という趣旨の委員の意見が掲載されていたからです。

  同部会の議事次第が掲載されている厚労省のホームページ には、「後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査報告書(案)」が掲載されています。それを見ると、後発医薬品の使用割合は増えているが、その決め方は患者主導とはいえないことがわかります。

 医療機関への調査では、後発医薬品を指定して処方している場合「患者から希望があったから」は、診療所医師で21.9%、病院医師で19%でした。残りは医師主導で後発医薬品処方をしていることになります。

 一方、患者調査においては、「いくら安くなっても後発医薬品を使用したくない」は7.6%でした。使用したくない理由の第一は「効き目(効果)や副作用に不安があるから」で、そのきっかけとして約60%の方が副作用の出現や効き目の悪化、使用感の悪化を挙げています。

 私の病院の外来でも、緑内障点眼薬を安価な後発品に変更したところ、眼表面への副作用や、点眼後の目の感覚(つけ心地)が異なるなどの理由で、先発医薬品に戻した例が数例あります。

 先発医薬品と後発医薬品とは有効成分は同じですが、製剤(薬剤を作ること)のための添加物は全く同じという保証はありません。先の患者で先発医薬品に戻すことになった理由はそこにあります。

 この違いを理解してもらったうえで、どちらにするかの選択権は患者にあるのが本来ではないでしょうか。

 先の委員の発言は、医師が専ら処方を決定するという「上から目線」の医療しか想定していないもので、賛成できかねます。

 医療を受ける側は、この後発医薬品をめぐる状況をよくよく理解しておく必要があると思います。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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