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医師が教える「女と男、髪と地肌の話」 田中洋平

医療・健康・介護のコラム

飲み薬で、本当に男性型脱毛は止まるのか?

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 今回は、女性だけでなく・・・・・・、いや、むしろ男性の関心が高い「抜け毛」がテーマです。抜け毛を完璧に防ぐ方法はまだありませんが、現時点でできる医療的な対処を中心にご説明しようと思います。

 ある程度の年齢になると、なぜ人間の頭髪は減っていくのでしょうか?

 一般的には、ホルモン(抜け毛に関わる男性ホルモンの一種のジヒドロテストステロン)、それに毛根周囲の血流低下が主な原因です。生活習慣や手入れの方法なども原因とされてはいますが、少しずつ頭部が寂しくなっていくのは、主にこの二つが犯人です。

 「うちは先祖代々、髪が薄いからなぁ・・・・・・」などと、遺伝が原因として挙げられることも多いのですが、言い換えればホルモン、毛根周囲の血流のいずれかの原因が生じやすい体質が受け継がれているということなのです。

くせ者のジヒドロテストステロンをブロックしてくれる?

 男性は10代後半以降になると、男性ホルモンの「テストステロン」の分泌が増えて、「ジヒドロテストステロン」も増えます。テストステロンは「男性をさらに男性らしくするホルモン」で、女性の場合は、閉経すると相対的に増えます。

 くせ者は、ジヒドロテストステロンのほうで、頭髪が抜けやすいように働いてしまいます。男性型脱毛症(AGA)の最大原因がこれです。

 過剰に男性ホルモンを抑えてしまうと、好ましくない事態も想定されますよね。

 でも、ジヒドロテストステロンだけをブロックし、ほとんどの男性に劇的な効果が期待できて、副作用の心配もない治療法はあるんです。

 「プロペシア」「フィナステリド」「ザガーロ」などの「飲み薬」がそれに当たります。正確に言うと、抜け毛促進ホルモンのジヒドロテストステロンを作る還元酵素だけをブロックしてくれますので、AGAには一定の効果が期待できるのです。

 さらに、男性としての機能に悪い影響を与えることはなく、頭部の抜け毛だけをブロックしてくれるため、ほとんどの男性は安心して使用し続けることができます。

 ただし、これらの飲み薬の場合、抜け毛を防ぐことができるのは、飲んだ日だけ。毎日継続して服用する必要があるため、長い目で見ると、経済的な負担は軽くありません。保険適用とならない自由診療ですので、医療機関によって費用に違いがあります。

 私のクリニックでは、診察料も含めてプロペシアで1か月に約1万円円、ジェネリックのフィナステリドの場合は約5000円をいただくことになっています。

飲み薬の費用対効果、それにマイナスの側面は?

 長野県在住の20代男性はAGAに悩み、私のクリニックを受診されました。外来でのカウンセリングを経て、フィナステリドを処方しました。

 ところが、半年間も継続服用したのに、ほとんど効果が実感できないとのことでした。

 話をお聞きすると、薬代を節約するために、服用を1日おきにしていたそうです。若い患者さんなので、経済的な事情は十分に理解できます。でも、1日おきの効果しかなかったため、結果的に抜け毛を抑えきれなかったのです。

 その後、毎日の服用に変えてもらったら、一気に効果が進み、数か月で別人のように髪の量が増えました。

 ここまでお読みいただいて、「経済的にはちょっと厳しいけど、飲み薬に興味が出てきたぞ」と思われた方は多いと思います。

 ただし、ご承知いただきたいのは、効果が出るまでは時間がかかる場合があること。特に抜け毛が目立ち始めたばかりの「初期脱毛」の患者さんの場合、数か月間も効果が実感できないことがあります。

 さらに、頭髪以外の毛髪、特に手の甲や指、胸毛、 下腿(かたい) の毛が増えてしまうことがあります。

 松本市内の30代の男性は、私が処方したフィナステリドを飲むようになり、明らかに頭髪が増えて喜んでいました。ところが、全身あちこちの体毛も一気に増えたため、そちらは脱毛を希望されました。マッチポンプ、というわけではありませんが、クリニックに来て、増毛と脱毛の両方を行うというのも、ちょっと皮肉な感じがしますね。

 もう一つ、よく耳にする育毛剤があると思います。
 そう、「ミノキシジル」です。
 こちらについては、次回以降に改めて説明したいと思います。

ぜひ、生活習慣の改善も

 冒頭では、自力でのコントロールが難しい男性ホルモンのほかに、脱毛の原因として、毛根周囲の血流低下を挙げました。その原因としては、長時間に及ぶ血管収縮、慢性的な血流低下による毛根環境の悪化、外傷などの外的要因、それにストレスなど内的要因が挙げられます。

 強いストレスや不眠などが原因となる長時間の交感神経緊張状態、それに喫煙、目の酷使なども、頭髪にとってはマイナスに働きます。ただちに抜け毛が減るわけではありませんが、ご自分の健康のためにも、生活習慣には十分な目配りをしていただきたいと思います。(田中洋平 形成外科医)

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田中 洋平(たなか・ようへい)

 クリニカタナカ 形成外科・アンティエイジングセンター(長野・松本市)院長 新潟薬科大学客員教授、東京女子医科大学非常勤講師。1975年生まれ。

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1件 のコメント

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薬剤との付き合い方

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

少し働き出して、真面目な患者さんが多い印象を受けました。 真面目な性格程、頭髪に影響が出るのでしょうか? SNSとかではお茶目な事を書きながらも...

少し働き出して、真面目な患者さんが多い印象を受けました。
真面目な性格程、頭髪に影響が出るのでしょうか?

SNSとかではお茶目な事を書きながらも、仕事とサッカーにだけは真面目なので、最初は難しいかもと思っていましたが、様々な難症例を目にすることの多い、放射線科の経験が生きているように思います。

良い薬は劇薬でもあって、付き合い方が非常に大事です。
100万分の1の確率でも、それぞれの患者さんには1分の1なので、その事は忘れずにいようとは思います。

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