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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

薬剤師に明日はあるのか 少子高齢化社会に求められる将来像とは

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改正薬機法が求めるもの 調剤時に限らず患者をケア

薬剤師に明日はあるのか 少子高齢化社会に求められる将来像とは

 医薬品や医療機器の規制などについて定めた医薬品医療機器等法(薬機法)の改正案が、開会中の臨時国会で審議されている。先の通常国会で継続審議となっていたもので、成立すれば、条文の規定によって公布の日から1~3年以内に施行される。

 改正案の柱は、医薬品・医療機器の早期承認を図る仕組みや、法令順守体制の整備と並び、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直しだ。

 具体的には、薬剤師が、調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務や、薬局薬剤師が、患者の薬剤の使用に関する情報を他の医療提供施設の医師らに提供する努力義務について、法制化する。薬剤師の仕事は、処方箋を受け取って薬を出したら、それでおしまいではない、というわけだ。

地域連携薬局、専門医療機関連携薬局を知事が認定

 改正案はまた、患者自身が自分に適した薬局を選択できることを目的として、機能別の薬局の都道府県知事認定制度の導入を提案。一つは、「専門医療機関連携薬局」で、がんなどの専門的な薬学管理に他の医療提供施設と連携して対応する。

 もうひとつが、「地域連携薬局」。入退院時の医療機関との情報連携や在宅医療などと、地域の薬局が連携しながら一元的、継続的に対応する。患者のための「かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局」としての機能を求めている。

少子高齢化社会において大きくなる役割

 11月の日曜日、東京近郊の大学の薬学部に招かれ、薬学部生に対して講演をする機会をいただいた。演者は地域医療に携わる医師、大学教授の社会学者、筆者の3人で、学生は、薬局や病院での実習を経験して進路をいよいよ決めようかという5年生が主な対象だ。主催者から与えられたテーマは、「少子高齢化社会における薬剤師の役割」、そして「薬剤師には明日はあるのか」、というものだった。

 筆者からは、「だれもが支える側にもなり、支えられる側にもなる社会では、地域の全員がプレーヤーであり、薬剤師は関係ないということは、そもそもあり得ない。医療の専門職として期待される役割は大きい」「機能別薬局に象徴されるように、薬についての圧倒的な専門知識を持った薬剤師や、コミュニケーションの技術を磨いて地域で活躍、貢献する薬剤師など、自分自身の特性を生かした薬剤師を目指すことも大切ではないか」などと述べた。「薬剤師に明日があるかどうかは、みなさんのこれからの活躍次第だし、医療を受ける患者の立場として、とても期待している」と結んだ。

「使えない薬剤師」にならないために

 講演会では、実際の医療現場においては、「いい薬剤師もいれば、使えない薬剤師もいる」という現状に対する厳しい指摘も出された一方、処方箋のチェックなどを通じて医師からも頼りにされる薬剤師がいることなどを紹介。人工知能(AI)が出てこようとも薬剤師という職業が消えるわけがないという指摘や、患者とのコミュニケーションにおいて目の前の人のために何とかしてあげたいという思いがあれば必ず伝わるといったアドバイスなど、これから薬剤師を目指す学生へのエールが送られた。

 終了後、参加していた薬学部生らに話を聞いた。薬剤師の仕事として、調剤を主とした「対物業務」から服薬指導などの「対人業務」への重みが高まるなかで、コミュニケーションを仕事とすることに不安を感じる学生も少なくないという。もともとコミュニケーションが苦手なこともあって薬学部を選んだというケースもあるといい、「1年生の頃からコミュニケーションの重要性を言われ、これは間違ったところに来てしまったと最初は戸惑った」と振り返る学生もいた。

 講演会には薬局に勤める大学の先輩も多く参加しており、「コミュニケーションはスキル。やる気があれば身に付く」といったアドバイスが送られる様子も目にした。

義務だからではなく

 聴講した学生の多くは5年生で、薬局や病院での実習を経験したばかり。「病院で働くのは大変そうだと感じた」「ぜひ病院で働きたいと希望している」など、人によっても感想は様々だった。実習やこの日の講演を聞いて「これからの社会で、薬剤師が地域に貢献することの大切さがよく分かった。自分も地域で役立つ薬剤師になりたい」と話す学生もおり、意識の高さを感じた。

 薬機法改正案で、日常からの患者の服薬状況の把握や指導が義務づけられたことについて、本来当たり前に行われているべきことなのに、あえて法律で義務付けられなければならなかったことが現状の課題を表しているとの声も日ごろ耳にする。「義務だから」ではなく、患者のために、地域に役立つ薬剤師になってほしいという思いを胸に、週末のキャンパスを後にした。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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2件 のコメント

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適性外や業務外について一通り知る意味

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

日本放射線治療学会=JASTROに来ています。 一部の放射線治療に関しては、治療計画からの標準治療やその軽度な応用までのセミオートが見込める状態...

日本放射線治療学会=JASTROに来ています。
一部の放射線治療に関しては、治療計画からの標準治療やその軽度な応用までのセミオートが見込める状態まであと一歩まで来ている印象です。
カルテも統合されるようになれば、様々な科と、治療適応も含めてシームレスに近づくと思います。

その中で、それぞれの医師や薬剤師も役割や立場が問われるでしょう。
先進医療施設はともかく、標準レベルの医療レベルでよいのであれば、ある施設に放射線科医などのマイナーかつ遠隔で代替可能な医師の常駐が必要か否かという議論も当然必要でしょう。
集約するべき施設に集約したほうが、質や若手育成機能が保持しやすいです。
関連職種も地域や施設ごとにあり方も変わります。

薬剤師と関係なさそうで、治療も診断も放射線科医はもともと一般医師業務の適性や意欲に欠ける人材の比率が大きいので、本文に通じてきます。
(学校の勉強やその先の勉強と、それを一般人や一般医師にわかりやすく伝えて実行させるのは別の能力です。)

その分、人に直接感謝されにくい仕事や特殊業務に従事していればいいわけで、そういう住み分けや新しい道、システムの在り方をも考えていく方がいいのではないかと思います。

確かに、直近の数合わせも大事なんじゃないかとは思いますけど、合わない人が大きなトラブルを起こす方が中長期的なリクルートに問題が起こります。

とはいえ、地域の薬剤師として優秀な人だけでなく、それを支える人、関わらなくても理解を示す人を増やしていくこのような作業は有意義なのかもしれません。
個々の薬学生の背景や希望が全部叶うわけもないですが、お互いの仕事や苦労を理解するのは様々な要素が移り変わる時代の中での仕事や勉強のベースになってきます。
医療職種も女性の比率は上がるので、人生のステージで生き方が変わる人もいるでしょう。

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テストやカリキュラムにない能力の育成

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

診断も治療も様々なものが増えている中で、医師も医療関係職も仕事の多様性が増えており、関連職種の重要性は増しています。 一方で、スキルとしてある程...

診断も治療も様々なものが増えている中で、医師も医療関係職も仕事の多様性が増えており、関連職種の重要性は増しています。

一方で、スキルとしてある程度は成長が見込める部分と天性の才能や若い頃の努力や成功体験も重要です。
(スポーツや料理、裁縫の経験があった方が、外科系ははるかに有利です。)

専門教育も詰め込み過ぎで大変ですが、どういうフィールドで働くかを考える機会があるといいですね。
細かい知識なんか、パソコンやスマホに暗記させたものを確認して理解する能力があれば、たいていのことは事足りる時代ですから。

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